12月2日からこれまでの健康保険証の新規発行が停止され、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」の本格運用が始まった。今の保険証は有効期限まで利用可能なほか、マイナ保険証は利用登録が必要などわかりにくい部分も多い。問題点と現場の声を取材した。
今の保険証は有効期限まで使える
まず、混乱しないよう、大事な以下3点を確認しよう。
・現行の保険証は有効期限まで使うことができる。有効期限なしの場合は2025年12月1日まで。
この記事の画像(10枚)・マイナンバーカードを持っていない人・マイナ保険証の利用登録をしていない人には、現行の保険証の有効期限前に「資格確認書」という、現行の保険証とほぼ同じ様式のカードが申請によらず交付され、現行の保険証と同様に使える。
・マイナンバーカードを持っていても、マイナ保険証として使うには利用登録が必要。
→登録は、医療機関や薬局に設置してある顔認証付きカードリーダーか、“マイナポータル”でWeb上でもできる。
ただし、カードリーダーがマイナンバーカードを読み取れない場合は、「資格確認書」ではなく「資格情報のお知らせ」をマイナンバーカードと一緒に提示する。「資格確認書」と「資格情報のお知らせ」は別物なので、注意が必要だ。
「資格情報のお知らせ」とは、マイナ保険証の利用登録をしている人が、自分が加入している健康保険組合の情報を把握するために送付されるもの。送付の時期や方法は、加入している健康保険によって異なる。例えば、勤務する会社を通して健康保険に加入している場合、会社を通じて手元に届くことになり、2024年12月1日までに国民健康保険に加入していた場合は、保険証の有効期限が切れる前に送付される。
患者は不安、医師は「まだ移行期」
12月2日朝、広島市内のクリニック受付でマイナ保険証をかざす人もいたが、実際の利用率はまだ2割程度にとどまっている。
マイナ保険証を使っている60代女性は「情報管理の面でちょっと不信感もあるが、世の中の流れには逆らえないのかなと」と不安ながらも使いだした心境を語る。
また、従来の保険証を使っている60代男性は、「マイナンバーカードが不安だと思っていたが、便利になるところもあるので、それを信じて切り替えようかと思う」と取得を決意したことを明かす。
「マイナ保険証」を登録すると医療機関や薬局で、特定健診の結果や処方された薬の履歴が一目でわかるようになる。また、突然の手術・入院で高額な医療費が発生しても、立て替えの心配がなくなるなどのメリットがあるという。
しかし、医師から見ると、現段階ではメリットは大きくないようだ。
広島市内のクリニック院長は「患者情報が全部そろえばメリットが大きくなるが、まだ移行期で患者の皆さんも不安なところがあるだろうし、今はメリットとデメリットが半々」と語る。
「マイナ保険証一本化はまだ無理」
今までの保険証が複雑化することに医療現場には懸念もある。
医師と歯科医師でつくる広島県保険医協会の調べでは、5月から10月までに広島県内の医療機関の6割以上でマイナ保険証の読み取りなどに不具合が出たことがわかった。
協会の堂垣内あづさ事務局長は、「まだまだシステムは最善の状況で動いていない。そのうえ、患者さんも、医療機関の中にも、12月2日からどうなるのか、理解できている人ばかりではない。マイナ保険証に移行することが容易ではない人がたくさんいる中で、マイナ保険証一本化というの無理がある」と語る。
広島県内での医療機関・薬局でのマイナ保険証の利用率は10月末の時点で2割以下という状況だ。
冒頭にもまとめたが、これまでの保険証が使えなくなったわけではなく、有効期限まで、期限のないものは2025年12月1日まで使うことができること。そして、マイナンバーカードを持っていない人やマイナ保険証の利用登録をしていない人には、申請をしなくても「資格確認書」と呼ばれる今までと同じ形態のカードが交付されることを覚えておきたい。
(テレビ新広島)