軽自動車1台で車中泊をしながら、移住先を探して愛媛を旅している女性がいる。愛媛で自然とともに生きる新たなライフスタイルを目指す、移住先探しに密着した。

車中泊で巡る、愛媛の魅力

リモートで仕事をしながら2024年6月から軽自動車一台で移住先を探す旅を始めたのは、東京都出身の神原洋子さんだ。

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8月から愛媛に入り、9月に松山市窪野町でテレビ愛媛取材班と出会った後も、興居島や今治など愛媛県内で旅を続けていた。この日は伊予市周辺をまわっていた。

神原さんは「窪野のお米ですー。窪野でお世話になって、出るときにお米をすごいくださいまして、ありがとうございます」と、感謝の言葉を口にする。温かい人々との出会いのおかげで、ここまで旅を続けられてきたという。

車中での生活は決して楽ではないはずだが、神原さんの表情は明るい。「見てくださいこのお芋、ちょーでかくないですか?かわいいー」と、地元の人からもらった野菜をうれしそうに見せてくれる。「貴重な食料なんです」と笑顔で語る姿からは、地域の人々との交流を大切にしている様子が伝わってくる。

川で野菜を洗いながら、「川最高ですね」と自然の美しさに感動する神原さん。そんな彼女の目に、愛媛はどのように映っているのだろうか。

「徳島・香川・愛媛って回ってきてどこもすごく良かったんですけど、愛媛めっちゃいいんですよ」と目を輝かせる。「土地そのものの空気感なのかな、それが私は肌に合うのかもしれない」と、愛媛の地に対する強い親和性を語る。

自然と共生する暮らしを求めて

この日、神原さんは気になっている物件を実際に見に行く。古民家を見学しながら、「かまども、囲炉裏も、薪風呂も全部残ってて、めっちゃよくないですか?」と興奮気味に語る。「ここで野菜摘んでそのまますぐ料理するとかもできるし」と、理想の暮らしをイメージする様子が伝わってくる。

目指すのは命のつながりを感じられる場所作り
目指すのは命のつながりを感じられる場所作り

神原さんが実現したいのは、単なる「移住」ではない。農薬や化学肥料を使わない自然栽培での野菜・米作りに薪からの火起こし。昔ながらの暮らしを体験することで、生かされている感謝と命のつながりを感じられる場所作りを目指している。

神原さんは「人を“5から10人くらい”呼びたいイメージがあって、そのくらいで、多くの人が暮らしの体験をしながら自分とつながっていく時間を作りたい」と、自身のビジョンを語る。

そうした人の輪を広げていくことが、大量に生産して、大量にゴミが出る現代のライフスタイルを転換するきっかけになると考えている。

環境問題との衝撃的な出会い

彼女がこう考える理由は、5年前に直面した出来事がきっかけだった。静岡・下田の海岸で、台風直後に打ち上げられたおびただしい量のゴミを目の当たりにしたのだ。

「なんかもうね、絶望。絶望とショック。なんだろう、言葉を失うって感じですね」と、声を震わせる。「なんか結構泣けてくる、すごい今でも泣けてくるぐらいひどくて」と、その時の衝撃を語る。

神原さんは「地球が頑張って、人間の出してるごみとか浄化しようとしてるけど、もう限界で無理ですって感じで、げぼって吐き出してるような感じがして」と、当時の心境を吐露する。

京都大学を卒業後、総合商社で人材育成や学校教育関係の仕事に携わってきた神原さんだが、この時に見た海がきっかけで環境問題に興味を持った。

しかし、「拾っても拾ってもゴミが減らなかったんですよ。それをやっていくうちに意味はあると思うけど、でもやっぱり減らないっていうのは根本的にやっぱりライフスタイルがおかしいんじゃないかって思いになって」と、根本的な解決の必要性を感じたという。

そして2023年、過労で体調を崩したことをきっかけに、ライフスタイルを転換する新たな拠点づくりの旅を始めたのだ。

愛媛・南予方面へ車を走らせていると、山の中にたたずむおしゃれな建物が気になり、立ち寄ることに。

立ち寄ったのは内子町立山の、山に囲まれたログハウス「ログ立山」。1日1組限定の宿泊施設だ。神原さんは「えー素敵すぎる、すごいなあ。うわーめっちゃここ素敵や」と感嘆の声を上げた。

施設のオーナー、山本企幸さんとの会話も弾む。「移住先?わしは移住してないが」という山本さんに、神原さんは「大丈夫!内子町に興味があって」と返す。「内子はええとこもある、悪いところもある」という山本さんの言葉に、「私こういう方がうれしいかも。きょう採れました。ドーンみたいな」と神原さんは笑顔で応じる。

山本さんの奥さん、陽子さんからしいたけをいただき、「いいのー?わーありがとうございます。うれしい」と喜ぶ神原さん。早速、その場で調理を始める。

シイタケを切りながら、「忙しいと、食べることが作業になっちゃうと思うんですよ。私も昔すごいそうだったなって思って」と語る。「食べるって命をいただく行為だからそこに丁寧に向き合える時間的余白とか、そういう感性があるって大事だなって自分は思うんですよね」と、食に対する思いを語る。

調理したシイタケを口に運びながら、「やばい、我ながらおいしそう」「わーい。やばい超幸せだ。うまー」と満足げな表情を見せる。

理想の場所を求め次なる旅へ

神原さんが描く理想の暮らしは、「朝起きたら、薪で火をおこして、お湯を沸かしたり、朝ごはん作ったりしながら、そこから畑に出て、土との時間、植物との時間を持ちつつ、午後には自分が何かやりたいことに没頭している。そういう暮らしのスタイルに、いろんな人が集まっていて、それぞれがそれぞれのやりたいことを実現できてる感じだとすごく素敵だなと思います」と、笑顔で語る。

不安はないのかと尋ねると、「ないんですよね」ときっぱり。「自分が行ったことない場所なので、どんな場所があって、どんな出会いがあって、どういう情報が入ってきてっていうのがめっちゃ面白くないですか?」と、好奇心に満ちた表情で答える。

感謝の言葉を述べながら、次の目的地へと出発する神原さん。自分の心の底から湧き出たイメージが実現できる場所を探して、「情報と、人のご縁で、つながっていけたらと思ってます」と語る。

持続可能な社会を実現するために、彼女はきょうも旅を続ける。

(テレビ愛媛)

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