関東でも梅雨が明け、本格的な暑い夏がやってきた。電車内の冷房が心地よく感じるが、この冷房をめぐってちょっとした“論争”が起きていることをご存じだろうか。
それが「弱冷房車」の存在で、暑さのせいか、SNSでは「生ぬるい」「廃止してほしい」といったコメントが見られるのだ。一方で「寒暖差で体調崩しがちな人には本当に必要」「体調悪いときの弱冷房車のありがたみは尋常じゃない」などと訴える人もいる。
そんな弱冷房車は1984年、大阪・京都・滋賀を通る「京阪電鉄」が導入したのが始まりとされる。冷房が少し弱めになっているのが特徴で、今は首都圏の電車にも普及している。

設定温度は鉄道会社によって違うが、一般車両よりも2℃ほど高く設定されることが多い。例えば、東京メトロでは一般車両は26℃、弱冷房車は28℃に設定しているという。
さまざまな意見が聞かれる弱冷房車は、どんな経緯で導入されたのだろう。SNSでは“強冷房車”を求める声もあるが、これは難しいのか。東京メトロの運営会社の担当者に聞いた。
「冷房が効きすぎる」利用客の声がきっかけ
――弱冷房車を導入したきっかけは?
車両冷房の整備を進めている際に、高齢者や女性は「冷房が効きすぎる」と感じる傾向があり、お客様からもご意見をいただくことが多くありました。こうした声に配慮し、よりきめ細かなサービスを提供するために1994年4月15日から、銀座線、丸ノ内線を除く路線で弱冷房車を投入しました。

――電車内の温度はどのように調整している?
乗務員が電車両端にあります、乗務員室から設定しております。空調をONにすると、設定温度になるように自動制御していて、車内温度や混雑具合を確認して「冷房・除湿・送風」を組み合わせています。温度はこれまでのお客様の声などを受けて、設定しております。
――弱冷房車の位置はどのように決めている?
弱冷房車の車両位置は「乗り入れ」(他の鉄道会社との直通運転)を行う各社と協議の上、設定しております。銀座線と丸ノ内線は6両編成と(他路線に比べて)車両数が少なく、混雑率の偏りなどでスムーズな移動の妨げになる可能性がありますので、弱冷房車はございません。
乗り分けたいなら案内放送やステッカーを参考に
――弱冷房車の車両を見分けるコツは?
乗務員による弱冷房車への案内放送のほか、車外・車内に「弱冷房車」のステッカーが貼ってありますので乗車する際のご参考にしてください。(弱冷房車の場所は)路線や相互直通を行う会社ごとに異なる場合がございますので、ご利用の際にはご確認をお願いします。

――SNSでは“強冷房車”を求める声もあるが?
空調が暑い・寒いなどのご意見は頂戴しております。冷房性能および省エネの関係もありますので、強冷房車の導入は検討しておりません。ただ、最新の車両は以前よりも冷房能力は向上しております。
――電車内の暑さをやわらげることは難しい?
体感温度には個人差がありますので、すべてのお客様に満足いただける空調操作は大変難しいと感じております。乗務員がその日の外気温度・車内温度・湿度・混雑状況などを加味して、空調を使用し、できる限り快適な車内空間の提供に努めさせていただいております。
冬に“弱暖房車”を見ない理由
――ちなみに、冬に“弱暖房車”を見ないのはなぜ?
暖房は冷房とは仕組みが違い、座席の足元から熱を放射する仕組みのため、スイッチを切ってもしばらく余熱が残り、暖かさが続いてしまう特徴があります。温度調整が難しいため、弱暖房車はございません。
体温調整が苦手、体調を崩しやすいなど、弱冷房車を必要とする人もいるようだ。暑い日に乗るのを避けたいのであれば、案内放送やステッカーを参考に、駅のホームでの待機場所を調整してみてもいいかもしれない。