人生100年時代ともいわれる今、老後に必要とされる資金、いわゆる「老後2000万円問題」は物価高や円安の影響もあり、4000万円まで膨らむとの試算も出ている。物価の上昇が止まらない中、働くシニアや現役世代の備えなど取材した。

やりがいを持って働くシニアたち

「私は74」「78歳です」「71になります」「現在83歳、誕生日で84歳になります」と笑顔で語る現役で活躍するシニア警備員。福岡・直方市の三群警備保障は、約50人の社員のうち半分以上が65歳以上の高齢者だ。

83歳の山田功さんは社内でも最高齢の現役警備員で、週末などを中心に市内のショッピングモールで車の誘導などの仕事にあたっている。

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三群警備保障・山田功さん(83):
サラリーマンを40年やりまして、60で定年退職。あとの10年、70まではOBですね、嘱託で。そして70からちょうどきょうまでが13年、三群警備保障さんでお世話になっておりますね。1日も休んでないんですよ

三群警備保障・山室康文さん(74):
山田さんは「化け物的存在」で、人生の、人間としてのやっぱりそういう目標を持って仕事をしたいと思っています

この警備会社は自衛隊員だった先代社長が「定年の早い自衛隊員が引退後も働ける場所を」と立ち上げた警備会社。今では元自衛隊員に限らず、様々な人たちが働いている。

三群警備保障・橋本徹さん(78):
「70何歳です」と言うと「うちではちょっと年齢が高すぎて」と全部言われて来たんですよね。先代の社長に「よし、出てこい」と言ってもらえたので非常に感謝しています

三群警備保障山田功さん(83):
我々、みんな年金生活者ですからね。健康で与えられた仕事ができるということが一番幸せだと思いますね

人生100年時代ともいわれる今、やりがいを持って働く元気なシニアたち。ただ、こうした中で、老後に必要とされる資金、いわゆる「老後2000万円問題」は物価高や円安の影響もあり、4000万円まで膨らむとの試算も出ている。物価の上昇が止まらない中、将来への不安も膨らみ続けている。

高齢者の現在の生活や働きたい理由

人口の4割近くを高齢者が占める福岡・大牟田市。駅前で高齢者に現在の生活について尋ねると、厳しい現状が聞かれた。

主婦(79):
介護保険料が福岡県でも6000円を超えてだんだん高くなるし、年金は低くなるし、収入は年金だけじゃないですか、それはちょっと心配

元建設業(84):
年金は月20万円くらいかな。生活は苦しい。いままでためとった貯金をね、食いつぶし、年金だけで

主婦(77):
うちは主人(77)が、まだ仕事を細々とですけど、続けてますので、その収入があるからなんとかやれてる。国民年金は少ないから、やっぱり仕事を続けているのは、そういうところもあるんですよ

高齢者が集まる大牟田市のシルバー人材センターは、除草作業や清掃、施設の管理など月に10日程度の仕事を会員に紹介している。定年退職の年齢が引き上げられたこともあり、平均年齢は74歳。80代で活躍している人も多く、入会に関する説明会は仕事を求める高齢者で満席だった。

大牟田市シルバー人材センター・石江渉業務課長:
だいたい毎回、定員10名来ていただいている。自分が社会に貢献して、その分、対価を配分金としていただいて、ちょっとした旅行に出かけたりとか、お孫さんにちょっとお小遣いをあげたりとか、そういうところにやっぱり「生きがいを感じているんだな」と非常に感じます

説明会の参加者に働きたい理由を尋ねると…。

女性(71):
3月まで仕事してたんですけど、1カ月程ゆっくりして、「さぁ次、何かしようかな」という感じで前向きに。一応、お掃除を希望していたら、育児とかそういうのも(説明書の)下の方の欄に選択肢が書いてあったから、できるかなと思って

男性(75):
ブラブラしとったけんね、いままでずっと。母ちゃんからずっと怒られよったし。やっぱり年金だけじゃ暮らせんです。少しでも家に(金を)入れるよって気持ちを持っとかんと追い出されるんやなかかと

現役世代は老後に備え「資産運用」

老後に必要な費用を巡っては、金融庁が年金以外に貯蓄で2000万円必要だと試算した、いわゆる「老後2000万円問題」が話題となったのが2019年。しかし、このまま物価上昇が続けば、この金額が「4000万円」に倍増する可能性があると専門家は指摘している。

ファイナンシャルプランナー・山崎俊輔さん:
3.5%の物価上昇、値上げが20年間続くとなると老後に必要なお金も倍増するくらいのつもりで考えないといけない。アメリカやドイツは20年で物価が倍になったので、2000万円というのが4000万円を目標にしていかなきゃいけない

例えば、1000円のTシャツが毎年3.5%ずつ値上がりした場合、20年後の価格は倍の2000円になる。老後のために2000万円ためていたとしても物価が倍になった分、実際には4000万円分の準備が必要になるというのだ。

街で現役世代に老後についての考えを聞くと…。

不動産会社勤務・男性(32):
物価は上がる一方で、でも給料は増えないという中で、なかなか見えないですね。具体的にどうしないといけないとか。資産運用などを活用したりとか、あとは積み立ての保険やったりとか

金融業勤務・男性(29):
子どもの教育費もありますし、それと別にためないといけないのはちょっと大変かなと。いろいろ費用がかかってくる中で、プラス4000万なんで、厳しい人が多いんじゃないかな

飲食 サービス業勤務・女性(40):
外資で積み立てとかしてた時期もあるんですけど、生命保険をかけて。一生懸命、ためて今を切り詰めると物価上昇で、日々の暮らしの方がすごくきつくなって、心の健康とかその方が個人的には大事かなと

4000万円という数字はあくまで「3.5%の物価上昇が続いた場合」の試算だが、さらなる物価高騰もあり得るという見方もある。こうしたことから専門家は現役世代に対し、長期的な視点で資産を運用するなどの考えを持つ必要があるとしている。

ファイナンシャルプランナー・山崎俊輔さん:
株価っていうのは短期的には上がったり下がったりはしますけれども、長い目で見れば右肩上がりの方向に収束していく。平均的な投資のリターンは物価上昇率と同等、あるいはそれを上回る利回りが期待できる。若い方は活用していただくことによって4000万円が無理なものではない。現実的にすることができるんじゃないかなと思いますね

2025年には団塊の世代が、全員75歳以上の後期高齢者となり、税金や社会保障費が上がることが見込まれている。少子高齢化が進み、「年金制度」が模索の時代を迎える中、改めて自分自身の「老後」と向き合う必要がありそうだ。

(テレビ西日本)

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