石原慎太郎・元東京都知事が集めた約14億円の「寄付金」が、10年以上塩漬け状態のままになっている。
使い道はないのか。
「尖閣諸島活用基金」とは?
きっかけは2012年、石原慎太郎・元東京都知事がアメリカ・ワシントンで行った講演での発言だった。

「東京が買うことにいたしました。東京が尖閣諸島を守ります。日本人が日本の国土を守るために島を取得するのに何か文句ありますか?」
沖縄・石垣市の尖閣諸島を購入する方針を示し、都がホームページで寄付を呼びかけたところ、全国から14億8000万円が集まった。
しかしその後、日中関係が悪化するなどしたため、政府が地権者から島を買い取り、正式に国有化したほか、石原知事が国政進出のために知事を辞職したため、購入のために集めた寄付金だけが残った。
2025年1月現在、「尖閣諸島活用基金」として、14億1405万1326円が積み立てられている。
寄付者に返すべきだという議論にもなったが、寄付者は10万人を超え、かつ匿名の人も多く、寄付者に返すことは難しいと判断された。

石原知事以降、3人の知事の下で明確な使い道が決まることもなく、小池知事が2018年、「超小型衛星による監視システム」に活用するという案を示したが、具体化はされなかった。
この基金の使い道について、2024年11月の都議会総務委員会で「尖閣列島だけでなく、東京都に帰属する国境離島にも利用できないのか?」と、自民党都議から質問が出された。
これに対して、総務局の尖閣諸島調整担当部長は、「基金は、尖閣諸島を公の所有として安定させ、活用してほしいという寄附者の志を受け、条例に基づき設置したものでございまして、国による尖閣諸島の活用に関する取組のための資金」と述べ、ほかの島への活用は難しいとの見解を示した。
そのうえで、都は国に対して「地元漁業者のための船だまりや無線中継基地、有人の気象観測施設の設置のほか、ヤギの被害から貴重な動植物を守る取り組みといった自然環境の保全など、戦略的な活用方策について提案している」と説明した。
寄付者の思いを無駄にすることがないよう、有効な使い道が求められている。