鳥取市の鳥取自動車道で8月12日に起きた事故。車両3台が絡み、3人が死亡するという痛ましいものとなった。この鳥取自動車道は、過去のデータからみても死亡事故が起きやすい道路とされている。なぜ重大事故が起きてしまうのか、その要因を検証した。
事故のうち4件に1件が「死亡事故」
8月12日に鳥取自動車道のトンネル内で3台が絡む事故が起き、男女3人が死亡した。
この記事の画像(12枚)事故が起きた鳥取自動車道は、鳥取市の鳥取インターチェンジから兵庫・佐用町の佐用ジャンクションまでの全長約62kmの道路だ。
鳥取県警が管轄するエリアでは、2019年以降で16件の人身事故が発生。山陰道の92件と比べると件数自体は多くない。
しかし死亡事故に至った割合は、山陰道が10%にも満たないのに対し鳥取道は25%で、人身事故の4件に1件は死亡事故ということになる。2015年には、親子3人が犠牲となる交通事故も起きていた。
なぜ重大事故につながってしまうのか。その要因を探るため、鳥取市内の自動車学校のベテラン・入江孝紀教官に同乗してもらい、鳥取道を実際に走行した。
緩やかな勾配に対面通行、トンネルは34カ所も
走り出して10分…記者があることに気がついた。
杉谷紡生記者「トンネルが多いですね」
入江教官「(兵庫県の)佐用までの間の半分がトンネル内ですからね」
連続するトンネル。鳥取道にはトンネルが34カ所あり、その合計距離は約30km。全長約62kmのほぼ半分がトンネルとなっている。
入江教官「いま上りだと思いますか?下りだと思いますか?」
杉谷記者「え…全然わからないです」
緩やかな勾配が続く鳥取道は、トンネル内ではドライバーが傾斜に気づきにくく、速度の調節が困難に。無意識のうちに速度が変化し、追突事故などの要因になるという。
さらに、速度にのった車が車線が減少するところで無理に入ってきたり、走行車線を走っているドライバーもそのことに気づかずそのままの速度で走っていると、車同士の合流する地点で苦しくなることに…。
鳥取道では、そのほとんどが片側1車線の対面通行となっている。暫定2車線道路として開通したが、現在4車線化されている区間はわずかだ。
トンネルの多い鳥取道で、わずかな4車線の区間で追い越そうとすると、追い越した直後に、速度を超過した状態で事故の危険性の高いトンネルに入るケースが多くなってしまう、と入江教官は指摘する。
しかしトンネル内には、はみ出し防止を防ぐ防護柵、ワイヤーロープを技術的に設置できないため、入江教官は「無理な車線変更が致命的な衝突事故につながりかねない」と話す。
トンネル内への防護柵の設置が課題
鳥取道は中国山地を横断する地形の面からトンネルが多い。管理する国交省は、トンネル内の防護柵について「固定方法に課題があり、今のところ設置できていない」のだという。
国交省は、今後の対策として、NEXCOが3年前から試験的に行っているトンネル内にも設置できる防護柵の導入など、安全性を高めるための検討を進めて行きたいとしている。
構造的に危険な区間の多い鳥取道。国交省には、安全対策の強化を求めるとともに、ドライバー1人1人が道路の特性を理解し、安全運転を心がけることが重要だ。
(TSKさんいん中央テレビ)