石川テレビ稲垣アナウンサーが、能登の復興に向けて前を向く人たちに話を聞く「能登人を訪ねて」。今回訪ねたのは、地震で大きな被害を受けた地域の支援を続ける輪島市で1300年余りの歴史を持つ神社の禰宜、能門亜由子さんだ。
地震から約1年半…今も残る地震の爪痕
輪島市河井町の重蔵神社。2007年の能登半島地震で倒壊し、2020年に再建されたこの大鳥居は
2024年の地震で再び被害を受けて生々しい傷跡がそのままになっていた。こうした中でも重蔵神社は地域の支援拠点となり、去年の夏は祭りを成功させた。現状と今年の祭りについて聞いた。

重蔵神社の能門亜由子さん:
倒壊は免れましたけども、拝殿も全壊判定でいま全く使えない状況。再建の計画も全く立っていない状況です。

輪島市の中心部に鎮座し、1300年以上の歴史を持つ重蔵神社の能門家21代目として生まれた
亜由子さんは16歳から神職に就き、現在は病気療養中の父に代わって神社の仕事一般を執り行っている。
拝殿には、倒壊を防ぐため専門ボランティアによる補強が施されてはいるが、次に大きな地震が起こればいつ何が起こってもおかしくない状況。

さらに、本殿横の仮設倉庫には輪島塗で出来ている曳山の山車。重蔵神社の春祭りに山車を
出して街中をお祓いするというものだ。

毎年4月始めに行われる重蔵神社の春祭り。桜の飾りを付けた総輪島塗、高さ5mの曳山が輪島の街を練り、春の訪れを祝っていた。

しかし、地震によって曳山をしまっていた倉庫が倒壊。
重蔵神社の能門さん:
半年以上外に置いてあったので、日が当たったところはやっぱり劣化してしまっていて。直すためには、山車を入れる倉庫を再建して、その中に入れて職人さんが作業えきるようにしないと。その倉庫を立てる計画もまだ立っていない状況なので、お祭りにはこの山車を出すことができない状況です。

こうした中、能門さんは地震発生直後から地元の料理人たちと協力し、神社の境内などで炊き出しを行ってきた。

さらに、県内・県外のボランティア団体と連携して様々な試みを続けてきた。その団体の一つが
「コミサポひろしま」。去年1月初めから重蔵神社の境内に拠点を設け、専門ボランティアとして
道路の啓開や屋根の修繕など地域の復旧・復興に尽力してきた。

コミサポの小玉幸浩代表:
「駐車場どこかないですか?」と聞いたら「それならウチを使ってください」と。最初は車が3台ぐらいと言っていたのが、もう半分以上借りて。『コミサポ村』みたいになってたんですよ。すごく助かりましたし、本当に感謝しています。

コミサポひろしまは、1年半の任期を終え、6月末で輪島を離れた。支援団体が少しずつ能登を離れていく中、能門さんはこれまでに学んだノウハウを生かし、新たなボランティアセンター『輪島支援共同センター』を立ち上げた。

重蔵神社の能門さん:
私も含めて、生活再建とか生業再建がまだ災害の復旧段階なので、そういった皆さんのニーズに
社協さんと一緒に対応できたらと。出来ることは少ないんですけど、少しずつ復旧を終えて復興に向けて行きたいなと思っています。
神社の再建が進まない中でも地元住民のために尽くす。そこにはこんな思いがあった。
重蔵神社の能門さん:
お祭りというのは、神社だけではできない。毎年地域の方に協力して頂かないと、お祭りが出来ない。地域の方が困っている時には何かできればと…。

去年8月に行われた輪島大祭。例年は輪島市内4つの神社が4日間に渡ってキリコ祭りを行うが、去年は地震の影響で重蔵神社のみが規模を縮小してキリコの巡行を行った。

しかし、人々の顔には笑顔。能登の人々にとって「まつり」は欠かせないもので、それは地域の人々と共に作り上げるものだ。神主の家系に生まれた能門さんはそのことを誰よりも分かっていた。

重蔵神社の能門さん:
昨年の震災の直後は全くお祭りはできないと思っていたんですけど、地域の方たちからお祭りをすることで、震災前に繋がっていた街の方々と交流ができることと、新たに外部の方たちと交流ができるというのでやってほしいと。色んな方に協力して頂いて、お祭りが出来たのが本当に奇跡ですね。
稲垣アナウンサー:
復興2年目のお祭りという事になるんですが…。
重蔵神社の能門さん:
お祭りを継続するということで私たちとしては輪島の文化を後世に伝えるというのが重要になってくるので…。そういったものを通して地域の方と交流してなるべく早く復興に向えるように皆さんと力を合わせていきたいと思っています。

重蔵神社の能門さん:
輪島市内の各神社も被災している中でお祭りをするのは本当に大変なこと。重蔵神社以外の氏子さんが参加をすることも私たちの方は受け入れようと。出来るだけ多くの方と一緒に、多くの方たちがお祭りを通して復旧から復興への前向きな力になればいいなと思っています。

稲垣アナウンサー:
復興2年目の輪島大祭、私自身も楽しみにしています。これからも宜しくお願いします。

(石川テレビ)