9月は蚊の活動が活発になるシーズン。毎年蚊に刺されてかゆい思いをしている人は、「もしかして、私って蚊に刺されやすい体質?」「人よりかゆくなりやすい体質?」と思ったことがあるかもしれない。実は、それは気のせいではない可能性が高い。
この記事の画像(6枚)“蚊博士”こと害虫防除技術研究所の白井良和さんによれば、「実際に蚊に刺されやすい人はいます」とのこと。
白井さんによれば、蚊に刺されやすい人には条件がある。また、刺された後のかゆみの出方も免疫の強さによって異なる。
体温が高い人や汗かきの人
蚊に刺されやすい人はどのような体質なのだろうか。白井さんは、蚊が寄ってくる要素には、温度・二酸化炭素・水分という3つがあると言う。
「したがって、体温が高い人、活動が活発で二酸化炭素を多く出す人、汗をかきやすい人、肌がみずみずしく潤っている人が蚊に刺されやすいですが、さらには、顔の皮脂や足のにおいにも寄ってきます」
例えば子供は体温が高く、よく動くので二酸化炭素も多く出し、新陳代謝も活発なので、蚊に刺されやすい条件が揃っている。ただ、大人より子供のほうが刺されやすいかというとそうとも言い切れないとのこと。また、男女差もない。
「60歳くらいでたくさん刺される方もいるので、あくまでその人の体質が大きいでしょう」
一番刺されるのはO型?
白井さんらの研究によれば、血液型によっても刺されやすさが違った。結果はO>B>AB>Aの順で、O型はA型の1.7倍刺されやすかった。これはどういう理由なのだろうか。
「蚊は血の味をわかって吸っているわけではないので、おそらくO型の人に蚊を引き寄せる体温・二酸化炭素・水分といった要素が備わっている人の割合が高かったのではないかと考えられます。蚊にとっては血を吸えれば誰でもいいのです」
体質は変えられない。では、虫よけを利用する以外にできる対策はあるのだろうか。白井さんは、以下の方法を推奨する。
・黒い服を着ない(蚊は黒に寄ってくるため)
・ゆったりした服を着る(蚊は2ミリ以内の生地なら服の上から皮膚を刺せるため)
・こまめに汗を拭き取る、シャワーを浴びる
かゆみの度合いは「免疫」で変わる
「かゆくなりやすさも人によって異なります」と白井さん。かゆみの出方は、蚊に刺される回数が増えるとともに、免疫が出来ていく段階に応じて以下のようになっている。
1段階:無反応
2段階:遅延反応のみ
3段階:即時反応 + 遅延反応
4段階:即時反応のみ
5段階:無反応
「即時反応」は、刺されたらすぐに白く腫れる反応。「遅延反応」は、一度腫れがひいてもう一度赤く腫れて長くかゆみが続く反応だ。
つまり、蚊に繰り返し刺されるうちに、遅延反応が出るようになり、即時反応と遅延反応の両方が出るようになる。さらに繰り返し刺されていくとだんだん反応は弱くなり、即時反応だけになり、最終的には無反応に。
このようなメカニズムになっているため、赤ちゃんは無反応で、小さな子供は遅延反応だけ、そして年配者は即時反応だけか無反応というパターンが多いとのこと。ちなみに白井さんはというと、「実験で蚊に刺されすぎて、4段階目の即時反応だけになっています」。
かゆみ止めがなければ流水で
そんな体を張って実験を進める白井さんは、蚊に刺された際には何もしないそうだが、一般の人にはかゆみ止めの使用を勧める。
「かゆみ止め成分(ジフェンヒドラミン、クロタミトン、リドカイン)が入った皮膚薬を塗ってください。PVA(プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル)というステロイドが入った薬はよりかゆみ止め効果が高くなります。もし手元に何もない場合は、流水で冷やしましょう」
みなさんは蚊に刺されやすい体質に当てはまっただろうか?当てはまった人は、蚊のシーズンは黒い服を着ないなどの対策をしてみるといいかもしれない。また、刺されているうちに反応が軽くなるということなので、いつかは蚊に悩まされなくなる日が来るのかもしれない。
※かゆみ止めを使用する際は、医師や薬剤師に相談してください。
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白井 良和(しらい・よしかず)
害虫防除技術研究所代表、有限会社モストップ取締役、医学博士。30年以上にわたり蚊を研究。1994年京都大学農学部農林生物学科卒業。1996年京都大学大学院農学研究科修了。殺虫剤メーカー研究員を経て、2001年富山医科薬科大学大学院医学系研究科博士後期課程修了。害虫駆除会社にて駆除業務を行った後、2003年、蚊駆除業務を柱に有限会社モストップを創業。現在では、蚊忌避剤や蚊捕獲器の効果確認試験を主な業務とし、書籍の出版、YouTube動画投稿等も行っている。