晴れて気温が高い日の夕方起きる「熱雷」
夏に危険なのは、厳しい暑さや熱中症なのはもちろんのことだが、雷にも注意が必要だ。雷は非常に危険であり、直撃を受けた場合には命に関わる。
雷による死亡や負傷の多くは、雷雨の最中に屋外にいることで発生している。夏はレジャーを楽しんだり、イベントなどで外出したりする機会も増えるため、対策をしっかりしていきたい。
雷は年間を通して発生しているが、特に夏に落雷件数が増える。気象庁によると、2005~2017年の13年間の落雷害の数は、1540件。そのうち8月だけで、総数の約3割にあたる468件にものぼり、年間の中でも特に夏期に集中している。

夏の雷に多いのは、強い日差しで地面が暖められて上昇気流が発生して生じる「熱雷(ねつらい)」である。晴れて気温が高い日の夕方に注意が必要だ。落雷は、積乱雲が発生しやすい内陸部で非常に多く発生する。また、熱雷が発生するときに、上空に寒気があると雷雲が猛烈に発達する。
雷雲は急速に発達するため、晴れていた空が一気に曇り、強い雷雨に見舞われることがある。例えば、バーベキューを楽しんでいたところ、ゴロゴロと遠くから雷の音が聞こえはじめたかと思ったら、急に暗雲が立ち込め、どしゃ降りの雨に慌てるといった状況である。
釣りやゴルフなどのレジャーでの危険性
釣りやゴルフなど外のレジャーで落雷に遭わずに済む一番確実な方法は、天気予報で雷注意報が出ているときは予定を中止し、出かけないことだ。
ただ、雷注意報が出ていなくても、天気が急変してしまうこともある。川や海辺で過ごしているときは、特に空の様子に気を配ろう。遠くの空に黒い雲などが見えたら、雷の危険がある。水は電気を通しやすいため、川や湖、海、プールなどから速やかに離れて、安全な場所に避難しよう。雷が光ったり、鳴ったりしてから避難するのでは遅いことがある。

釣りをしているときに雷雲が近づいてきた場合は、釣りざおに雷が落ちる可能性があるので、すぐに片付けよう。
また、ウィンドサーフィンのようなスポーツでも、何もない海上で帆を立てるため、雷が伝わりやすく非常に危険である。

ゴルフコースのような広大な開けた場所も雷の危険度が高く、人に雷が落ちやすい。このため、ゴルフクラブのような長いものは手にしない。雷が近づいたらすぐに中断し、安全な建物や車内に避難することだ。

野外フェスや花火大会の会場も要注意である。雷の危険がある場合は、早めに会場を離れる決断をしよう。混雑している場所で慌てて避難するのは危ないため、空の様子に気をつけ、最新の情報をスマートフォンなどで確認し、早々に安全な選択をすることが重要だ。
停電や落雷時 家電への備え
雷の発生によって停電が起こることもある。電力会社の設備に落雷し、自宅でのエアコンや冷蔵庫が使えなくなるケースもある。
雷が落ちると、その電流が電線を通じて家庭内に侵入し、家電製品に重大な損傷を与えることがある。特に、パソコンやテレビ、冷蔵庫などが破損することが多い。パソコンやテレビなど、重要な機器はコンセントを抜いたり、雷サージプロテクターを使用したりすることも対策の1つだ。
「雷注意報」や最新の気象情報をチェック
雷を避けるためには、外出前には必ず天気予報を確認し、雷雨の可能性がある場合は外出を控えたり、予定を変更したりすることもおすすめだ。
天気予報で「大気の状態が不安定」とか「雷を伴う」というキーワードが出てきたら、雷が発生する可能性がある。雷が発生する数時間前を目処に気象台では「雷注意報」を発表する。
スマートフォンの天気アプリなどの通知設定を利用することで、雷の接近を事前に知ることができる。また、気象庁のウェブサイトのレーダーや「雷ナウキャスト」などを活用することで、リアルタイムの気象情報を入手できる。GPSと連動すると雨雲や危険個所との位置関係が一目瞭然で使いやすい。

また、屋外でのイベントや旅行中は、あらかじめ避難できる場所を確認しておこう。例えば、キャンプ場では管理棟や車内が避難先として適している。
雷鳴が聞こえたらすぐに屋内や車に避難!
もし、雷鳴が聞こえたら、直ちに安全な場所、建物の中に避難しよう。公園で遊んでいる子どもをすぐに室内に避難させるといった対応が必要である。屋内では、窓やドアをしっかりと閉め、壁や全ての電子機器からは少し離れた位置にいるのが安全であり、1m以上離れるとさらに安全だ。
車の中も安全な避難場所とされているが、金属部分には触れないようにしよう。車の窓はしっかり閉める。金属で覆われた空間は密閉した場合のみ安全だからだ。車内にいる場合は、外に出てはいけない。レジャーで出かけているときも、頑丈な建物か車の中に避難しよう。
木からは4m以上離れる!
高い木は雷が落ちやすいため、木の下にいることは非常に危険だ。高い建物や木の下、開けた場所は雷が落ちやすいので避けよう。軒下も安全ではない。

人間の体液は木に比べてはるかに電気を通しやすく、木から1~2m近くにいると、雷は人に流れてくるので、木から4m以上離れることが重要である。姿勢を低くして、持ち物は体より高く突き出さないようにする。
金属製品を避けることも重要だ。金属は雷を引き寄せる性質があるため、雷が発生している間は傘や自転車などの金属製品からは離れよう。
もし、雷のときに屋外にいて逃げる場所がない場合は、しゃがんで膝を抱え、身を小さくして待機するのが良い。地面を電気が流れることもあるので、手やひざ、おしりなどは地面につけないようにしよう。
最後の雷鳴から30分間は待機
雷が光ってから音がするまでの秒数が開いているからといって安全だとは限らない。
音は1秒間に約340m進む。稲光を見てから、雷の音を聞くまでが10秒だったら、3.4km先で雷が起きたことになる。ただ、雷雲は大きければ数十kmもある。少しでも雷鳴がしていたら、自分のいる場所が雷雲の範囲であり、雷が落ちてくる可能性が十分にある。

屋外での活動を再開する場合には、最後に雷鳴を聞いてから30分間、次の雷鳴が聞こえないのを確認してからにしよう。
雷に対する適切な対策と行動を取ることで、雷による被害を最小限に抑えることができる。最新の気象情報の確認や、安全な避難場所の確保など雷への備えをしっかりと行い、少しでも安全に夏を過ごすように心がけよう。
【執筆:日本気象協会】