悔しくて仕方がない…担任教師から娘が受けた仕打ち 教育現場で繰り返される性犯罪

学校で教師が子供にわいせつ行為をする事件が、たびたび起きている。

こうした被害から子供たちを守るため、性犯罪を行った人が二度と教壇に立てないよう「犯罪歴が無いことの証明=無犯罪証明書」という仕組みを、教育現場に導入しようという動きが広がっている。

一方、「加害者の更生の機会が失われる」と、警鐘を鳴らす人もいる。

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愛知県内に住む島田さん(仮名)。2014年、愛知県内の小学校の特別支援学級に在籍していた当時9歳の娘が、担任の教師から裸の写真を撮られた。

島田さん(仮名):
もう本当に信じられなかったですね。裏切られたという。誰もいない家庭科室に連れていかれて、担任の男性教諭から股間が写っているような状態で写真を撮られました

この小学校に赴任する1年前に中学校に勤務していたその教師は、体育館で女子生徒と2人きりになった際に、尻や胸に手を入れたという。

2012年、当時勤務先の中学校で、女子生徒の体を触ったと保護者から指摘され、トラブルになった男性教師。その後精神疾患で休職したが、次の年から島田さん(仮名)の娘が通っていた小学校に復職し、再びわいせつ行為に及んでいた。

島田さん(仮名):
そのような疑いがある先生を再び生徒の前に出すのはあってはならんので、クビにすることはなくても教育委員会付で事務の仕事に徹してもらうとか、二度と生徒の前に出ないように対処してもらえれば、うちの娘へのわいせつ行為は決してなかったと思います。本当悔しくて仕方ないですね

教育の場で繰り返される性犯罪。

2020年4月には、東京でベビーシッターの橋本晃典被告(29)が保育中、男の子にわいせつな行為をした疑いで逮捕。

そして5歳から11歳の男の子7人に対し、わいせつな行為を働いていたとみられることが明らかになった。

性犯罪歴のある人を教育現場からシャットアウト…「無犯罪証明書」の義務化を望む人たち

この様な教育現場での性犯罪を防ぐため、ある動きが広がっている。

病児保育などの活動をするNPO法人「フローレンス」の前田晃平さんは、教師や保育士、ベビーシッターなどの仕事に就く人に対し「過去に性犯罪をしていないことの証明」=「無犯罪証明書」の提出を義務付けるべきだと訴えている。

NPO法人フローレンスの前田さん:
保育・教育現場で働きたいとなった時に、無犯罪証明書、犯歴証明書の提出を義務化するという仕組みです。子供たちのいる現場に性犯罪を行った人たちが2度と就職できないようにすること、そこが最終的なゴールだと思っています

性犯罪をした経歴がある人を、教育現場からシャットアウトする無犯罪証明書。前田さんの団体は、2万件の署名を集めた要望書を法務大臣に提出するなど、精力的に活動。

しかし政府は、個人情報保護の観点から慎重な姿勢で、制度導入のメドは立っていない。

すでに同様の仕組みが導入されている国もある。アメリカのニューヨーク州では、保育園や学校、ベビーシッター会社などで働く場合には、犯罪歴の証明が法律で義務付けられていて、性犯罪などで有罪となった過去がある場合はその仕事に就くことができない。

シッターを利用する母親:
犯罪歴を知るだけでは子供を守るのには十分とは思わないけど、最低限できることだと思う

日本では、学校の教師が性犯罪で教員資格を失った場合でも、3年たてば再取得できるのが現状だ。

性犯罪歴のある人が教師になっていいはずがない…高校の時、教師から性的暴行を受けた女性の訴え

涌井さん:
今までなかったことがおかしいなって思います。本当におかしいんですよ、学校。誰を守っているの?って思っちゃうんですよね

高校生の時、2年半にわたり教師から性的暴行を受けた涌井佳奈さんは、無犯罪証明書の導入を強く訴える。

涌井さん:
ある時、ちょっとおいでって呼ばれて、普通に何の警戒もなく、そんなことが起こるとも分からずにその先生と2人きりになってしまって、いきなりわいせつなことをされたっていう経験があって。その時、いやだと言うとか、逃げるとかできなかったし、その後の人生はメンタル的にもすごく深刻な影響があったので。その教師が(その後も)教壇に立っていること自体あり得ないと思う

心に負った傷が一生消えない被害者と、時間がたてば元の仕事に戻ることができる加害者。涌井さんは「今の社会は、本来守るべき存在をないがしろにしている」と話す。

性犯罪歴のある人が教師になっていいはずがない…。無犯罪証明書の導入を強く訴える被害者の声だ。

加害者の更生の機会失われるリスク…「無犯罪証明書」の導入には反対意見も

この動きに警鐘を鳴らす人もいる。
愛知県就労支援事業者機構の井坂巧所長。罪を犯して保護観察となった人の就職を支援している。この日向かったのは保護観察所。

この男性は1年間刑務所に入っていたが、この日仮釈放となり、井坂さんたちが就職活動の相談に乗っていた。

就労支援員:
なるべく早く就職して働いてもらって、生活も安定してもらうのが第1の目標なので

仮釈放された男性:
私自身がもう1回同じこと(罪)をやらないというのが1番。まずは仕事のメドをつけて、自分の生活の基盤を作っていきたい

法務省によると、犯罪をした人の再犯率は仕事についている場合とそうでない場合で3倍以上の差がある。井坂所長は無犯罪証明書によって加害者の更生する機会が失われるリスクがあると指摘する。

井坂所長は、「2度と子供を犠牲にしたくないという気持ちは当然のことだと思う。ただ無犯罪証明書の導入が、色々な業種に広がると、立ち直りたいと願っている人たちの機会を狭めることにならないか」と話し、やり直せる社会であってほしいと訴える。

一方、「我々が伝えたいのは社会復帰を妨げていなくて、子供がいない現場で社会復帰してくださいと言っているだけであって、そこは取り違いしてほしくない」と話す、NPO法人「フローレンス」の前田さん。

弱い子供たちを守る当たり前の社会…加害者の更生や個人情報保護。「無犯罪証明書」の導入はまだ議論に時間がかかりそうだ。

(東海テレビ)

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