71回目を迎える静岡市の安倍川花火大会は夏の一大イベントとして例年多くの人が訪れる。2023年も県内外から55万人が訪れたが、2024年の開催にあたり、大会本部は例年運行していた市の中心部と会場を結ぶシャトルバスの運行中止を決めた。
静岡の夏の夜空を彩る一大イベント

静岡市の夏の風物詩・安倍川花火大会。
会場はJR静岡駅から約3.5km離れた場所にある安倍川河川敷の広場で2023年は55万人が訪れた。
2024年も県内外から多くの来場者が見込まれているが、大会本部は6月中旬、例年運行していた市の中心部と会場を結ぶシャトルバスの運行を取りやめると発表した。

大会本部・原田正男 会長は「運転手の労働時間の規制が強化されたため、静岡市・警察本部・静鉄ジャストライン(バス運行会社)と協議し、問題はあったが中止を決定した」と苦渋の決断に至った経緯を明かす。
働き方改革の波“物流の2024年問題”が押し寄せる

背景にあるのはドライバーの残業時間の上限を規制したいわゆる“物流の2024年問題”だ。
静鉄ジャストラインは、慢性的なドライバー不足の中、これまで8時間とされていた勤務と勤務の間の休息時間が原則11時間となったことも重なり、通常の業務にプラスして午後10時頃までシャトルバスを走らせることは難しいとしている。

このため、静岡市の難波喬司 市長も「短期的なバス(シャトルバス)の運行は定期的な運行にものすごく影響する」として、2023年は約1万3000人が利用したシャトルバスの運行中止はやむを得ないとの認識を示した。
また、大会本部によれば同様の問題は他の花火大会でも起きており、2025年以降もシャトルバスを復活させられるかは不透明な情勢のようだ。
大会本部・原田正男 会長は「(今年の)状況を見て来年に生かしたいが、やっぱり規制強化が来ているのでなんとも言い難い」と話す。
対策として駐輪場が用意されても利用者は…

JR静岡駅から会場までは徒歩だと約40分。
シャトルバスが運行しないため、多くの人が自転車で来場できるよう2024年は近隣の小学校が駐輪場として開放されることになっている。

ただ、市民からは「働き方改革で流れ的には仕方ないが、県外から来たかった人が行けなくなるのは悲しい」「時代で仕方がないのかも。でも高齢で自分で動けない人は困る」「みんな浴衣も着たいし、自転車だと大変」といった声が聞かれた。
ピンチをチャンスに変えられるか?

一方、大会本部は徒歩であっても道中を少しでも楽しめるようオススメの飲食店や電車の時刻表と共に推奨ルートを記した地図を作成した。
静岡市葵区にある「洋食食堂たくみ」は、花火会場に通じる大通りからは少し入った場所にある飲食店だが、当日は店舗前の人出に期待し、人気メニューを盛り合わせたオードブルやビールをはじめとする冷たい飲み物を販売する予定でいる。

佐藤拓美 店長は「当日どこに行っても混んでいたり、買えないことが多いと思うので、そういうところでおいしいものを提供できたらいい。この辺の活性化になれば」と期待を寄せる。

これまでとは違った形での開催となる安倍川花火大会。
来場者にとっては不便さを感じる部分もあるだろうが、周辺の商店などにとっては魅力を発見してもらうチャンスとなるかもしれない。
(テレビ静岡)