福岡発祥と言われ、全国で話題の「生ドーナツ」。2024年7月には鹿児島にも専門店がオープンしたが、そもそも一体どんなものなのか?取材を進めると、パン店オーナーの思いつきから生まれた“奇跡の存在”であることがわかってきた。
「生ドーナツ」を知っていますか?
「生ドーナツ」について知っているか、鹿児島の人たちに聞いてみた。

「わからない」「知らない」と答える人たちがいる中で、「生ドーナツ気になってます。鹿児島初上陸というのでずっと情報を見ていて」と、食べたことはないが知っているという人も。
すると、「生ドーナツ」を実際に食べたという人に出会った。
その感想は「重くなくてすごく食べやすかった。鹿児島市与次郎にある」という。

さらに、「最近食べてめっちゃおいしかったです」と答えた女性に「生ドーナツ」の存在を知っていたか訪ねると、「いや、知らなくて。鹿児島に生ドーナツのお店ができたんだと思って。もちもちでおいしかった」という答えが返ってきた。
鹿児島でも関心が高まっている「生ドーナツ」。そもそも、どんなドーナツなのだろうか。
「生ドーナツ」は福岡市の人気ベーカリーショップで誕生
取材班がやってきたのは福岡。生ドーナツが生まれたという店で詳しく調査するためだ。

「生ドーナツ」が生まれたのは、福岡市のベーカリーショップ「アマムダコタン」。イタリアンシェフでもある平子良太オーナーが手がける、定番のパンから総菜系のパンまで約100種類が並ぶ人気の店だ。

実はこの店は、あの「マリトッツォ」の火付け役でもある。「生ドーナツ」の誕生には、マリトッツォの存在が大きく関わっていた。

アマムダコタンを運営するpeaceputのエリアマネージャー・長池瑛之介さんは、「始まりは、マリトッツォで使用していたブリオッシュ(卵やバターを使った菓子パンの一つ)生地を『揚げてみたらどうなるんだろう』というところから、奇跡的に生まれたもの」と、誕生のエピソードを教えてくれた。
オーナーのアイデアとひらめきで生まれた生ドーナツ。「食べたときに本当においしくて、これは専門店でもいけると(平子オーナーが)確信したんだと思う」と長池さん。ドーナツなのに“生”と名付けたのは、口溶けが生のような“ふわシュワ食感”というところからきているという。

生地のつなぎにローストしたカボチャを練り込み、低温で長時間発酵することで、しっとりとした生地に。それを240度の高温で片面ずつ揚げ、最後にきび糖をまぶしたらできあがり。揚げ時間が短いのも「生のような食感」が生まれている理由だ。
販売開始以来、売り切れ続出に
この「生ドーナツ」、2021年に販売が始まって以来売り切れが続出。さらにパン好きの有名人の紹介をきっかけに人気が広がり、今では福岡や東京に「生ドーナツ」を扱う専門店を出店。連日行列ができる人気のお店となっている。
こうして、生チョコや生キャラメルのように“口溶け”を楽しめるドーナツ、「生ドーナツ」が定着。今では日本各地に趣向を凝らした生ドーナツの専門店が誕生し、話題のスイーツとなった。
「賞味期限30分」の看板ドーナツ!
そんな生ドーナツ専門店が鹿児島にも初上陸した。鹿児島市与次郎に2024年7月にオープンした「TRUFFLE DONUT(トリュフドーナツ)」。鳥取県の1号店に続く出店だ。

訪れたお客さんは、「SNSでアップされていて、行きたいなと思っていた」「すごく並んでいたので、ちょっと時間をおいてからやっと来ることができた」と、来店を楽しみにしていた様子。

オーナーが大好きだというトリュフ。揚げたドーナツ生地にイタリア産のトリュフオイルとトリュフ塩を掛けたトリュフドーナツは、なんと「賞味期限30分!」。プレミアムでスペシャルな一品がお店の看板メニューだ。
「生ドーナツ」の特徴について、鹿児島店の松野下翔さんは「1つが『生食感』。もう1つが『生クリームを使っている』ところ」とアピールする。
その気になるお味は…。

実際にドーナツを食べた庄村奈津美記者によると、「口溶けが最高。弾力のある食感で、一度食べたら癖になります!」とのことだ。
“農業県”ならではの取り組み
そもそも、なぜ鹿児島で「生ドーナツ」のお店を開こうと思ったのだろうか。

松野下さんは「話題性が一番ですね。農業をしているので(一次産品にさらに付加価値をつける)“六次産業化”で自分たちが作った野菜を直でドーナツに調理をしてお客様に届けられること」と話してくれた。
実はこのお店、指宿市で野菜をつくる企業がフランチャイズで運営している。
さらに農業県・鹿児島ならではの取り組みとして、自分たちで作った野菜を生ドーナツの材料に使用。ドーナツの生地にカボチャを使い、水分量を多くすることでしっとりとした食感を作り出している。

松野下さんは「(お客様から)すぐ反応がもらえるのはすごくいい。それをすぐ現場にも伝えられるので、会社としてはいい雰囲気になってきている」と手応えを感じていた。「近いところではサツマイモを使ったメニューを考えています」と、意欲満々だ。
鹿児島にも誕生した「生ドーナツ専門店」。鹿児島に新たな話題を運びこむだけでなく、鹿児島ならではの成長を遂げていた。
日本各地で話題となっている「生ドーナツ」。
全国的に広がっていることについて、生ドーナツを生んだお店の長池さんは「色々と生ドーナツ専門店などができているが、元祖生ドーナツを食べてみたいと言うことでお店に来るお客さんもいるので、よい相乗効果になっているのではないかと思っています」と話していた。
「生のような食感」の生ドーナツ。独特の食感は店によって異なる。巷で話題のとろける食感を、一度楽しんでみてはいかがだろうか?
(鹿児島テレビ)