8月26日午後、河野太郎デジタル相が自民党総裁選への出馬を表明した。「BSフジLIVEプライムニュース」では河野氏をスタジオに迎え、総裁選に臨む上での思い、そして財政やエネルギー政策、自民党内の政治資金問題などについての考えをうかがった。
「財政規律を優先」「原発再稼働を容認」の真意は
竹俣紅キャスター:
総裁選のスローガンとしたのが「有事の今こそ河野太郎 国民と向き合う心 世界と渡り合う力」。ここに込めた思いは。
河野太郎 デジタル相:
今までの自民党の総裁選では日本の国の形を議論していればよかったが、今は中国、ロシアという独裁国家が武力で現状変更しようとしていて、中東の紛争が拡大しつつあり、またグローバルサウスの国々が政治的・経済的に大きな力を持つようになっている。世界情勢が混迷を深める中、本来なら自由主義国のリーダーであるアメリカの大統領選で世界の形が議論されてきたと思うが、残念ながらそうなっていない。日本も議論し行動することを世界から期待される時代になってきた。
反町理キャスター:
なるほど。
河野太郎 デジタル相:
また、今は1億2000万人の国民が一人ひとりの有事と戦っている。デフレで賃金が上がらない中で社会の分断が進み、孤立・孤独の問題が大きくなっている中、この問題をどう解決して生活の不安を取り除くか。コロナ後で金利が徐々に上がっていく中、財政規律を取り戻さなければいけない。プライマリーバランスから財政収支を議論すべき時期になった。加えて、地震や風水害に対する防災も、今我々が直面している有事。様々な有事の中、河野太郎の経験と改革をやってきた実績をしっかり見て、評価をしていただきたいという思い。
反町理キャスター:
小林鷹之さんが出馬されたとき、財政よりも経済だという趣旨の話をされた。必要なときには財政出動には躊躇すべきではないという趣旨だと理解したが、河野さんは逆に財政規律を優先すべきだと。
河野太郎 デジタル相:
財政と経済を混ぜて議論するとき、財政規律の議論を避けるために経済を出すというのがここしばらくの議論に見える。経済は経済でもちろん発展させなければならないが、財政は財政できちっと強い財政を作らなければいけない。財政収支の議論をやらなければ、増えていく利払いで首が回らなくなる。いつまでも財政出動で支えられる経済が本当の経済なのか、そんなことはないという議論が必要。
反町理キャスター:
河野さんといえば反原発の立場だったが、再稼働容認の立場を取られた。基本政策の転換に関してもう少し丁寧な説明があってもいいのでは、という点は。
河野太郎 デジタル相:
まず、原子力規制委員会が安全を認めたら再稼働ありきだということはかなり前から言っている。私が申し上げてきたのは、高速増殖炉がない中で再処理してプルトニウムを増やしていく、それで本当にいいのだろうかということ。
これまで私が描いていたのは、人口が減少して省エネが進み、2050年には8000億kWhぐらいにまで電力需要が下がっていく。その中で今1%ずつ増えている再生可能エネルギーの占める割合を倍の2%ずつにしていければ、2050年に需要供給が一致するということ。
だがここへきて、データセンターや生成AIの電力需要が極めて急速に立ち上がっており、現時点では2050年の需要が1兆4000億kWhぐらいになると見られている。省エネがどこまで進むのか、どこで供給量を増やせるのかという技術の見極めを行うため、現時点では水素発電、アンモニア発電、核融合発電、CCS(二酸化炭素回収・貯留技術)、など全方位に気をつけておくこと。
反町理キャスター:
「躍動感のある労働市場を作らなければいけない」と発言された。続けて「今以上に付加価値の高い仕事に移れる労働市場をつくる」。今いる職場、会社を守るという方向から、労働市場においてより賃金の高い仕事に移れるような転職を進めていきたいという方向に変化すると理解してよいか。
河野太郎 デジタル相:
今は1500万人ぐらいがパート、アルバイトで、そのうち多くの方はかなり最低賃金に近い状況で働いている。また派遣社員として400万人。これらの人たちは業務が固定化されている。
正規雇用の人の給料が少しずつ上がっているが、このように置き去りにされてしまう人たちを下から支えて上げていくことが大事で、そのためには付加価値の高い仕事へ移れることが必要。人やスキルへの投資が回っていくことで生産性を上げていくこと。
決選投票になったとき「小石河」の関係はどうなるのか
反町理キャスター:
「小石河」の話。前回の総裁選では小泉進次郎さん、石破茂さん、河野さんのうち、河野さんが立って他の2人が応援する形だったが、今回は3人が立った。どういう関係なのか。
河野太郎 デジタル相:
総裁選は常に違う状況の中で戦われる。同じ枠組みで続くほうが稀ではないか。それぞれが切磋琢磨しながら議論し、国民の皆様に大事な政策について考えていただくことが大事。3人が出るのはそう悪いことではない。
反町理キャスター:
総裁選の仕組み上、今回は恐らく上位2名による決選投票になる。誰か1人が最終決戦に臨むとき、お互いが応援するような相互扶助はないか。非常に失礼ながら、河野さんがもし決選投票に進めなかったとき、石破さんや小泉さんを応援してほしいと自身の支持者におっしゃらない?
河野太郎 デジタル相:
3位以下になるとは夢にも思っていない。また各議員はそれぞれ自分で投票するのであり、私が数十人を束ねて投票するわけではない。そこは皆さんがそれぞれの考えで投票されることになるのでは。
反町理キャスター:
政治資金の話。「(政治資金収支報告書に)不記載となった金額を返還することで、けじめとして前に進んでいきたい、あとは自民党の候補として審判を仰ぐことになる」と発言された。つまり総裁になった場合、返還してけじめをつけた人は自民党の公認候補にするという趣旨だと思ってよいか。
河野太郎 デジタル相:
まあ、そういうことです。
反町理キャスター:
逆に、返還しない人間はけじめをつけていないから公認しない?
河野太郎 デジタル相:
細かいケースを把握しているわけではなく何とも申し上げられないが、基本的には報告書を訂正するだけで済ませるのではなく、その分についてはきちんと戻すことが大事だと思う。いろんなケースがあり、一概にこうだと決め付けるのは時期尚早だと思っている。
反町理キャスター:
自民党の処分が甘いと言っている野党側はこれで収まるか。岸田内閣で行われた処分に加えてそのような形もとり、それでおしまいという理解でよいか。
河野太郎 デジタル相:
何らかのけじめは必要であり、最終的には国民の審判を仰ぐことになる。それに耐えられるようにしなければならない。
竹俣紅キャスター:
40代の男性からのメール。「河野さんのSNS(X、旧Twitter)で、誹謗中傷に対してブロックすることは理解できるが、自分に都合の悪い意見などまでブロックしているように見える。このような方が総裁になっても国民の意見を聞かない総理になるのではないかと心配になる」。
河野太郎 デジタル相:
誹謗中傷はブロックするが、時々そうでないものを間違えてブロックしてしまい、指摘されて解除することはある。ただ、例えば最近はオリンピック選手まで誹謗中傷をされ、ブロックをしたことが悪いかのように言われることがある。本来はブロックしてしまえば済む話が、批判を恐れてブロックもできなくなり、よけいに誹謗中傷で心を痛めるという方がいらっしゃると思う。
僕は「ブロックすること自体は全く悪いことではない。誹謗中傷されたらブロックしたほうがいい」と常々申している。デジタル庁にも目安箱があり、既におそらく千数百件の皆様の声を聞いて改善をしている。声を吸い上げるのはSNSだけではない。
竹俣紅キャスター:
ただ政治家の場合、芸能人やオリンピック選手とはまた異なり、「誹謗中傷」という言葉の中に正当な批判や反対意見なども含んでしまうことで、誹謗中傷という言葉を盾にして権力を振りかざしてしまう恐れもあるのでは。
河野太郎 デジタル相:
政治家だからいい、芸能人だからいいということをやっていたから、ここまで誹謗中傷が広がってしまった。あらゆる誹謗中傷はダメだということがまず大前提。べつに個人のSNSに誹謗中傷もどきで意見を言わなくても、いろんな場面で意見を言うことはできる。誹謗中傷をいかに防ぐかというのが、今SNSにおいて大事なことだと思う。
(「BSフジLIVEプライムニュース」8月26日放送)