トヨタ自動車がアパレル企業などと連携し、アップサイクル製品のポップアップストアをオープンした。レザーやエアバッグなどの端材を使用した商品で、廃棄物削減と環境負荷軽減を目指す。「モッタイナイ」が、「もっといい」に変わる取り組みに迫った。

トヨタが廃材活用…ポップアップ開催

東京・港区で20日、トヨタ自動車と繊維を扱う「豊島」、アパレルメーカーの「アーバンリサーチ」の3社が連携したポップアップストア「TOYOTA UPCYCLE POP UP STORE」がオープンした。

傷や線の残ったカードケース
傷や線の残ったカードケース
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並べられたペンケースやカードケースには傷や線が残っているが、じつはこれらは車のシートのレザーの端材からできている。

シートの端材から作られたペンケース
シートの端材から作られたペンケース

レクサスのシートの端材から作られたペンケースや、他のアイテムも全て自動車を作る際に出た端材をアップサイクルしたものだ。

その中でもトヨタの“イチオシ”は、ロゴが入ったトートバッグだという。

トヨタ自動車 新事業企画部事業開発室 中村慶至主幹:
こちらのトートバッグは3つの素材を使っておりまして、持ち手がシートベルト、ボディー部分がエアバッグ、ポケット部分がシートのレザーの端材で、全て端材を使って製作しております。

自動車の部品は約3万点あり、その分、端材など「モッタイナイ」ものが出てしまうが、それを「もっといい」ものに作り替えることで、廃棄焼却時のCO2排出量削減を目指す。

トヨタ自動車 新事業企画部 事業開発室・中村慶至主幹:
アバーンリサーチ様、豊島様の力を借りて、格好良く変えていただけるプロなので、そのあたりを助けていただいています。廃棄物が魅力を持った商品に変わる、そのビフォー・アフターを感じていただいて、アップサイクルを実践いただくような、行動変容につながっていくと私たちとしてもうれしい。

ポップアップストアは10月11日までで、今後、アーバンリサーチのオンラインショップでも販売していくとしている。

アップサイクルのカギは「新品素材の削減」

「Live News α」では、日本総合研究所チーフスペシャリストの村上芽(めぐむ)さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
今回の試み、SDGSに詳しい村上さんの目にはどのように映っていますか。

日本総合研究所 チーフスペシャリスト・村上芽さん:
そもそもアップサイクルとは、捨てられるはずだった素材を加工して、付加価値をつけて、別のものに生まれ変わらせて、新しい顧客を見つけていく取り組みのことを言います。SDGsへの理解が広がり、企業も持続可能な試みを加速させているので、アップサイクルの取り組みが増えてきています。

堤キャスター:
同じように循環の輪を回していく、リサイクルとの違いは。

日本総合研究所 チーフスペシャリスト・村上芽さん:
リサイクルも、物を捨てるのではなく再生利用することなので、資源を無駄にしないという点では同じです。ただ、アップサイクルはデザインへのこだわりや、より便利にするなどの意図が込められています。こうしたアップサイクル製品が広がっていく際に、環境面での効果として、単に「端材を捨てずに済んだ」だけで終わらせてはいけないように思います。

堤キャスター:
それは、どういうことでしょうか。

日本総合研究所 チーフスペシャリスト・村上芽さん:
例えば、自動車のシートレザーの端材を活かした文房具を1つ作って売ることによって、他のバージン素材を使った文房具が1つ作られなくなれば、1つ分の資源を使わずに済んだことになります。さらに丈夫で愛着を持たれやすいものを作ることで、新品を2つ作らなくて済めば、もっと資源を使わなくて済むということになります。

廃材を出さない発想の転換へ

堤キャスター:
企業も、私たち消費者も、限りある資源との向き合い方が問われているようですね。

日本総合研究所 チーフスペシャリスト・村上芽さん:
今は、用途のなかった資源を生まれ変わらせて活かしていく段階にありますが、今後は、新品の投入量をいかに減らせるかというところまで活動の輪が広がればいいと思います。
また、そもそも端材がでないような作り方をもっと追及できないかという発想もあり得ます。傷を活かした文房具が格好いいならば、傷を活かした自動車のシートがあってもいいのかもしれません。

堤キャスター:
もう必要のないものでも、誰かにとっては欲しいものだったり、形を変えることで価値のあるものになったりします。難しく考えるのではなく、気軽にアップサイクルの輪が広がっていくといいですね。
(「Live News α」9月23日放送分より)