石川県七尾市の能登島周辺は元日の能登半島地震で大きな被害を受けたが、地元の人たちは少しずつ復興に向けた歩みを進めている。今回は営業を再開した水族館や地元食材を生かしたレストラン、イルカウォッチングなどを巡り、今だからこそ行きたい夏の能登を紹介する。
この記事の画像(8枚)元日の地震から約半年かかって営業再開“のとじま水族館”
今回訪れたのは石川県七尾市。能登半島の内側に位置する七尾湾は波穏やかでゆったりとした風情が魅力だ。市内は今なお、能登半島地震からの復旧・復興に向けた歩みを進める最中だが、観光客の受入れを再開した施設も徐々に増えている。
まずは七尾湾に浮かぶ能登島に渡り、7月20日に一部営業を再開したのとじま水族館を訪ねた。ここでは地震発生当時、配管が破損したことによって水槽の水位が約半分まで低下し、ジンベエザメなど飼育する生き物にも大きな被害があった。イルカなど一部の生き物は今も全国各地の水族館に避難しているが、210種約7500匹の生き物たちとともに地震発生から約半年あまりで営業再開にこぎつけた。のとじま水族館の高橋勲さんは「我々飼育員も、やっぱり少しずつこういう形で普段の日常、震災前の状況に戻りつつあるのかなというふうに感じています」と話す。
「おかえり!」能登島に帰ってきたペンギンたち
案内してくれたのはペンギンの展示スペース。地震のあと他の水族館に避難し、ここに帰ってきたペンギンたちだ。現在、石川県内の「いしかわ動物園」のほか、新潟県の「上越市立水族博物館うみがたり」から戻ってきた16羽のマゼランペンギンが飼育、展示されている。
ペンギンたちは取材当時、羽が生え変わる換羽の時期を迎えており、新たな羽が生えるまでの間、陸上で過ごす姿を見ることができる。
のとじま水族館 高橋勲さん:
夏は週末を中心にイベントなども行っているので、ご家族、ご友人で1日楽しんでいただけるよう思い出作りに、のとじま水族館にお越しいただければと思います。
シェフの思いがあふれ出す地元食材のハンバーグ
昼食は能登島の対岸、七尾市和倉町にあるレストラン、ブロッサムへ。全国の若手料理人が競う料理コンクールでファイナリストになった黒川恭平シェフが腕を振るう人気店だ。
能登の食材を使った新メニュー、「能登牛&能登豚の薪焼きハンバーグ」をいただいた。能登で育った黒毛和牛「能登牛」のスネや、首の部位を使い、5種類ほどのスパイスで仕上げたハンバーグは、能登半島地震のあとに生み出したレシピだという。
黒川シェフ:
震災を受けて、自分が作り続けたい料理って何かと考えた時に洋食があって。それでやはり僕は洋食で勝負するんだという気持ちで新しく考案しました。
食後のデザートも自信作、能登の塩と、フランス産のクリームチーズ、北海道産生クリームを使ったチーズケーキだ。中心がとろける食感になるよう温度管理をして焼きあげている。
黒川シェフ:
うちだけではなく、色々な飲食店さんや総湯なども再開してますので、ぜひ遊びに来てほしいです。
能登島の民宿で人気のアクティビティを体験
食後は再び能登島に渡り、民宿・山水荘を訪ねた。約50年前に営業を始めた人気の宿だ。こちらも7月20日に営業再開。現在は一部食事に制限はあるものの、5部屋の客室、全てを利用することができる。
客室から見る能登の景色も美しいが、この宿で体験できるのが、能登島周辺に住む野生のイルカウォッチング。予約をすれば宿泊しなくても参加できる。
早速、山水荘のオーナー・石田直人さんが操縦する船でイルカウォッチングに出かけた。30分ほど進み、ツインブリッジ能登の辺りに到着すると、波間からイルカの背ビレが見えた。能登島周辺で見られるイルカはミナミバンドウイルカ。本来、暖かい海域に住むイルカだが、なぜか能登島に住み着き、世界でもここが最北端の生息地になっているそうだ。山水荘ではイルカウォッチングのほか、海に入ってイルカと一緒に泳ぐことができるツアーも行っており、こちらも人気だという。
今回訪れた七尾市能登島周辺は、地震の被害でしばらく断水していたが、紹介した施設はすでに復旧しトイレなども通常通り使用することができる。復興に向けて歩む地元の人たちの後押しに、ぜひ訪れてほしい。
(石川テレビ)