将来の年金額を増やすための年金改革議論が進んでいる。
働く高齢者の年金が減額される「50万円の壁」を引き上げる案や、高収入の現役世代の保険料負担を増やす案が検討されている。
一方、現役世代からは、負担増に厳しい声も上がっている。
50万円の壁で年金減額に「思いっきり働いて満額もらいたい」
将来の年金額を増やすためにどうすればいいのか、年金をめぐる議論が進んでいる。
高齢世代をより働けるようにしたり、現役世代の負担を増やすという議論も進んでいる。
注目が高まる「年金改革」について、街の本音を聞いた。

記者:
仕事はしていますか?
年金月12万円・送迎バス運転手(64):
仕事しています。送迎バスです。生活のためです。
年金月10万円・学童保育スタッフ(70代):
小学校とか学童とか、そういう子どもさん相手の仕事している。(年金)足りない。
定年後も日本の人手不足を支える、働くシニア世代。
空間プロデュース業(60代):
(年金だけだと)生活できないと思いますよ。働けるだけ働こうかなと。
ところが、働きながら年金を受け取っている高齢者に立ちはだかっているのが「50万円の壁」だ。
「在職老齢年金」制度では、65歳以上で賃金と年金をあわせた収入が1カ月50万円を超えると、年金支給額が減らされてしまうのだ。
頑張って働いたのに、年金が減額されてしまえば、“働き損”になってしまう。
「50万円の壁」が働く高齢者の意欲を削いでしまう、との声が上がっている。

大学院教授(70代):
理不尽な制度だと思います。働き手が少なくて、老人もできるだけ働いてもらう。それなのに50万円以上は半額カットなんて、時代背景・経済環境の変化に応じてない。
自営業(70代):
思いっきり働いて年金も満額もらいたい。欲張りだけど。

2022年度末時点で、65歳以上で働いている年金受給者は308万人。
このうち16%にあたる50万人が、この制度で年金を減額されている。
こうした中で進められているのが、「年金制度の見直し議論」だ。
年金の支給額が減らされる収入の基準を、現在の50万円から62万円や71万円に“壁”を引き上げる案などが検討されている。

不動産業(64):
そうなったらうれしい。労働意欲にはいくらかプラスになると思う。
年金月12万円・送迎バス運転手(64):
来年、65歳になると加給年金がプラスしてもらえるので、(月額)50万円超えちゃう。その分、仕事を減らさなきゃいけないので、(基準額を)上げてもらえれば助かります。
制度が改正され、基準額が71万円に引き上げられた場合、約27万人が年金を満額で受け取れることになる。
一方で、新たに年間2900億円の財源が必要になる。
社会保険労務士法人V-Spirits・渋田貴正さん:
これから少子高齢化が進んでいく中で、高齢者の労働力を生かすことは、社会全体の労働力不足を補う意味では重要なポイントになってくると思う。
しかし街からは、「高収入の高齢者を優遇しすぎでは?」との声もあった。
年金月10万円・学童保育スタッフ(70代):
(月額)50万円も(収入を)もらっているなら、年金いらないと思いますけど。
現役世代の負担増で議論「今を犠牲にするのは嫌」
一方、年金の財源確保に向けては、収入の多い現役世代の保険料負担を増やす議論も進められている。

厚生年金の加入者が支払う保険料は、ひと月の収入額を32段階の等級に区分した「標準報酬月額」をもとに算定しており、現在の上限は月額65万円だ。
この額を超えれば、いくら稼いでいても保険料は上がらない仕組みだ。

ところが、この上限を65万円から「75万円」や「98万円」などに引き上げる案が検討されているのだ。
上限を75万円に引き上げた場合、現役世代の約168万人が対象になり、保険料の負担が毎月約9000円増加する。

納める保険料が増えれば、本人が将来受け取れる年金支給額も増えるとされているが、現役世代からは厳しい声が上がった。
医師(36):
先のこと過ぎて実感が沸かない。言われても頑張れない。
経理(35):
今を犠牲にしてってことですよね。今を犠牲にするのは嫌ですね…。
一方、高齢者からは、次のような声が上がった。
年金月15万円・70代:
たくさん収入があるんだったら、負担してもらいたい。
年金月14万円・60代:
社会保障が充実するには、それなりに負担が生じるのは当然。
老後の生活を支える「年金制度の見直し議論」。
厚生労働省は与党などとの協議を経て、2025年の通常国会に必要な法案を提出したいとしている。
(「イット!」11月26日放送より)