タクシー業界でもドライバー不足が課題となる中、鹿児島の大手タクシー会社が、セカンドキャリアを考える求職者と50代以上のドライバーによる意見交換会を開催した。質問に答える現役ドライバーの体験談は具体的で説得力があり、有意義な時間となったようだ。

現役ドライバーの前職は様々

「マスターズの会」と名付けられた意見交換会を開催したのは、鹿児島市に本社を置く「鹿児島第一交通」だ。定年退職や転職後のセカンドキャリアを考える求職者に50代以上の現役ドライバーの生の声を聞いてもらい、タクシー業界の魅力を感じてもらおうというのが狙いだ。

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意見交換会では、求職者と現役ドライバーがいくつかのグループに分かれて議論が交わされた。

ドライバーの前職は様々で、前職がJRの運転士だったというドライバーは「最初は道路網が頭に入っておらず先輩や配車室に聞いた」という苦労話を披露した。一方、プロパンガス配送の仕事から転職したドライバーは「地理の面では最初から安心だった」と対照的だ。

ガソリンスタンド勤務経験のあるドライバーは、「車の整備の知識があったので同僚の車のトラブルに対応したこともあった」と前職の経験が生きた体験を話した。

ドライバーの話を聞き「心配取れた」

あるグループには、前職が営業職だったという60代の求職者がいた。「タクシーの場合、自分がやればやるだけのことが返ってくる。そういうやりがいに期待をもって挑戦したい」という。

これに対し、現役のドライバーの一人が「今は、ほぼ無線配車。20回走っても18回は無線配車。そういう意味では稼ぎやすいです」と話した。いわゆる“流し”で乗客を拾うのは1割程度というわけだ。

求職者は、ドライバーのリアルな体験談をメモを取りながら聞いた。意見交換の後、感想をたずねると「もうこの年齢だから稼ぎたいという野望はないが、元気なうちは働きたい」と語り、「ドライバーの話を聞いて、少し不安材料が緩やかになった」と業界への理解が深まった様子だった。

社員が社長に“直訴”「洗車機を…」

会では、ドライバーが社長に“直訴”する場面もあった。あるドライバーは「どこかに洗車機を置けないものですかね?夏場はまだいいが、冬になると手がかじかんですごいことになる」と要望した。

社長によると、洗車機を置いていた時代もあったが、今は洗車機の設置に多額の費用がかかり、ドライバーの自己負担も発生するという。すかさずドライバーは「少しぐらい払ってもみんなやりますよ」と声を上げ、社長は「持ち帰って検討する」と答えた。

職場のグループ活動で、会社に要望することはあってもトップに直接話すことはほとんどないということで、職歴15年のドライバーは「お客様第一ということを、もう一度初心に返ってやるべき。とても(こういう機会は)大事だと思う」と語った。

ドライバー不足の解消目指す

取材に応じた鹿児島第一交通・下之角洋社長は、「現役ドライバーの声を求職者に聞いてもらい、手応えは十分あった」と述べた。

社長によると、コロナ禍で3割以上が退職したということだが、「稼働台数が少ないから稼げる。今(社長の)僕より給料を取る人が何十人もいる。魅力を感じる人が来ているし、周りから興味を持ってもらえるように動いていきたい」と展望を語った。

初めて開かれた意見交換会。これを機にドライバー不足が解消され「県民の足」として一層、利便性が向上されることを期待したい。

(鹿児島テレビ)

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