国立極地研究所、名古屋大学宇宙地球環境研究所、北見工業大学を含む国際研究グループは、南極の中心に近い内陸部にある昭和基地から約1000km内陸に位置する南極ドームふじ基地、およびその周辺で日本の南極観測隊が過去30年間観測してきた気温観測データをとりまとめた結果、1990年代以降温暖化が継続していることを発見した。
日本の南極地域観測隊が過去実施してきた気温観測データを使った研究・観測で、東南極において長期的な温暖化現象を報告するのは今回が初めて。
2025年7月22日に、イギリス科学誌「Nature Communications」で公開されている。
南極大陸における気候変動の観測活動は、主に有人基地の位置する沿岸域での調査観測が行われているが、冬期の気温がマイナス70度以下まで低下する南極内陸部の温暖化の実態は不明なままとなっていた。
日本の南極地域観測隊は、沿岸部にある昭和基地とドームふじ基地を結ぶ地点に自動で気温などを観測できる無人気象観測装置を設置し、1990年代以降、気象観測データの収集を継続して行ってきた。
研究グループは、このデータを使って1993年から2022年までの30年間にわたる月平均気温データを作成した結果、沿岸域の昭和基地では気温の上昇はほとんどみられなかったのに対し、内陸部では年平均気温が約1.5℃上昇していることが明らかとなった。
南極内陸域で温暖化を引き起こしている要因は、南インド洋の海面水温の上昇が、大気および海洋変動を引き起こし、インド洋に面した沿岸域から内陸部へ暖かい空気が流れ込みやすくなったことが原因であると指摘しています。
研究グループは、今回発見された南極内陸部の温暖化は、現在の気候モデルでは再現(計算)されていないため、研究グループは、地球温暖化予測や海面上昇に影響を及ぼす南極の氷床融解についても現在の評価は過小評価されている可能性があると指摘している。