日々の暮らしにとって大きな痛手となる食料品の値上げ。「安くてうまい」“庶民の味”として人気のたこ焼きが気軽に食べられなくなってしまうかもしれない。

値段を据え置いたままでは厳しい

タコの仕入れ価格が年々100円ずつ上がっているような感じと苦境を訴えるのは福岡市の「たこ焼はしもと」店長の橋本友太さん。「2カ月前ぐらいに上がって、また上がると言われている」と橋本さんが頭を抱えるのはタコの値上げだ。

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この店では2024年2月にたこ焼きを600円から630円に値上げしたが、10月からはさらに20円値上げして650円で販売する予定にしている。値段を据え置いたまま販売していくというのはちょっと厳しいと店長は訴える。

タコよりも牛肉の方が割安

タコの値上がりは、私たちの生活を支えるスーパーでも表れている。タコの値段は100グラム598円だ。同じスーパーの国産牛肉は100グラム398円。なんとタコの方が割高になっている。

買い物客も「お肉の方を買いたくなりますね」「最近、たこ焼きしていない。やっぱり手が出ない。かなり上がっていますもん」と渋い表情。「ゆめタウン博多」の堀脇雅貴さんは「2、3年前に比べたら倍ぐらい上がっています。5、6年前に比べて70%ぐらいまで売り上げは落ちている」と現状を示唆する。

庶民の味がなぜ、一転して高級品に?その理由は、福岡から1万km以上離れたアフリカにある。

アフリカ産を“買い負け”する日本

日本で流通するタコの多くは、西アフリカのモーリタニアやモロッコから輸入されている。しかし歴史的な円安によって、アフリカのタコを巡る競争で、日本がほかの国に買い負けしていることなどから、国内のタコの流通量が減り、異常な値上がりにつながっているのだ。

ゆめタウン博多の堀脇雅貴さんは「なかなか輸入物が手に入らないというのが現状で、それもあって国産をメインで販売しています」と話す。

安価なタコを求めて近隣の街へ

こうした中、福岡市に近い古賀市でいま、タコを求める人たちが集結しているとの情報が取材班に入った。早速、赴くとテントには人だかりができ、さらに長い列ができている。平日の朝にもかかわらずだ。目当ては、もちろんタコ。一斉にタコを買い物かごに入れている。

実は、タコを加工販売する会社「カイセイ」の直売所なのだが、人気の理由は、その安さにある。モーリタニア産のタコの値段を見てみると250グラムで500円。100グラムでは200円での販売となり、スーパーのタコと比べ、7割近く割安となっている。

買い物客は、どれぐらい買ったのか?「全部で60個ぐらい。安か方ですね、全然。全部買って3万7000円やけん。スーパーで買うとすごい金額じゃないかなと」と話し、さらに別の買い物客は「何年も来ています。お手頃だと思います。来る価値はあると思う」と話す。

この日はタコ足、約2000パックが完売した。

なぜ、こんなにも安くタコを販売することができるのか?その秘密をカイセイの谷口譲取締役は「タコの足は8本ありますけど、なかには欠けているものがある。スーパーさんとかは見栄えがありますので、正規品として販売できないんですよね」と明かした。

味は変わらないものの見栄えが悪いタコ。こうしたタコが全体の約2割にも及ぶことからカイセイでは毎月、工場で直売会を開き低価格で販売しているという。

谷口譲取締役は「『古賀市にタコの工場がある』というアピールと『皆さんに、おいしいタコを食べていただきたい』『皆さんの笑顔があればいいな』と思って販売しています」と笑った。

(テレビ西日本)

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