全国規模のスポーツ大会では“裏方”の活躍も重要といわれている。10月7日に開会式を迎える「かごしま国体」でもそれは同様だ。出場選手や関係者らを迎えるホテルとタクシーに注目した。
ベストな状態で臨むため「宿泊施設は極めて重要」
10月7日に総合開会式が行われるかごしま国体に先立ち、9月16日から24日にかけて「会期前競技」としてレスリングや水泳などが行われ、会期前競技を終えた栃木県と岐阜県の水泳チームの選手たちは、鹿児島市のホテルをチェックアウトした。

チームの指導者は、選手がベストな状態で競技に臨むうえで「宿泊施設は極めて重要」と口をそろえた。「毎回、国体は宿が決まるまでは『どこなんだろう』と不安」だといい、「宿の環境・食事・おもてなしが一番大切」だと話す。
「国体は鹿児島にとってカンフル剤になる」
鹿児島県から国体関係者の宿の手配を委託されている合同配宿センターによると、かごしま国体での宿泊手配の申し込み人数は約3万5,000人、期間中の延べ人数は約17万5,000人にのぼる。さらに応援も含めると、約80万人もの人が鹿児島を訪れることが想定されている。

宿舎のひとつ、鹿児島サンロイヤルホテルはこれまでプロ野球、Jリーグなど、多くのスポーツ関係者を受け入れてきた。

池田司総支配人は「国体は鹿児島の観光にとって大きなインパクトであり、カンフル剤になる。コロナ禍でずっと耐えた3年間だったので、やっとホテルの日常の姿が戻って来たとうれしく思っている」と話す。

このホテルには期日前競技の期間中、延べ2,000人の大会関係者が宿泊した。10月7日の開会式以降はその3倍もの関係者が宿泊予定だが、スポーツ関係者の宿泊は通常の観光客とは異なる要素があるという。

鹿児島サンロイヤルホテル・池田総支配人:
トーナメント戦などは負けたら終わりという競技なので、5日間の宿泊予定の人が途中で試合に負けて翌日帰る、となる。そこの対応が一番難しく感じたところ
もうひとつの異なる要素は、朝食だ。競技の開催時刻によっては、朝食を取れずに出発するチームも多く、フードロスが発生する懸念もある。

その場合、弁当箱形式のボックス入れた朝食を提供する。これなら移動中の車内や会場でも食べられるのだ。
池田総支配人は「やはり食事はちゃんと取っていただきたいので、その対応をしっかりやらないといけない」と話す。
主な移動手段である“タクシー業界”が考え出したシステム
もうひとつ、県外の国体関係者と関わる機会が多いのが、交通機関だ。大人数のチームは貸し切りバスが、少人数のチームはタクシーが主な移動手段となるが、運転手不足が指摘されているタクシー業界にとって、国体をどう乗り切るかは大きな悩みどころだった。

鹿児島県内の大手タクシー会社のひとつ、南国タクシー・林正秀相談役は「プレッシャーだけですよ。不安とプレッシャーしかない」と話す。新型コロナの影響もあり、タクシーの数が減少してしまっているのだ。

そこで鹿児島市のタクシー業界が考え出したのが、4つのタクシー会社が幹事社となって、国体関係者からの配車依頼に一括して対応し、そこから鹿児島市内の約25のタクシー会社に振り分けるシステムだ。これなら、鹿児島の交通事情に不案内な県外関係者もスムーズにタクシーを確保できる。

南国タクシー・林正秀相談役:
お客の立場になれば、初めて鹿児島に来て「どこのタクシーを呼ぶの?」となる。幹事社に電話すればタクシーの予約ができる、ということがわかればお客さんは安心ですよね

このシステムの採用が決まったのは、9月初旬と、会期前競技が始まる直前だった。南国タクシーの林相談役は会期前競技で、水泳会場を担当していたが、「非常にスムーズだった。電話をすれば予約できるという状況だったので、非常に流れ的に良かったと思う」と、その効果を実感していた。
「選手が十分に力を発揮できるような環境を」

南国タクシー・林正秀相談役:
安心安全に快適に現場までストレスなしでお送りするのがタクシーの最大の使命と思っている

鹿児島サンロイヤルホテル・池田総支配人:
一般の観光客と違って、選手は競技する目的で来ているので、選手が十分にその力を発揮できるような環境を作らないといけない。私たち宿泊業の力も試される、ということではないかと思う

選手が試合前のコンディションを整える宿泊施設と、選手をスムーズに会場へ送る交通機関。選手のパフォーマンスを陰からサポートすべく、かごしま国体での活躍が続く。
(鹿児島テレビ)