あの「若貴ブーム」に沸いた1996年以来、28年ぶりに15日間チケット完売を意味する「札止め」となった九州場所。これにより、令和6年は全6場所90日間すべて札止めとなり、相撲人気の高まりを感じる1年となった。
相撲ファンのお目当ては、所要9場所で大関昇進を果たした大の里であっただろう。昇進スピードに髪の毛が間に合わず、大銀杏の結えない「ちょんまげ大関」を見ようと、多くのファンが福岡国際センターに来場した。
しかし、今場所の主役となったのは同じ大関の琴櫻と豊昇龍。
21年ぶりとなる大関同士による千秋楽相星決戦が実現するなど、1年納めの場所にふさわしい番付最上位2人のハイレベルな優勝争いが繰り広げられた。
勝ったのは初優勝となる琴櫻。今年の初場所で大関に昇進し、最後に優勝も果たした飛躍の1年だったが、同時にある「葛藤」を抱える1年でもあった。
大関昇進後も遠い「初優勝」
先述のとおり、今年の初場所で大関昇進を決めた琴櫻だったが、優勝決定戦で横綱・照ノ富士に敗れ初優勝は逃していた。
大関昇進後も安定して勝ち星を上げるものの、大事なところで勝ちきれず、あと一歩優勝に届かない日々。その間に尊富士と大の里が優勝を経験し、年下の力士たちに先を越されるなど、大関として期待された姿を見せることができなかった。
琴櫻:
ケガも経験して、巡業を離脱しないといけない時もあって、来てくださった皆様にも申し訳ない気持ちだった。
悔しい気持ちはもちろんありましたけど、焦りになってしまってはいけないと自分の中で言い聞かせながら、悔しい気持ちは心にしまって、そういう気持ちでやっていた。
![インタビューを受ける琴櫻](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/4/7/700mw/img_4775f57877ae59de34a710434818ccb4515347.jpg)
葛藤と向き合い続ける中、琴櫻が立ち返ったもの、それは…
琴櫻:
このままじゃダメだと思いましたし、しっかり基礎の体づくりだったり、そういったところから見直してやっていった。それが少しずつですが身になってきたと思います。
快進撃を支えた「下半身の強さ」
そんな琴櫻の体つきについて注目していたのが、二所ノ関親方だ。
二所ノ関親方:
琴櫻に関しては、今までで見たことのないような下半身のハリを感じた。すごく充実しているなというふうに見えて、それが現実となって優勝となった。
体のハリ、皮膚のツヤというのは成績に影響するのかなと改めて感じた。
![二所ノ関親方](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/7/700mw/img_67d374aa95d7f83a3a35de8d39afff34510797.jpg)
その体づくりの成果が発揮されたのが、千秋楽の優勝のかかった大関・豊昇龍戦だと言う。
二所ノ関親方:
流れこそ豊昇龍ペースでしたけど、琴櫻がしっかり体を合わせた。(豊昇龍は)投げに行った時に手応えあったかもしれないですけど、それでも体を預けて自分の体制にすぐに取り戻した。
あそこをよく残しましたね、並の力士だったら残せないですよ。充実しているんだろうな。
豊昇龍の勝ちパターンとも言える強力な上手投げを下半身の強さでこらえた末のはたき込み。元横綱を唸らせる体の充実が、初優勝を手繰り寄せたと分析してくれた。
憧れの祖父へ 初優勝は「通過点」
そんな琴櫻の初優勝を感慨深く見守ったのが、部屋の師匠であり、父でもある佐渡ケ嶽親方だ。
![琴櫻の父 佐渡ケ嶽親方](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/3/700mw/img_f3ade0aedeff00275f2aa1bbb69a8cd8597278.jpg)
佐渡ケ嶽親方:
初優勝が大関5場所目で27歳。これが先代師匠(第53代横綱・琴櫻)と全く同じだったので、本当にビックリというか鳥肌が立つ感じでしたね。
先代師匠の「琴櫻」というしこ名をいただいているので、もう一つ番付を上げて、先代師匠と同じ番付の地位に並ぶように頑張ってほしいなと思います。
![祖父の第53代横綱である先代・琴櫻](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/d/700mw/img_6defa7377133ed2f5d5dd25deec51eca619228.jpg)
祖父は激しい突き押し相撲で「猛牛」の異名を取った第53代横綱である先代・琴櫻。父はイケメン力士として女性ファンも多かった元琴ノ若の佐渡ケ嶽親方という超相撲エリート一家で育った琴櫻。
憧れは横綱だった祖父であり、追いつくことが目標の一つ。初優勝は彼にとって通過点に過ぎない。
琴櫻:
優勝の報告はするんですけど、「これからだぞ」って言われるだけだと思うので、とりあえず「優勝しました」とだけ伝えます。
先代に追いつくことが目標の一つなので、しっかりと一つ一つ見直してやっていきたいと思います。
令和7年 新横綱誕生へ
初優勝で横綱昇進に王手をかけた琴櫻。憧れの祖父に追いつくために、来場所は相撲人生をかけた戦いが待っている。
さらに、今場所準優勝に終わった豊昇龍にも綱取りの可能性があり、2人同時昇進もありうるなど、来年の初場所は大いに注目を集める場所となるだろう。
二所ノ関親方:
まさか新入幕が優勝したり、大の里が2回優勝して大関に昇進すると予想した人もいなかったと思う。
来年も本当に予想できない年になりそう。かき回す若手がいるかもしれないですし、今場所優勝争いした2人が来場所、再来場所どうなっているか。非常に期待するし、楽しみがまだまだ増える大相撲じゃないですか。見応えあると思います。
![3人の横綱候補、大の里 琴櫻 豊昇龍](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/e/9/700mw/img_e9fa173f07fd780a3a4addd2a356560e359439.jpg)
琴櫻と豊昇龍に大の里を加えた3人の横綱候補が出揃った令和6年。この中から相撲人気の高まりをさらに加速させる存在は出てくるのだろうか。
令和7年、新横綱誕生の機運は究極に高まっている。
『すぽると!』
12月7日(土)24時35分
12月8日(日)23時15分
フジテレビ系列で放送中