長崎県から青森県にかけての日本海で2024年、世界最大級のクラゲ「エチゼンクラゲ」が大量発生している。大きいものでは体長2メートル、重さが100kgを超え、その重みで網が破れるなど、漁業にも深刻な影響を与えている。大量発生は2009年以来、15年ぶりで、鳥取県内でも駆除に追われ、漁ができないなど漁業への影響が広がっている。
体長2メートル 重さ100kg超も
8月上旬、島根・出雲市大社町日御碕沖の海中を撮影した映像には、悠々と漂う巨大なクラゲ「エチゼンクラゲ」が映っていた。

大きいものでは体長2メートル、重さは100kgを超える世界最大級のクラゲで、日本海で大量に発生している。

鳥取・岩美町の景勝地「浦富海岸」を巡る「山陰松島遊覧」・但井利宏船長は、「久しぶりに10年ぶりくらいかなと思われるくらい、大きなクラゲがたくさん遊覧船のコースでも見られるようになりました」と困惑していた。

但井船長は例年、エチゼンクラゲを見かけることはほとんどないという観光遊覧船のルート周辺で、一度の出航で10匹以上見かけることもあったとしている。

鳥取県水産試験場によると、エチゼンクラゲの大量発生は2009年以来、15年ぶりのことだ。長崎県から青森県にかけての日本海の広い範囲で、漁業に影響が出ているとしている。
漁業に深刻な影響「生活が苦しい」
こうした中、鳥取県有数の漁港、賀露港に取材班が行くと、いつもなら水揚げ作業に追われ活気のある時間のはずだが、岸壁にいる船から魚が水揚げされる気配はなかった。

その理由を漁師に聞くと「魚がクラゲのために傷んで白くなる」と言い、山陰沖の日本海でも、8月中頃から大量のエチゼンクラゲが押し寄せていて、漁業に深刻な影響を与えていることが分かった。

漁師は「生活が苦しい…魚が獲れないから。漁ができないということは、1円にもならないから」と話す。

大型のエチゼンクラゲが大量に網にかかると、重みで網が破れてしまい、かかった魚も傷んで商品価値が下がってしまう。このため、小型漁船を使う漁師の中には、採算を考えて出漁を見合わせる人も出ている。
駆除作業開始も「松葉がに」漁に懸念
こうした状況を受け、鳥取県漁協は9月13日から小型船による漁を一時中断し、クラゲの駆除作業を始めた。

駆除作業は、2隻の船で幅30メートルの網を引きながら、かかったクラゲを水圧で粉砕していくというものだ。しかし、海面を漂うクラゲを網にかけるには、船がゆっくり進む必要があり、作業は思うようにはかどらないという。
漁を休んで、1日に8時間もかけて駆除に専念すると、水揚げゼロが続くため大きな打撃となっている。

漁師は「こればかりは誰に文句を言うこともできない。自然のものだから…みんな諦めている」と話す。
11月に迎える「松葉がに」(山陰地方のズワイガニの呼称)漁の解禁を控え、漁業関係者も不安を募らせている。

鳥取県漁業協同組合賀露支所の岡部督支所長は「1番は厄介だな、困ったなという部分はある。クラゲが移動して深いところに行き、カニ漁の網に入ることになると、漁協としては大きな打撃になる。今のうちから少しずつ減らすためにやっている」と話し、鳥取県漁協では今後、日本有数の水揚げ量を誇る境港の漁船もクラゲの駆除を始めることにしている。

鳥取県水産試験場によると、エチゼンクラゲの寿命は約1年で、このあと冬場に向けて大量発生は終息に向かうと見込んでいるが、漁業関係者は不安を抱えながら、「松葉がに」のシーズンを迎えることになりそうだ。
(TSKさんいん中央テレビ)