能登地区の市長や町長に、現在の課題や復興に向けた道筋などを聞くシリーズ企画。4回目は穴水町の吉村光輝(よしむらこうき)町長に聞く。

【穴水町の現状】
震度6強を観測した穴水町ではこれまでに災害関連死6人を含む26人の死亡が確認されている。住宅への被害は4000棟あまりに及び、公費解体は7月7日の時点で申請があった2083件のうち、完了したのが209件と1割ほどに留まっている。復旧まで半年以上かかる見込みの事業者が対象に仮設商店街の建設が進んでいて、10月の営業開始を目指している。地震で人口減少にも拍車がかかっていて今年1月から5月までに穴水町から転出した人は282人と去年の同じ時期に比べおよそ2.5倍となっている。

目下の課題は仮設住宅入居者の健康管理

Q地震発生から半年あまりが経った。今、穴水町の課題は何か?

吉村町長:
穴水町では仮設住宅への入居が順調に進んでいる。これから本格的に暑いシーズンになってくる。特に一人暮らしの高齢者など仮設入居者への健康管理、見守り等が課題だと考えている。仮設入居者の方の再建意向調査も進めている。再建は高齢者が多いので厳しい方が多いと思うが、7月1日付で災害公営住宅建設室を町内に設けた。これから建設場所の確保、数の確保など本格的な課題に取り組んでいきたい。

仮設商店街「穴水スマイルマルシェ」で唯一の商店街を守る

Q町では仮設商店街の建設が進められているが、町の経済を立て直す上でどういった位置づけと考えている?

吉村町長:
先日名称が「穴水スマイルマルシェ」に決定した。仮設商店街は各再建事業者のつなぎ、収入の確保、商店街の賑わいの確保という思いでやっている。今後入居が進むことで穴水町唯一の商店街を守っていきたい。町の活性化につなげていきたいと考えており、実は再建後も仮設を撤去する前提ではなくずっと使えるものなので、地域経済の振興にも何かしら寄与できると考えている。

建設中の仮設商店街
建設中の仮設商店街
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Qそのほかの町の経済立て直しについては?

吉村町長:
穴水町の事業の根幹はやはり一次産業で成り立っているといっても過言ではない。こういう方のサポート、高齢化の著しい一次産業の担い手の確保も積極的にきめの細かい対応をしていきたい。

Q町では民間企業にも力を借りながら「復興計画」の策定を進めているが、今後の街づくりについて町長の考えは?

吉村町長:
穴水町は被災した市町の中で一番人口規模の小さい町。そういった意味でも今回の地震の被害は甚大な影響を及ぼしている。阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震で復興計画に携わった民間企業にお力添えを頂いて、知見を活かしてこれからのまちづくりを考えていきたい、復興計画を考えていくうえでよき伴走者としてかかわっていただいているところ。
「みんなで作ろう穴水」をスローガンにきめ細かい小さい町ならではの町民の意見の聴取、また今後20年30年先を見据えたまちづくりをできる計画にしていきたいと考えている。

復興計画策定委員会
復興計画策定委員会

Q町では地震前から移住促進や子育て環境の充実を図ってきたが、地震で減少した人口を増やすための取り組みについては?

吉村町長:
人口減少、前年と比べても3倍近い数が流出されている。人口減少は特効薬はないがあらゆる複合的な要因を復興計画の中で議論して、特に若者世代、子育て世代の負担軽減を図る、住まいを確保する、なりわいを再建させる。あらゆる角度からのアプローチで復興計画の中で議論していき、移住促進、交流人口の拡大を図っていきたいと考えている。

Q今回の地震について初動対応の検証はいつごろを目途に行う?

吉村町長:
復興計画の一つの柱として災害に強い街づくりを目指すプロジェクトがある。その中で今回の震災の対応への検証は重要なものとなっている。ポイントはいくつかあるが、1つは孤立化。道路の寸断、ネットワークの寸断による孤立、もう1つは情報の伝達、震災非常時にいかに適切に被災者に情報を伝えるかが課題。もう1つは弱者への対応が大きな課題だと考えている。被災された方、通常時もサポートが必要な方がさらに苦境に追い込まれることが災害の特徴だと思うのでこういった視点を大事にしながら今後の防災を考えていきたい。