「豆腐」を買い求める先といえば、今やスーパーなどが一般的だ。そんな時代の中、「街の豆腐屋で買い求める風景を残したい」と一念発起し、秋田市で豆腐専門店を始めた女性がいる。豆腐の魅力を伝え、「自分も豆腐屋を始めたい」という人が増えるきっかけをつくりたいと意気込む女性を取材した。

「豆腐百景」誕生のきっかけとその思い

秋田市の千秋公園のお堀近くにある秋田市文化創造館。その一角に店を構えるのが、豆腐の専門店「豆腐百景」だ。

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店を切り盛りする秋田市出身の矢吹史子さんは、これまで秋田県内の魅力を発信する雑誌やウェブマガジンの編集者として活動してきた。

転機が訪れたのは2年前。家業の豆腐店を営む父との会話の中で、秋田市内に豆腐店が数軒しか残っていないことを知った。

豆腐百景・矢吹史子さんは「取材で得たヒントを豆腐に生かしたい」と語る 
豆腐百景・矢吹史子さんは「取材で得たヒントを豆腐に生かしたい」と語る 

店を始めたきっかけについて、矢吹さんは「編集の仕事ではいろんな人を取材して、“無くなりそうな文化”や“食”にまつわる取材をたくさんしてきた。その中でいろんなヒントをもらったので、豆腐に生かして、豆腐を“編集する”ような気持ちで、豆腐屋が無くなるということに対してアクションできないかと思って始めた」と話す。

「できたてよせ豆腐」と「よじろあげ」の魅力

2022年の夏、秋田市内の実家の一角を改装してテイクアウト専門の一号店を開いた。

“街にある豆腐店で豆腐を買う風景を残したい”という思いから、店名は「豆腐百景」と名付けた。

そして、2023年の春には、秋田市文化創造館にイートインスペースを設けた二号店を開いた。店の看板メニューの1つが、手作りの「できたてよせ豆腐」だ。

豆腐百景・矢吹史子さん:
一番は出来たて。温かい豆腐を提供することを考えた。さらに豆腐を量り売りすることで、容器を持って買い物に来てもらう。昔は鍋を持って豆腐を買いに行ったという話を聞くが、ちょっとノスタルジーなイメージも与えながら、スーパーとは違う魅力の豆腐屋ができたらいいなと思い「できたてよせ豆腐」の販売を始めた。

「できたてよせ豆腐」は、大仙市の農家から取り寄せた大豆「リュウホウ」を原料に使用している。そのまま食べても豆そのもののクリーミーさが味わえるほか、男鹿の塩やみそたまり(石孫本店のしょうゆ)、ごま油の3種類の味つけを食べ比べられるセットも用意している。

そして、もう1つの看板メニューが「よじろあげ」だ。商品名は、秋田藩主・佐竹氏に飛脚として仕えた「与次郎キツネの伝説」にちなんでいる。

「油揚げといえば“キツネ”。秋田でキツネといえば“与次郎”。以前の編集の仕事の中で、秋田に伝わる“与次郎稲荷伝説”の取材もしてきた。秋田の土産として、秋田の話題として広がっていってほしいと思い、“与次郎”という名前を借りて名付けた」と由来を話す。

注文が入ってから焼いて提供する「よじろあげ」は、外はサクサク、中はふんわりの食感が楽しめる。

地域に根差した豆腐文化の発信

ところで、矢吹さんが二号店をこの場所に開いたのも、近くに「与次郎像」があるからだ。

「もし次の店をやるなら、与次郎稲荷伝説の本拠地である千秋公園付近がいいなと思い探していたところ、ちょうど文化創造館にスペースがあると声がかかった。ちょっと運命を感じている」と矢吹さんは話す。

「与次郎」に不思議な縁を感じた矢吹さんが考える店の今後は?

笑顔で話す矢吹さん
笑顔で話す矢吹さん

豆腐百景・矢吹史子さん:
意外と小さな機械で豆腐ができるとか、メニューの展開もアイデア次第で面白くできるというのを感じてもらい、「自分もできるんじゃないかな」と思ってもらいたい。例えば、街のパン屋やコーヒー屋など小さな店が最近増えているが、そんな感じで街の豆腐屋を自分も始めたいという人がどんどん増えるきっかけづくりをこれからもう少し進めていきたい。

街に豆腐店を残したい。矢吹さんはこれからも地域に根差して豆腐の文化を伝えていく。

秋田市文化創造館店では、豆腐を使った和のスイーツ「おとうふサンデー」も楽しめる。街を散策するついでに立ち寄ってみてはいかがだろうか。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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