地球温暖化に伴う気候変動などの影響で、タイでは豪雨による洪水被害が深刻化している。
経済損失“3兆円”と言われる被害も出るなか、首都バンコクでは、日本企業の技術を取り入れて市民の生活を守る対策をしているようだ。
歩道見えないほど水位上昇
10月18日、タイの首都バンコクでは、「モンスーン」と呼ばれる雨季の大雨によって市内各地の道路が冠水した。

雨が降り始める前の道路の映像を見ると、降り始めて1時間後には、歩道も見えなくなるほど水位が上昇している。

2024年7月に同じ場所で撮影された映像では、豪雨で道路が川のような状態に。
雨による冠水によって、道路沿いに出されている屋台も商売ができる状態ではない。

屋台の人は「大変です。帰りたくても帰れません。水が引くのを待つしかないです」「車が勢いよく走ると(屋台に)水がかかって、物が散らかされます。(Q.いつもこう?)いつもこんな感じです」と話す。
100頭以上のゾウが避難…洪水深刻化
熱帯性気候に属しているタイ。

特にモンスーンの季節になると、連日のように午後には豪雨となる。

さらにバンコクは低い土地が多く、川や排水施設に雨水を速やかに流すことができず、至る所で道路が冠水する。

タイ北部のチェンライでは9月、台風11号の大雨によって過去80年で最悪とされる洪水被害が発生し、多くの家屋が浸水した。

同じ北部のチェンマイでは、100頭以上のゾウが浸水した保護施設から緊急避難。
施設側は「これまで経験した中で最も深刻な洪水」としている。
経済損失“3兆円以上”
地球温暖化に伴う気候変動などもあり、豪雨被害は激しさを増していて、特に500万人以上が暮らし都市化が進むバンコクでの水害は経済に大きな打撃となる。

2011年に発生した、チャオプラヤ川の氾濫による大洪水では、1カ月近く水が引かず、日系企業の中にも操業停止を余儀なくされるところもあった。

この時の経済損失は3兆円以上とも言われている。
こうした水害から、市民の日常生活をどう守っていくのか。
バンコクでは、日本の技術も取り入れながら対策が進められている。
日本の気象情報会社の「降水予測モデル」導入
バンコク都庁・下水局では、日本の気象情報会社「ウェザーニューズ」の降水予測モデルを導入。

市内に設置された雨量計のデータなどをもとに、AIが5分間隔で3時間先までの予測を行う。
これにより豪雨が予測されると、多くの雨水を排水できるように、事前に下水道の水量を調整し、洪水防止に役立っている。

バンコク都庁・下水局 アーサー・スッカン排水情報システム部長:
排水システムが効率的に機能するためには、優れた予報システムが必要です。ウェザーニューズの予報は9割以上の精度であり、バンコクにとって非常に有用です。
日本企業の「貯留槽」も活用
一方、下水道の調整だけでは対応できない場合に備え、こんな技術も。

秩父ケミカル・吉田寿人社長:
こちらが私どもの会社の製品「ニュープラくん」です。雨水をためる貯留槽になる。

バンコク郊外の工業団地に設置されていたのが、プラスチック製の貯留槽。
これを地中に敷き詰めることで、降った雨水を一時的にため込むことができ、冠水を防ぐ。

類似した製品を地中に敷き詰めた場所は、設置前の状況と比べると水はけがよいのが分かる。

秩父ケミカル・吉田寿人社長:
特にバンコクは、ここだけじゃなくて雨が降ると道路が冠水して、交通渋滞の一番の大きな原因となるということで、それに対しては非常に役立つ技術だと思っています。
気候変動の影響もあり、タイの各地で増えている豪雨災害。
人命だけでなく、インフラや経済にも甚大な被害をもたらすだけに、抜本的な対策が求められている。
(「イット!」11月5日放送より)