5年前に火災に見舞われ修復が進められていた、フランス・パリの世界遺産「ノートルダム大聖堂」の一般公開が8日に始まった。
世界が注目する修復を支えた人たちの中には、日本人の職人の姿もあり、FNNが密着した。
ナポレオン1世の戴冠式でも演奏された大オルガン
パリの歴史的なシンボル「ノートルダム大聖堂」。
この記事の画像(68枚)5年ぶりに公開されたその内部は、建設当時の色を取り戻し、ステンドグラスの光が優しく降り注ぐ。
7日に開かれた式典には、アメリカのトランプ次期大統領のほか、世界から首脳級が集まった。
2019年4月、この大聖堂は炎に包まれ、高さ96メートルの尖塔(せんとう)やその周辺の屋根の3分の2を失った。
5年間にわたって行われた修復には約7億ユーロ、日本円にして約1120億円が投じられ、腕利きの職人2000人が参加。
実はこの修復、ある日本人が重要な役割を果たしていた。
関口格(いたる)さん(53)は、現地では名の知れたオルガン職人。
関口さんは、フランスを拠点に四半世紀にわたり、ノートルダム大聖堂やベルサイユ宮殿など歴史的価値の高いオルガンの調律に関わってきた。
その腕を買われ、大聖堂のオルガンの修復作業に携わることになり、一般公開の3週間前、大聖堂に向かった。
この日は、工事が一段落する夕方から作業を始めた。
オルガン職人・関口格さん(53):
やっぱりうるさいとできないんですよ。パイプの音が聞こえないので。まだ作業している人もいっぱいいますから。
関口さんが向きあってきたこの大オルガンは、あのナポレオン1世の戴冠式でも演奏されるなど、歴史の1ページを彩ってきたものだ。
燃えずに残ったオルガンの「解体と洗浄」から始まった
火災発生時、関口さんは大聖堂の職員で、その翌日、変わり果てた姿を目の当たりにした。
オルガン職人・関口格さん:
まず怒りですね。現在において800年、みんなが大切にしてきたものが一夜にして、われわれというか、燃やしてしまった。
オルガンは、火元から離れた場所にあったため、奇跡的に燃えることはなかった。
しかし、消火活動の水を浴び、鉛やすすが約8000本のパイプの中にまで入り込み、大きなダメージを受けていた。
まず取りかかったのは、オルガンの解体と洗浄。
パイプに付着した有毒な鉛を吸わないように、フルフェースのマスクをして作業にあたった。
そして、再び最初から組み立て、2024年の4月になって、ようやく調律作業を始めることができた。
オルガンの調律とは、どのような作業なのか。
実際に、パリ郊外の教会での作業に同行した。
8000本ものパイプの整音・調律に7カ月要する
オルガンの調律は、すべてが手作業。
数mmほどの長さから10メートル以上のパイプまで、それぞれが発する音の高さがぴったり合うように、1本1本調律をする必要がある。
そのパイプの数は8000本にもなり、整音・調律には7カ月かかった。
ノートルダム大聖堂での作業は、再開の1週間前にギリギリ完成した。
そして迎えた7日の式典。
大司教の言葉で、5年以上沈黙していたオルガンが再び息を吹き返した。
オルガン職人・関口格さん:
850年の歴史があって、いったん火事でストップしたわけだが、それがまた新たに歴史が始まったという感じがする。
5年の歳月をかけて向き合ったオルガンの音。
こだわり抜いたハーモニーが、これから訪れる人たちの記憶に花を添える。
(「イット!」12月9日放送より)