2024年3月にパリコレに出演して注目を集めたダウン症の女性が、7月に地元・静岡県で着物のファッションショーに出演した。これまで40回以上の手術を乗り越えてきた彼女はモデルを9歳の頃から続けている。なぜファッションモデルを続けるのか理由を聞いた。
パリコレに出演「楽しかった」

静岡県富士市に住むダウン症のファッションモデル・齊藤菜桜(なお)さん、20歳。
2024年3月、世界で最も有名なファッションショーの1つ「パリコレ」に出演した。ダウン症の日本人女性としては初めてのパリコレ出演だ。
齊藤菜桜さん:
(Q.モデルになりたいのはなぜ?)楽しいからです。
(Q.パリコレに出てどうだった?)楽しかった、拍手もらった
母・齊藤由美さん:
周りの人がたくさん拍手をくれたね

生後間もない頃にダウン症と診断された菜桜さんは食道閉鎖症などの合併症で、これまでに40回以上の手術を経験している。

9歳の頃に日本ダウン症協会が主催したファッションショーに出演したことをきっかけに、母・由美さんのサポートを受けながらモデル活動をスタートさせた。
障害者支援施設通所とモデルを両立

今でこそ人気モデルとして注目されている菜桜さんだが、母・由美さんによると、ファションショーの多くは自ら出演料を負担して出ることが多かったそうだ。
全国のショーともなると交通費などもかかることから、一度「モデル活動をやめよう」と相談したことがあったそうだが、菜桜さんのやる気と熱意に押され、これまで続けてきたという。
現在、菜桜さんは障がい者支援施設への通所とモデル活動を両立している。
着物でウォーキングレッスン

着物のファッションショー出演に向け、この日は月に2回指導を受けているウォーキングレッスンのため静岡市へ向かった。
着物でのウォーキングは足先を内側にむけて内股で歩くように講師が指導する。
だが、重い着物を羽織っての練習は履き慣れない下駄の影響もあってか思うように動けない。

「(腕が)ピーンとならないで、肘をこういう風にたるませます。でも(指先までが)近いとかっこ悪い。そのくらい、OK!」
講師のアドバイスを聞き、鏡を見ながらレッスンが続く。
着物の美しさを際立たせるためポージングの微修正も繰り返し行われ、菜桜さんも真剣な表情で食らついた。

齊藤菜桜さん:
(Q.難しいところはあった?) これ、ポーズ。
(Q.本番は大丈夫そうですか?) はい、頑張ります!

LB-MODEL SCHOOL・望月ちか代表:
菜桜ちゃんは本番に強く表現力も豊かなので、型にはまらないという部分でいい意味で表現してもらえればいいと思う
本番ではポージングもばっちり

7月14日のファッションショー当日。控室でメイクをしてもらう菜桜さんの表情からは緊張が見て取れる。
齊藤菜桜さん:
(Q.自分の顔を見た?) うん、見た。
(Q.どうだった?) かわいい、かっこいいです

そして、由美さんと共に舞台袖で動きを最終確認すると、いざショーの開演だ。

菜桜さんはたくさんの花があしらわれた艶やかな着物に身を包み、堂々とランウェイを歩く。
練習であまり上手くできなかったポージングも、本番ではばっちりと決めてみせた。
母親と一緒にランウェイ

そして、菜桜さんのランウェイ2回目。
今度は赤い華やかな着物に着替えると、由美さんと共に自信に満ちたウォーキングを披露し、会場内は大きな拍手に包まれた。
齊藤菜桜さん:
(Q.きょうはどうでしたか?) 楽しかったです
母親の由美さんは菜桜さんがリハーサルで裾を踏んで下を見てしまうことがあり心配していたが、本番ではミスはなく、「普通に歩けたのでよく頑張ったと思います」とねぎらった。
「多くの人の希望になりたい」
自身がモデルとして活動する姿を通して「ダウン症の人に限らず、多くの人の希望になりたい」と話す菜桜さん。
その挑戦は、この先もまだまだ続く。

齊藤菜桜さん:
みんなが笑顔になれるモデルになりたい。笑顔を届けたいです
「海外のファッションショーに出たい」という夢をパリコレで叶えた菜桜さんだが、もうひとつの夢は毎年静岡市で開催される東京ガールズコレクションに出ることだ。
華やかな地元の舞台に菜桜さんが彩を添えてくれる日が今から待ち遠しい。
(テレビ静岡)