医師や看護師が乗って現場に出動し、消防隊員ができない治療に当たる「ドクターカー」。1分1秒を争い正確な処置が求められる救急医療の現場でいま、ドクターカーの重要性が高まっている。

いま沖縄で起こっている事”救急車がなかなかやって来ない”

豊見城(とみぐすく)市にある友愛医療センター。

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388床の病床を持ち、災害拠点病院としての機能を備え、隣接する那覇市や糸満市、そして南城市や八重瀬町まで南部圏域の医療を支えている。

友愛医療センター 山内素直 医師:
2020年からのコロナとかで、救急医療がひっ迫しました。所轄の消防も救急車要請の数が年々増えていて、かなりひっ迫している状態です。いま沖縄で何が起こっているかというと、119番通報をしても救急車がなかなかやってこない

沖縄県内では2024年の7月に入って、新型コロナの感染者が増加し、さらに連日の猛暑で熱中症患者も増え、取材日も救急車で運ばれてくる患者が相次いだ。

友愛医療センター 山内素直 医師:
救急隊が現場に着いたとしても、地域の救急病院が一杯になっていて、救急搬送までに時間がかかる、受け入れ先が決まるのにも時間がかかる。そういうような状況になってしまっている

時には一刻を争う事態もある救急医療現場。救急体制がひっ迫する中、こうした状況の改善に期待されるのがドクターカー。

出動件数は導入から4年で5倍に

友愛医療センターは、開院した2020年の当初からドクターカーを導入している。

ドクターカーは消防から通報を受けて、医師や看護師、そして、救急救命士を乗せて出動するもので、現場で医師や看護師が応急処置を行うために運用されている。

救急救命士 大田祐輔さん:
僕たち医療機関側も現場に向かうことによって、早期に医師の管理下に患者さんを置いて、適切な処置をすることが一番求められることかなと思います

2020年の導入後、コロナ禍もあり救急医療がひっ迫したことで需要は高まり、出動件数は2022年度は311件、2023年度は308件とおよそ5倍に増えた。

救急救命士の大田さんによると、救急救命士以上に高度な医療処置ができるドクターカーが来ていたら、患者さんを救えたかもしれないという場面によく遭遇したとのこと。

ドクターカーの出動要請はコロナや熱中症のみならず、交通事故や小児の救急まで幅広い分野に対応を求められるため、病院では定期的な研修を実施するなど、スタッフの育成に余念がない。

友愛医療センター 山内素直 医師:
不測の事態に対応できるようなシミュレーションをしておくことが、本当に何が起こるかわからない、どんな現場に行くかわからない私たちにとってはとても心構えにもなるし、知識とスキルのブラッシュアップにもなるかなと思います

要請から現場での治療開始までわずか10分

いつ何時、発生するかわからない救急医療の現場。

取材した日も、ドクターカーの要請は突如入った。

要請は糸満市で男性が機械に腕を挟まれた事故という内容であった。

友愛医療センター 山内素直 医師:
緊急車両、この先の交差点を右折します。左右に分かれて道を譲ってください

現場に到着後、先に到着していた救急車の中で山内医師はすぐにけがをした男性の治療に当たった。

要請を受けて現場で治療を始めるまでにかかった時間は、わずか10分であった。

男性は現場での応急処置を終えた後すぐ病院に運ばれ、幸いにも大事には至らなかった。

けがをした男性:
救急車に乗るのも初めてだったし、こういう事故も初めてだったんですけど、ちゃんとした説明があったり、先生が居てくれたことで安心感はとてもありました

友愛医療センター 山内素直 医師:
伝送システムで映像も病院で見えているので、実際に私が現場に行き、「傷はこういう状態だから、これはうちの病院で対応可能だな」ということもわかりますし、現場で点滴を取り、痛がっていたので痛み止めをして、安全に患者さんを運ぶことができたという症例になったと思います

高まるドクターカーの重要性

2024年6月、友愛医療センターのドクターカーの出動件数は36件で、1日の平均は1回以上となった。

出動している最中にも要請を受けることもあり、病院では現在、2台目となる救急車型のドクターカーの導入に向けてクラウドファンディングを実施している。

現在、運用しているSUV型は、患者を運ぶことができないことから、救急車の到着を待たないといけない。

消防の救急車が現場に行けない時、ドクターカーが所轄の救急隊の到着を待たずに患者さんを運べるようになるため、山内医師は「治療を受けるまでの空白の時間を防ぎ、地域の医療を支えるために2台目のドクターカーは必要」と話す。

友愛医療センター 山内素直 医師:
私たちが導入する救急車型のドクターカーは、私たちだけのものではないと思うんですよ。地域の皆さんの共有財産という形でとらえてもらう方がいいんじゃないかと思います。そういう意味では、ドクターカーの有用性を私も感じていますし、地域のみなさんに安心・安全をお届けできるんじゃないかなと

1分1秒を争う救急医療の現場。迅速に正確な処置に繋げ、救える命を救うためにいま、ドクターカーの重要性が高まっている。

(沖縄テレビ)

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