しかし、もし大金を口座に残したまま亡くなっていれば、誰も使うことのないサービスのために延々と料金が引き落とされ続けることになります。

口座から出金が続く限り、休眠口座にはならないからです。

口座に大金が残されていれば、ずっと引き落としされる(画像:イメージ)
口座に大金が残されていれば、ずっと引き落としされる(画像:イメージ)

このような状況は、不合理だと感じる人もいるでしょう。しかし銀行からすれば、積極的に口座名義人の生死を確認してまで入出金停止を行うことに、あまりメリットはありません。

富裕層顧客であれば、日常的に銀行の担当者が接点を持っているケースもありますが、そうでなければ、そもそも銀行が顧客の生死を把握するのは容易ではありません。

もし生死を把握しようとすれば、そのためのコストも必要になるでしょう。

なお、休眠預金は、毎年1200億円ほど発生している(2014年度から2016年度のデータ)といいます。そのなかには、増えてゆく「老後ひとり難民」が残した預金も、それなりの割合を占めているのだと思います。

『老後ひとり難民』(幻冬舎新書)

沢村香苗
日本総合研究所創発戦略センター シニアスペシャリスト。精神保健福祉士、博士(保険学)。2014年に株式会社日本総合研究所入社。2017年よりおひとりさまの高齢者や身元保証サービスについて調査を行っている

沢村香苗
沢村香苗

日本総合研究所創発戦略センター シニアスペシャリスト。精神保健福祉士、博士(保険学)。東京大学文学部行動文化学科心理学先攻卒業。東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程単位取得済み退学。国立精神・神経センター武蔵病院リサーチレジデントや医療経済研究機構研究部研究員を経て、2014年に株式会社日本総合研究所入社。2017年よりおひとりさまの高齢者や身元保証サービスについて調査を行っている