国会は、6月23日の会期末に向けて、裏金問題を受けた政治資金規正法の改正をめぐる与野党審議が本格化し、今国会の最大の焦点となっている。

FNN世論調査では、有権者がいま求める政策課題について質問を行ったところ、国会の動きとは違い、物価高対策、賃上げ、年金・医療問題など、今と将来の生活不安への政策対処を求めていることが明らかになった。

政治資金規正法の改正めぐる審議が本格化している
政治資金規正法の改正めぐる審議が本格化している
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9つの政策課題から2つまで選択・回答する方式で聞いたところ、「賃上げ・雇用・景気」36.9%、「物価高対策」36.6%、「年金・医療」35.8%となり、次いで「子ども・子育て支援」が29.0%、「政治資金規正法改正などの政治改革」を求める声は17.2%まで下がり、「外交・安全保障」10.9%、「行革・財政再建」10.6%、「環境・エネルギー政策」7.1%、「憲法改正」6.7%となった。

【首相に取り組んで欲しい政策】
(2つまで選択)
賃上げ・雇用・景気  36.9%
物価高対策      36.6%
年金・医療      35.8%
子ども・子育て支援  29.0%
政治資金規正法改正  17.2%
外交・安全保障    10.9%
行革・財政再建    10.6%
環境・エネルギー政策  7.1%
憲法改正        6.7%

有権者が望む政策対応の上位の「物価高対策」、「賃上げ・雇用・景気対策」は有権者全体で見るとともに3割台と、高い関心で拮抗しているが、世代別に見ると、全く違う実情が見えてくる。

60代以上は物価高対策を求めている
60代以上は物価高対策を求めている

給与勤労者の割合が高い50代以下の世代では、圧倒的に「賃上げ」を望む意見が強く、60代以上では圧倒的に「物価高対策」を望む声が多いことが明らかになった。
これから将来働いていく20代以下では「賃上げ」を求める声が唯一5割超となり、一方で年金生活者の割合が高い、60代、70代以上では「物価高対策」を求める声が4割を超えた。

電気ガスの補助金打ち切りで家計負担がさらに増す…
電気ガスの補助金打ち切りで家計負担がさらに増す…

岸田政権で実施されている「年収の壁対策」「所得税の定額減税」は、パート・アルバイト、正規労働などで働く人の手取り収入を減らさない「賃上げ」対策となるが、「ガソリン補助金」「電気ガス補助金(5月で終了予定)」は、「物価高対策」となり、表裏一体でもある政策だが、限られた予算を、誰にどのように活用していくのか、有権者の実情に合った細やかな対応が求められると言える。

【首相に取り組んで欲しい政策
    物価高対策 賃上げ・雇用・景気
20代以下 35.8%    51.3%
30代   35.6%    45.3%
40代   36.6%    42.0%
50代   24.4%    47.4%
60代   42.5%    26.6%
70代以上 41.9%    21.8%

岸田首相がかかげる「物価高を上回る賃上げ」には9割が「実現」困難視

こうした中、物価の上昇が止まらない。賃金から物価の上昇分を差し引いた実質賃金が、過去最長となる24カ月連続でマイナスとなった。

岸田政権は所得増・物価高対策の“切り札”として6月から、所得税・住民税を併せて1人当たり4万円の定額減税を実施する。

FNN世論調査では、定額減税への政策的評価を聞いたところ「大いに評価」6.7%、「ある程度評価」34.3%、「あまり評価しない」35.1%、「全く評価しない」21.3%となった。総じて「評価」が4割、「評価しない」が5割半ば、という答えとなった。

これを年代別に見てみると、「20代以下」では総じて「評価する」との答えが、62.3%、総じて「評価しない」が32.2%と、世代ごとでは最も高い評価となった。以下、年代が上がるにつれて評価は下がっていき、「30代」では「評価する」51.7%、「評価しない」48.3%、「40代」では「評価する」40.9%、「評価しない」57.2%、「50代」では「評価する」30.1%、「評価しない」68.3%、「60代」では「評価する」31.0%、「評価しない」67.0%、「70代以上」では「評価する」37.5%、「評価しない」58.6%となった。

6月にはついに定額減税が
6月にはついに定額減税が

定額減税をめぐっては、1回限りの政策なので、今後も予想される物価高対策としては、継続的効果が無いと感じる意見が聞かれる一方、1人当たり4万円減税のため、多人数世帯では、恩恵を感じる声など、様々な受け止めが聞かれた。こうした中、低年齢世代は概ね評価する傾向が見られる理由は、日本の給与体系に年功序列、そもそも就業年数が短い世代は、所得が少ない傾向の中、4万円のウェイトが大きい一方、所得が比較的高い世代では“ワンショット”の対策では物足りない、という受け止めが反映した結果と考えられる。

【所得税など4万円の定額減税 世代別】
     評価する 評価しない
20代以下 62.3%  32.2%
30代   51.7%  48.3%
40代   40.9%  57.2%
50代   30.1%  68.3%
60代   31.0%  67.0%
70代以上 37.5%  58.6%

岸田首相が掲げる「物価上昇を上回る所得向上」は「実現しない」9割超

この定額減税は、岸田首相が掲げる「年内に物価高を上回る、所得の上昇の実現」に向けた“切り札”だが、岸田政権の掲げる大きな目標ともいえる「物価上昇を上回る所得向上」の実現には懐疑的を超えて、否定的な結果が出た。「実現すると思う」は4.8%、「実現しないと思う」92.2%となった。

年代別に見ても、「実現しない」との見方が全世代で圧倒するが、世代別に見ると、温度差が見えてくる。高度経済成長期やバブル経済までを知る60代以上ではやや「実現する」との見方が多くなった。また、20代以下でも「実現する」との見方は9%台と比較的高くなったが、これは給与生活が始まった人が多い世代で、去年、今年の春闘で、高い賃上げ回答が出たことで、比較的今後に希望的観測を持つことができているのかもしれない。

賃上げへの期待感は低い…
賃上げへの期待感は低い…

一方で、30代以上~50代まで、長いデフレのトンネルを経験してきて、賃上げが“ない”実体験をしてきた世代では、特に「物価高を上回る賃上げ」を目指すとする岸田首相のかけ声が届いていない結果となった

【物価上昇を上回る賃上げ 世代別】
     実現する 実現しない
20代以下 9.4%   86.6%
30代   2.3%   96.2%
40代   2.1%   95.1%   
50代   2.1%   96.9%
60代   7.6%   89.8% 
70代以上 5.7%   89.9%

西垣壮一郎
西垣壮一郎

フジテレビ報道局 政治部デスク 世論調査担当
2000年から政治部担当で報道記者・報道番組プロデューサーを歴任。
政治部官邸キャップ、自民党キャップ、野党キャップなどを担当。
ワシントン支局特派員(ブッシュ政権~オバマ政権)「BSフジLIVEプライムニュース」総合演出、「日曜報道 THE PRIME」プロデューサーなどを経て現職。
趣味は釣り。