国の名勝に指定されてから2025年で100周年となる岩手県一関市の猊鼻渓。この美しい渓谷の魅力を堪能できる「舟下り」に7月から若き新人船頭が加わった。23歳の菅原颯斗さんだ。会社員から一転、船頭の道を選んだ彼は、わずか3カ月の研修を経てデビュー。楽しい案内と美しい歌声で訪れる観光客を魅了している。
猊鼻渓に若き船頭の歌声が響く
国の名勝指定から2025年で100周年となる岩手県一関市の猊鼻渓。その渓谷の中を「猊鼻追分」の美しい歌声を響かせながら、観光客を乗せた舟が水面をゆっくりと進んでいく。
長い竿を巧みに操る船頭の菅原颯斗さん(23)は、7月にデビューしたばかりの新人だ。

「4つ目の名所・毘沙門窟、奥行き80mあって立って入ることができます。猊鼻渓の中で一番大きい鍾乳洞」と案内する菅原さん。
7月22日には約30人が乗った舟を操りながら、訪れた観光客に猊鼻渓の美しい自然の魅力をゆっくりと紹介した。

埼玉から訪れた観光客は「全然そんなふう(新人)に見えない。ベテランみたい」と驚き、大阪から来た人も「若いと聞いたけど、すごくしっかりしていて歌も上手」と感心していた。
景色に魅せられ決断した船頭の仕事
宮城県栗原市出身の菅原さんが船頭を志したのは、2024年8月に猊鼻渓を訪れたことがきっかけだった。
美しい風景と船頭の仕事に魅了された菅原さんは、2025年4月に勤めていた会社を退職。船頭の見習いとして新たな道を歩み始めた。

「お客さんとして乗ったときは景色を見ながら話を聞いていたけど、船頭になったら『漕ぐ・歌う・案内』をしなくてはいけない。あとお客さんの状況も見なければいけなくて、結構大変」と菅原さんは話す。
約3カ月の研修を経て7月に正式デビューした菅原さんは、今、船頭としての腕を磨いている最中だ。
地元の"なまり"を武器に
個性的な話し方も菅原さんの魅力のひとつ。訪れる観光客に地元の方言を交えながら案内している。
新人船頭 菅原颯斗さん:
どんどん、この"なまり"が濃くなっていく。これでもまだ1割しか出していない。家さ帰るとなにかだってるがわがんねえ(家に帰ると何を話しているか分からない)。
観光客からは笑い声や拍手が起こる。

そんな菅原さんの成長を、船頭歴18年の青柳哲夫さんは温かく見守っている。
青柳さんは「方言やなまりを交えながら案内している。歌や案内を武器にもっと成長してほしい」と期待を寄せる。

国の名勝指定から100周年を迎える猊鼻渓。この記念すべき節目に菅原さんのような若い世代が伝統を受け継ぎ、新たな魅力を作り出している。
今日も猊鼻渓には、新人船頭・菅原さんの歌声が心地よく響いている。
(岩手めんこいテレビ)