東日本大震災の被災地、岩手・陸前高田市では「ピーカンナッツ」の特産化を目指している。将来的には生産や加工の国内最大の拠点となり、復興の大きな支えとなることが期待されている。
「機能性表示食品」としても認められる
東日本大震災のあと、かさ上げされた場所で新たな街作りが進む陸前高田市。その一方で、津波が浸水した区域は、ほとんどの場所が今も空き地となっている。
この記事の画像(12枚)「ピーカンナッツ」の特産化を目指している陸前高田市。聞き慣れないピーカンナッツとはどんな食品なのか…陸前高田市にある「サロンドロワイヤル タカタ本店」で話を聞いた。
「サロンドロワイヤル タカタ本店」は、チョコレートの製造販売を手掛ける大阪の老舗の洋菓子店で、まるで宝石店のような店内のショーケースにはピーカンナッツを使った商品も並んでいる。
サロンドロワイヤル・前内眞智子社長によると、皮がついている殻付きピーカンナッツと、殻をむいてからローストしたピーカンナッツがあるという。柔らかい食感で、香ばしくて苦みがないため食べやすい。
ピーカンナッツはクルミ科の木の実で、原産国のアメリカでは年間12万トンが生産され、一般家庭でも日常的に食べられている食材だ。日本ではほとんど生産されておらず、2023年消費された約500トンは輸入に頼っている。
主にお菓子の材料として使われているが、最近では「機能性表示食品」として認められるなど、その成分や効果が注目されている。
2016年からピーカンナッツプロジェクトに参加している前内社長は、「ピーカンナッツを植えて産業を育てる。そういう思いでピーカンナッツと復興が結びついた」と語った。
津波浸水区域の土地を活用
ピーカンナッツの生産プロジェクトは、陸前高田市と東京大学、そして「サロンドロワイヤル」が連携して取り組んでいる。
店から歩いて5分ほどの場所では、ピーカンナッツの試験栽培が行われている。2021年に植えられ、2024年で4年目。4ヘクタールほどのこの場所に550本の苗木が植えられている。
震災前、街の中心部があったこの場所は、津波の浸水区域で海に近く海抜も低いことから、現在、住宅を建てることができない地域に指定されている。
この土地を活用し、陸前高田市にピーカンナッツの森を作るのがプロジェクトの取り組みの1つだ。
サロンドロワイヤル 栽培担当・宮川大輔さん:
2~3年後に1本の木から30kgを収穫。500本の木から1.5トン収穫できる。ピーカンプロジェクトはナッツだけではなく、苗木も作って全国に広めるということで希望を持っている。
従業員は全員が地元出身者
サロンドロワイヤル タカタ本店では現在、アメリカから輸入したピーカンナッツを加工し販売している。国内での取引価格は500グラムで1200円ほど。アーモンドと比較すると2倍ほどの値段で、収益性が高いことも特徴の1つだ。
将来的には栽培から加工、販売までを行う国内最大の生産拠点となる計画で、陸前高田市に「ピーカンナッツ」という新しい産業を生み出すのがプロジェクトの最大の目的だ。
現在20人ほどいる従業員は全員が地元出身者で、特に若い世代の地元への定着を促すなど、復興の大きな役割を果たす存在となっている。
地元出身の従業員・吉田治也さん:
津波で自宅は全壊となった。陸前高田市の震災当時は何もなかったが、サロンドロワイヤルは地元の人たちを積極的に雇用してくれたので、自分も他の社員も一緒に一生懸命に地元に貢献してがんばっていけたらと思う
プロジェクトの開始から7年。津波の被災地で育ったピーカンナッツが実を付けた。このまま順調に育てば、2024年の秋に初めての収穫を迎える。
樹齢が100年を超えても収穫ができるというピーカンナッツは、復興への思いが実を結び、やがて大きな森となるまで取り組みは続く。
(岩手めんこいテレビ)