長野県松本市で起きた犬虐待事件の判決。動物愛護法違反の罪に問われた元販売業者代表の男に懲役1年、執行猶予3年などの判決が言い渡された。殺傷の罪を告発した動物愛護団体の杉本彩さんは「軽い量刑で納得いかない」と話し、判決に不満と悔しさをにじませた。また、事件の背景にはペットショップによる展示販売があると指摘し、「さらなる厳罰化、規制が必要」を訴えた。
犬を無麻酔で帝王切開 452匹虐待
2021年、松本市のペット販売業者に家宅捜索が入った。犬を虐待していた疑い。
その後、業者の元代表・百瀬耕二被告63歳が動物愛護法違反の殺傷と虐待の罪で起訴された。
起訴状などによると、百瀬被告は獣医師の免許がないのに犬5匹を麻酔せずに帝王切開を行い、みだりに傷つけたほか、452匹を劣悪な環境で飼育して虐待したとされている。
裁判で、被告側は虐待については認めていたが、帝王切開による「殺傷の罪」については「鎮痛剤を使っておりみだりに傷つけていない」などと無罪を主張。
一方、検察側は「大規模な動物虐待事案」として、懲役1年、罰金10万円を求刑していた。
裁判長「猟奇的な殺傷事案とは違う」
5月10日、長野地裁松本支部で開かれた判決公判。 永井健一裁判長は虐待については「劣悪な環境の中で病気になった犬を素人判断で薬を投与するだけで、獣医師に診せることはなかった。極めて悪質なネグレクトである」とした。
一方、殺傷罪については「子犬を摘出するための帝王切開手術であり、手段は正当性を欠くが、猟奇的な殺傷事案とは違う」とした。 その上で、ブリーダーを廃業していることなどを考慮し、懲役1年、罰金10万円、執行猶予3年の判決を言い渡した。
涙流し…杉本彩さん「納得いかない」
殺傷の罪を告発した動物愛護団体の杉本彩さんは、5月10日、会見を開き、涙ながらに「軽い量刑で納得いかない」と話し、判決に不満と悔しさをにじませた。
その後、「NBSみんなの信州」に出演し、事件の背景にはペットショップによる展示販売があると指摘、「更なる厳罰化、事業者に対する規制が必要」と訴えた。
「事業者は命を扱う責任と重みを」
ーー今回の事件は氷山の一角との指摘も
動物環境・福祉協会Eva 理事長・杉本彩さん：
ペットを販売する側は命を扱うということの責任と重みをもっと感じてほしいと思います。そして自分たちが生み出した命には最後まで責任を持つというぐらいの、そういったモラルが本当に必要だと思う。ただ、こういった判決、軽い判決になってしまって、事業者が本当に心を入れ替えて今後モラルあるビジネスを生み出すことが必要だと思う。
「事件の背景にペットの展示販売」
ーー消費者側にも課題があると思うが
動物環境・福祉協会Eva 理事長・杉本彩さん：
こういった事件の本当の背景、問題の根源にあるのがペットショップの生体展示販売だと思う。子犬、子猫をショーケースの中に入れ、大量に販売しているということです。生産して大量流通して本当にまるで命のないものと同じように商品として扱っている、こういったビジネスの形態に非常に問題があるわけですよね。ペットショップに並んでいる子猫と子犬の後ろにどれだけの被害が、どれだけの犠牲があるのかっていうことを消費者としてぜひ考えていただきたい。モラルある消費行動をしていただきたい。
こういったビジネスを継続させるのはやはり消費者のニーズがあるということですよね。犬猫、ペットを迎える時っていうのは、ペットショップではなくて違う選択肢をぜひ考えていただきたいと強く望んでいます。
「さらなる厳罰化、規制が必要」
ーーこのような事件を二度と起こしてはいけないと思う。今後、杉本さんたちはどのような活動を
動物環境・福祉協会Eva 理事長・杉本彩さん：
司法の中でもっと動物虐待に対する理解が進まなければいけない。本当に何が一番実効的なのか、これからまたゆっくり考えたいとは思うが、今思うのはさらなる厳罰化がもしかしたら必要なんじゃないか、まずはっきり言えることは業者に対するやはり規制です。こういったものをもっともっと本当に強化する必要があると考えています。
（長野放送）
