2024年4月以降、鹿児島県警では現職警察官をはじめとした警察関係者の逮捕が相次ぎ、4月と5月、わずか2カ月で4人が逮捕される異常事態となっている。県民から厳しい声があがるとともに、専門家も「リーダー層が十分な認識を持っていない」と指摘している。

「市民を守る側の警察が傷つけるのは…」厳しい声

これまで逮捕された鹿児島県警関係者は4人。うち3人は現職警察官で、捜査資料を第三者に流出させた地方公務員法違反の疑い、知人女性の体を触るなどした不同意わいせつの疑い、建造物侵入と盗撮の疑いで逮捕された。

国家公務員法違反の疑いで逮捕された、前生活安全部長の本田尚志容疑者(60)
国家公務員法違反の疑いで逮捕された、前生活安全部長の本田尚志容疑者(60)
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そして5月31日、国家公務員法違反の疑いで逮捕されたのは、2024年3月まで県警の中枢を担う生活安全部長を勤めていた元警察官・本田尚志容疑者(60)。在任中に手に入れた警察情報が書かれた資料を、退職後、第三者に郵送して情報を漏らした疑いが持たれている。

本田容疑者の逮捕を受けて開かれた会見で、鹿児島県警の西畑知明警務部長は「前生活安全部長が逮捕されたことは極めて遺憾であり、関係者はもとより、県民の皆さまに改めて深くおわび申し上げます」との野川明輝県警本部長のコメントを読み上げた。

県民の安心安全を守る立場にあるはずの警察関係者が相次いで逮捕される異常事態。
県民は「警察官がこういうことをするとどうにもできない。住民のため、市民のためにいいことをしてもらわないと(97歳男性)」「不同意わいせつとか、まず人間としてだめだし、それを守るのが警察官。市民を守る側の警察が逆に市民を傷つけるのはよくない(15歳男性)」など、一様に厳しい声をあげていた。

事態の要因の1つは「コロナ」?

鹿児島県警はこの異常事態の原因をどのように捉えているのか。
本田容疑者の逮捕前日、5月30日の鹿児島県議会で、県警の野川明輝本部長は「コロナ禍などにおける社会情勢の変化を受けて、職員間のコミュニケーションがおろそかになっていることをやむなしとして、人間関係が希薄になったことなどにより、これまで講じてきた対策が浸透しきれず、また、被疑事案の兆しを組織として把握できていなかったことが問題であると考えている」と答弁していた。

県議会で答弁した野川明輝本部長
県議会で答弁した野川明輝本部長

新型コロナウイルスを要因の1つとしてあげた野川本部長。しかし、質問をした角野毅県議は「ただいまの県警本部長の答弁で納得できた県民は本当に少ないと考える」と、納得できない様子を見せた。

今回の事態を専門家はどう捉えているのか。警察行政法が専門で、警察大学校の校長や福岡県警本部長などを歴任した京都産業大学・田村正博教授に聞いた。

警察行政法が専門 京都産業大学・田村正博教授
警察行政法が専門 京都産業大学・田村正博教授

京都産業大学・田村正博教授:
たいへん珍しいことだし、県警として重大に受け止めなければいけない。県警察のリーダー層の方たちが十分な認識を持っていないとなったわけだから、県警全体で取り組まないといけないことがより一層重くなったと思う

田村教授はさらに、情報漏えい事案については「機微に属するような情報を、そもそも保有していること自体が特別なんだと。日頃扱っているとそういう情報を扱うことに慣れてしまう。だからこそ起きてしまう事案のような気がする」と、警察業務特有の状況が影響した可能性に言及した。その上で、時代に合わせた組織の運営が必要なタイミングにあると指摘した。

京都産業大学田村正博教授:
性暴力や情報漏えいを防ぐことは、時代に応じて求められていることのまさに典型だと思う。その2つの面において県警がこれまでと違うレベルのものになければいけない。それを目指すという、前向きなイメージをもって組織運営に当たってほしい。それが県民の方々の信頼を回復することにもなる

1つの組織からわずか2カ月の間に4人の逮捕者、しかもそれが県民の安心・安全を守る立場の県警から出ているということは到底理解し難い。県民からの信頼をどうやって回復するのか、県警に厳しい視線が注がれている。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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