「女子野球」を通じて、若者の定住促進と地域活性化を目指す島根・川本町の「お手本」ともいえる存在が、島根県と境を接する広島県の三次市(みよしし)だ。
先行する「女子野球のまち」三次市の現状から、スポーツによる地域活性化の可能性を探る。
「女子野球のまち」“お手本”は広島・三次市
11月17日、広島・三次市では、中四国地区の女子野球リーグ「ルビー・リーグ」のエキシビションマッチが行われ、所属チームから選抜された選手たちがはつらつとプレーしていた。

川本町に誕生した島根フィルティーズも2025年春に始まるシーズンから、この「ルビー・リーグ」に参戦する。
三次市は2020年、全日本女子野球連盟の「女子野球タウン」に認定され、連盟と連携して、女子野球を通じた地域活性化の取り組みを進めている。
川本町と同様、三次市にとっても若い世代、特に女性の市外流出は大きな課題となっている。

三次市共生社会推進課の田村正課長は、「女子野球」を地域活性化に生かす取り組みは、スポーツを通じた女性の活躍応援がきっかけだったと振り返る。そのなかで、まずは野球にスポットが当たったという。

市内には、プロ野球・広島の2軍の公式戦も開催されるスタジアムがあり、三次市は、ここを「女子野球の聖地」にすることを目指し、「ルビー・リーグ」をはじめ、女子の大会や日本代表の合宿、さらに世界最高峰の大会、ワールドカップの予選を誘致してきた。

今では「女子野球のまち」として認知度が高まり、選手、大会関係者やファンが訪れることによる経済効果も大きいということだ。
三次市共生社会推進課の田村正課長も「宿泊や(飲食などの)お店でも『いつ試合があるんですか』という声を聞くようになった」と話す。今後も「女子野球といえば三次」というかたちになっていけばと期待する。
中四国地区「ルビー・リーグ」に参戦

川本町も2024年、この「女子野球タウン」に認定され、全日本女子野球連盟と連携して、大会や教室の開催など女子野球の普及に取り組み、地域活性化につなげる方針で、島根中央高校の女子硬式野球部とともに、その中核を担うのが「島根フィルティーズ」という位置づけだ。

少子化が進むなか、実は女子の硬式野球は、競技人口が右肩上がり。2023年度には約3000人を数え、最近10年間で倍増している。
チーム数も全国で119を数え、競技人口の減少に悩む種目も多い中、盛り上がりを見せている。

「ルビー・リーグ」も2022年にスタート。2024シーズンは、中四国各県から高校、大学、社会人クラブ19チームが参加した。
島根フィルティーズは2025年シーズンから、最下部の3部で戦う。
「試合に勝つことより大切なもの」

中四国のライバルとの戦いがいよいよ始まるが、森山一人監督は「地元のみなさんに認めてもらえる活動から始めて、それがあって、やっとフィルティーズということになる」、また、クラブの大久保一則代表も「(町民から)受け入れの方は大丈夫か、仕事はちゃんとあるかと、ご意見やアドバイスをもらう機会は多い。地域の方々に知ってもらって、応援してもらえるような土台作りをしていくことが、まずは大事」と、島根フィルティーズにとって、試合に勝つことより大切なものがあると、口をそろえる。
「わが町のチーム」へ地域のために働く選手
大久保代表は、町外からの選手の受け入れ窓口になる団体「かわもと暮らし」に勤務。物心両面で選手たちを支える。

フィルティーズの選手たちは川本町の「地域おこし協力隊員」として、「かわもと暮らし」に勤務。半日はイベントの企画・運営や町のPRなど地域活性化の仕事に携わり、半日は野球に打ち込む毎日を送る。地域のために働くなかで町民に顔を覚えてもらい、「わが町のチーム」として、町民一体の応援を受けられるチームを目指す。

大久保代表は、「女子野球のことを知っているけど、見たことないという人はまだまだ多い。もっと選手のことを知ってもらえたら、もっと応援をしたいと思っていただけるのかな」と、チームが目指す姿を示してくれた。
まず目指すのは、地域に愛されるチームだ。
地域に根付き、住民の気持ちをひとつにするスポーツの力に託す、地域の未来。
島根フィルティーズの戦う姿に「女子野球のまち」を目指す川本町の未来の姿が重なる。
(TSKさんいん中央テレビ)