しかし、もし大金を口座に残したまま亡くなっていれば、誰も使うことのないサービスのために延々と料金が引き落とされ続けることになります。
口座から出金が続く限り、休眠口座にはならないからです。

このような状況は、不合理だと感じる人もいるでしょう。しかし銀行からすれば、積極的に口座名義人の生死を確認してまで入出金停止を行うことに、あまりメリットはありません。
富裕層顧客であれば、日常的に銀行の担当者が接点を持っているケースもありますが、そうでなければ、そもそも銀行が顧客の生死を把握するのは容易ではありません。
もし生死を把握しようとすれば、そのためのコストも必要になるでしょう。
なお、休眠預金は、毎年1200億円ほど発生している(2014年度から2016年度のデータ)といいます。そのなかには、増えてゆく「老後ひとり難民」が残した預金も、それなりの割合を占めているのだと思います。

沢村香苗
日本総合研究所創発戦略センター シニアスペシャリスト。精神保健福祉士、博士(保険学)。2014年に株式会社日本総合研究所入社。2017年よりおひとりさまの高齢者や身元保証サービスについて調査を行っている