ICBM発射をめぐり中国がアメリカに見せた歩み寄り。懸念のなかにあったシグナルとは。
最新の情勢から紐解きます。

中国軍のICBM発射試験に合わせた動きか

9月24日、アメリカ空軍・横田基地で撮影されたのは、RC-135Sコブラボールです。 

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真っ黒な右の主翼が特徴的なコブラボールは、敵対する国の弾道ミサイルの性能を調べるためにアメリカ空軍が開発した3機しかない偵察機で、小さな窓の奥には光学・赤外線センサーを備えています。 

コブラボールが日本に姿を見せるのは、日本周辺でミサイルの発射試験の準備が行われている時で、撮影された数時間後には横田を去りました。その目的とは…。

44年ぶりに太平洋に向かってICBMを発射した中国
44年ぶりに太平洋に向かってICBMを発射した中国

能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
中国軍が25日朝にICBM=大陸間弾道ミサイルの発射試験を行ったと発表していまして、発射の瞬間にコブラボールが上空にいた可能性があります。さらに極めて異例だったのが、中国が44年ぶりに太平洋に向かってICBMを飛ばしたことです。

中国は、西側のセンサーでミサイルの性能を探られたくなかったためか、長い間、コブラボールが入り込めない内陸部に向かって発射試験を行ってきました。しかし今回、中国は、事前にアメリカなどに発射試験を通知していたというのです。 

能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
あえて中国側は、コブラボールが飛んでいる時にセンサーに捕捉されやすいコースに沿って飛ばした可能性も考えられます。 
また、アメリカ軍は海でも弾道ミサイルを追跡する「ハワード・O・ローレンツェン」を運用していて、間に合ったかは定かではありませんが、搭載している巨大なレーダー、コブラキングが中国のICBMの性能を捉えた可能性もあります。

発射翌日には、アメリカ国防総省が中国からの発射の事前通知を受け、ICBMを監視したと表明、事前通知は信頼醸成措置になると歓迎しました。

能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
表面上は「中国のICBM発射」という懸念される動きですが、アメリカが監視できるように「事前通知」という“シグナル”を送った中国の変化をアメリカが受け入れたと受け取れます。

日本に対しては挑発行為繰り返す

変化の兆しがみられるアメリカと中国との関係。 

一方、日本に対しては、8月末には領空侵犯、9月には空母「遼寧」など6隻が同じ日に接続水域に入ったほか、日本海や太平洋ではロシアと合同パトロールを行うなど、挑発行為を繰り返しています。 

日本政府が抱く「深刻な懸念」と米中対立の中でも大国アメリカが期待する「信頼醸成措置」。 中国が作る「差」で日米の安全保障関係に揺らぎを生じないようにする必要がありそうです。
(「イット!」10月13日放送より)

イット!
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能勢伸之
能勢伸之

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フジテレビ報道局特別解説委員。1958年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。報道局勤務、防衛問題担当が長く、1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材。著書は「ミサイル防衛」(新潮新書)、「東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか」(PHP新書)、「検証 日本着弾」(共著)など。