東京都の税制調査会は10月30日、ふるさと納税をめぐり廃止を含めた制度の抜本的な見直しを行うべきなどとする調査報告をまとめた。
東京23区で構成される特別区長会によると、流出額は今年度で約3200億円。ワンストップ特例申請制度が始まった2015年度からの累計で約1兆9000億円に上る。
23区も黙ってみているわけではない。
新宿駅1日駅長やミュージアム貸し切りも
豊島区は、コスプレ体験プラン、池袋サンシャインシティのレストラン食事券の他、今月新たに、区内にある重要文化財・自由学園明日館を活用したクリスマスランチコースを追加した。
この記事の画像(5枚)大田区は、羽田空港がある地域性をいかした、客室乗務員体験プログラムや、離着陸する航空機を真下から観賞するアンダージェットクルーズ体験などの返礼品が今年度から登場した。
中野区では、区内にある時刻表ミュージアムの貸し切り券などが口コミで話題になっているそうだ。
板橋区は、関わり合いの深い近代日本経済の父、新一万円札にもなった渋沢栄一像ストラップ、江東区は今年オープンした万葉倶楽部日帰り入館券を、新宿区はJR新宿駅の一日駅長体験や、みどりの窓口での仕事体験プランなどが用意されている。寄付金額は昨年度4億1000万円に上ったという。
ふるさと納税廃止の声も
こうした中、港区と練馬区は、ふるさと納税の廃止を訴え、返礼品競争には参加していない。練馬区は、本来自治体は行政サービスの質で他自治体と競い合うべきで、高額な返礼品を用意して多額の寄付を集めるための競争は自治体間の競争の在り方を歪めていると主張する。
10月31日には、これまで参画していなかった千代田区が、返礼品事業に乗り出した。返礼品には、1596年創業、東京最古の立ち飲み居酒屋の食事券や江戸流手打ち蕎麦の体験などが用意されている。樋口高顕区長は、記者会見で「反転攻勢。いつまでも防戦一方でいるわけにはいかない。今後も減収が見込まれ安定した行政サービスを提供するふるさと納税に挑戦し、全国にアピールしていく」と話した。
千代田区の返礼品は、歴史や伝統など、地域色に基づいたラインナップになっている。千代田区の流出額は約20億円。この額は、区内の小中学校11校の学校給食無償化費用3年分、地域福祉交通の小型バス68台分に相当する。
23区全体でも、高齢者の急増や首都直下型地震への備えなど、今後も多くの財源を必要としており、提供すべき行政サービスへの影響を及ぼすと危機感を募らせている。