円安やコロナ禍明けで日本を訪れる外国人客が増加している。2023年は2500万人余りが訪れ、コロナ禍前の8割程度に回復した。さらに2024年7月は329万人と月間での最多を更新。ただ、観光地では無許可のタクシー営業、“白タク行為”が後を絶たない。
京都の名所や世界遺産の観光地で…

京都を代表する観光地・嵐山。白タク行為を取り締まるべく、2024年6月に警察と行政が検問を行った。
ドライバーは「親戚を乗せている」と主張するものの、後部座席には観光客を出迎える際に使うとみられるボードのような物が積まれていた。
世界遺産となっている岐阜県の白川郷でも連休などは常に白タクが停車しているという。

日本を訪れる外国人客の数が回復傾向にあることを背景に、各地で白タク行為が横行していている。
本来、客を乗せ運送の対価として運賃を得る営業行為をするためには第二種免許と国土交通大臣の許可が必要だが、こうした免許や許可がないままに有償で客を送迎する行為が白タク行為だ。
SNSで話題「富士山夢の大橋」で…

静岡県内も例外ではない。

2024年6月、SNSで話題となったことで外国人観光客が殺到している富士市の「富士山 夢の大橋」で白タク行為を行ったとして、インドネシア国籍の男女が逮捕・送検され、その後、罰金刑を科されている。
そこで、運転手が逮捕された白タクに乗っていた外国人観光客に聞いた。

白タクの乗客:
(Q.運転手とはどのようにやり取りを?)インドネシア語でインスタグラムを通じてメッセージをやり取りした。
(Q.運転手とは会ったことは?)これまで会ったことはなく、ソーシャルメディアで見ただけでした。運転手が許可を得ているかどうか私にはわかりません
静岡県警では取り締まりを強化しているが、根絶には至っていないのが現状だ。
大型客船が入港する清水港で…

静岡市の清水港は洋上から眺める富士山の景色が素晴らしいうえ、周辺の観光地にも行きやすいことから、コロナ禍が明け大型客船の入港が増えている。
その清水港に7月1日、白タクと思われるマイクロバスや車が多数停まっていた。

乗務員に乗車料金について尋ねると「会社と会社で連携してやっていて(私は)従業員なのでわからない」と回答。お金をもらって乗せている認識はあるようだ。
「白タクは違法と知っているか」との質問には「多分ダメだな」と答えた。

別の時間帯にも白タクらしき車を発見しため直撃した。
誰を待っているか聞くと「友達。フィリピン人の」と口にしたが、いざ乗客が現れて「ドライバーと知合いですか?」と声をかけると、即座に「No!」と返ってきた。

こうした行為に怒りを露わにするのは正規のタクシー運転手だ。
タクシー運転手:
腹立たしい気持ちはある。我々は規制の上で乗客の安全を第一に運行していて、もしも(白タクで)トラブルがあって清水港全体のタクシーの評判が悪くなると問題だ
白タク行為がなくならないワケ
なぜ白タク行為はなくならないのだろうか?
外国人に関わる法律問題に詳しい小師健志 弁護士は「現行犯の現場を押さえるのが大変。乗せることと、その対価としてお金を渡すことの両方の現場を押さえる必要がある」と、摘発の難しさを指摘する。

さらに、白タク行為を取り締まる道路運送法の法定刑は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」だが、実際には数十万円程度の罰金が科されるだけというケースがほとんどだ。
例えば静岡県内で2024年5~6月に逮捕・送検された4人のうち3人は罰金30万円、残る1人は罰金15万円だった。

小師健志 弁護士:
法定刑自体が軽いとは思わないが、状況によってはしっかり処罰をするというところでいくと、もう少し厳しくしていい
小師弁護士は、現状では乗客側への罰則がない点も白タクが横行する一因と見ている。
さらに小師弁護士によると「白タク行為をする車は十分な保険に入っていない可能性もあり、万が一 事故に遭った時に十分な賠償が得られない可能性もある」ということだ。

白タクの撲滅には乗る側のモラルも大切だ。
全国的に白タク行為が相次ぐ中、正規のタクシー事業者や運転手を守るためにも有効な打開策や解決策がいま求められている。
(テレビ静岡)