広島県呉市の瀬戸内海には安芸灘とびしま海道の橋で結ばれた大小7つの島々が浮かぶ。レモンなどの柑橘栽培が盛んだが、少子高齢化で農家の継ぎ手不足が課題になっている。これを「愛とレモンで島おこし」を掲げ、ボランティアを中心に解決しようとする団体がある。広島出身の姉妹デュオ「メビウス」が取材した。

高齢農家をボランティアが助ける

瀬戸内海を望む島のレモンとミカンの段々畑では「とびしま柑橘倶楽部」のボランティア・メンバーが草刈りとミカンの収穫をしていた。

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代表の秦利宏さんは、「農家や地域の困りごとがあったら、ちょっとお手伝いしている」という。

「とびしま柑橘倶楽部」は「愛とレモンで島おこし」をキャッチフレーズに、約15年前から草刈りや収穫など、高齢の農家の困りごとを助けるとともに、耕作放棄地を再生し、栽培を始める新たな農家のサポートもしている。

畑には、オーナーの83歳のハルエおばあちゃんの姿も。「瀬戸の花嫁」のように船にのって嫁いできてから約60年というハルエさんにとって「とびしま柑橘倶楽部」の存在は「こんないい人たちに巡りあえて私は幸せだと思っています。よく相談に乗ってくれるからとても嬉しい」と感謝の言葉が絶えない。

高校生から高齢者まで様々なボランティア

ボランティアには様々な人たちが参加している。

15歳の高校生ボランティア
15歳の高校生ボランティア

長く活動している母親に誘われて来たという15歳の高校生は「人のために体を動かして何かをすることが心温まって好きになってしまった」と話す。

70代のボランティア(右)
70代のボランティア(右)

また、70代の男性は「貴重な場だと思う。ハルエさんのような人が頑張って柑橘栽培を維持しているのを見て、微力だが、ボランティアに参加している」と語る。

畑でつながった人とものを凝縮した料理

島のおいしい柑橘を守るために「とびしま柑橘倶楽部」はさらなる事業を展開している。

秦さん(中央)とメビウス、マミ(左)ノリエ(右)
秦さん(中央)とメビウス、マミ(左)ノリエ(右)

2024年8月に古民家を再生してオープンした呉市川尻町のカフェレストラン「とびしま.839」では、柑橘とジビエを使用した料理が楽しめる。島では柑橘類畑がイノシシやシカに荒らされる被害が出ているが、獲ったこれらの“命”を無駄にしない試みだ。

「とびしま猪肉ハンバーグ(イチジクの赤ワインソース)」を食べたメビウスのマミは、「肉が柔らかくクセも無くて旨味がギュッと凝縮されている」と肉の旨味を堪能した。

「猪肉ソーセージとミカンとレモンを使ったフレンチトースト」を食べたノリエは「ジュワっと味が出てくる」とこちらもその深みのある味わいに魅了された様子。

秦さんは、「畑でつながっている人とものが、全て集まって、この料理に凝縮されている」と語る。

また、現在クラウドファンディングで、農家が収穫した柑橘を販売するマルシェスペースの資金集めを行っている。

広島のレモンはカキとともに国内生産量1位だが、農家の高齢化で畑の面積は最盛期に比べると3分の1に減っている。「愛とレモンで島おこし」をキャッチフレーズに島の段々畑の柑橘栽培を守る活動は今、事業で収益をどこまで確保できるかが問われている。

秦さんの「ちょっと口にするだけで幸せに感じたり、みんなと畑仕事して笑いが起こったり、そんな時間とそんな空間がどんどん作れたらいいなと思いますね」という何気ない一言が印象に残った。

(テレビ新広島)

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