日本の農業について学ぶため、西アフリカの国・ベナンから島根・松江市にある島根大学に留学している女性が、母国に中古自転車を贈る取り組みを進めている。「高校生の通学に役立てほしい」という女性の呼びかけに、遠く日本で支援の輪が広がっている。
母国の農業や経済の発展に貢献
「遠いところから重いのに、ありがとうございます」と日本語で丁寧にお礼を述べるマリアム・アダムさん。西アフリカ・ベナンからの留学生だ。
この記事の画像(11枚)2019年に初めて来日し、2021年から島根大学と鳥取大学などが共同設置する大学院で、日本の先進的な米づくりや米の流通の仕組みについて学んでいる。
この日、マリアムさんが姿を見せたのは大学近くの駐車場。家庭などで不要になった中古自転車を受け取っていた。
大学院では、田植えや稲刈りなど農作業を体験するなどして日本の米づくりについて学ぶ一方、流通について学んだ成果を生かし、母国・ベナン産のドライフルーツを日本で販売することなどにも取り組んでいる。母国の農業や経済の発展につながればという思いからだ。
そんなマリアムさんが中古自転車を集める理由は、日本で不要になった自転車を母国の高校生に贈ることだ。
マリアム・アダムさん:
島根大学に、使わなくなった自転車がいっぱいある。大体捨てられてしまうこの自転車が、ベナンの田舎の高校生が必要だと思った。
島根大学では、キャンパス内に放置された自転車を年に2回、業者に依頼し処分している。多くは卒業生が残していったと見られるが、それを聞いたマリアムさんは、捨てるのであれば、ベナンの高校生に役立ててもらおうと考えた。
自転車は高級品…目標台数は300台
マリアムさんによると「ベナンでは自転車が高価で、子どもの時に自転車に乗るのがみんなの夢」だとしていて、ベナンでの自転車の価格は、新品の場合、約5万円、中古でも3万円ほど。
平均月収(約1万2000円)の4倍から2倍半にあたる高級品で、一般家庭にはほとんど普及していないという。
また自宅から学校までが遠く、「通学に多くの時間を割いているベナンの高校生が自転車を通学に使えれば、勉強時間をもっと確保できる」と話し、ベナンの高校3校に通学用自転車を贈ろうと動き始めた。
大学から譲り受けるなどして、これまでに集まった約160台の中古自転車がマリアムさんのところに集まったが、目標台数「300台」には届いていないという。
ベナンまで「船」で送ることにしたものの、最大300台を積み込めるコンテナにはまだ余裕があり、運賃を最大限生かすためにも、マリアムさんは何とかしてあと140台を集めようと考えた。
チラシやSNSなどでの呼びかけに応じて、マリアムさんの思いに賛同した人たちが、次々に自転車を持ち寄ってきた。
自転車を寄付した人:
彼女の行動力はすごいと思いますし、1人でも多くの方にこういう活動を知ってもらって、何か日本から提供出来るものが、ベナンの方に少しでも多く伝われば良いなと思う。
約100万円の輸送料も課題
取材したTSKさんいん中央テレビの村上遥アナウンサーも、ベナンの人に役立ててもらおうと、使わなくなった自転車を寄付。
取材したこの日は20台が集まった。マリアムさんは、300台になるまで受け付けることにしている。
ただ、約100万円という輸送料も問題となっている。輸送費用約100万円のうち、これまでに調達できたのは約40万円で、残り60万円は、今後クラウドファンディングで集めるとしている。
マリアムさんは「日本からベナンに色々良いものを持って行きたい」と、日本で学んだことを母国・ベナンの発展につなげたいと話す。
持ち前の行動力で、「専門分野以外でも母国の役に立ちたい」と願うマリアムさんの奮闘はまだまだ続く。
(TSKさんいん中央テレビ)