食の雑誌「dancyu」の編集部長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。

植野さんが紹介するのは「トンテキ」。

蒲田にある「食堂サビーズ」を訪れ、一般的なトンテキとは一線を画す仕上がりの見ごたえ、食べ応え満点な“進化型トンテキ”を紹介する。

飲み屋街のイメージ残る蒲田で貴重な洋食店

「食堂サビーズ」があるのは、大田区の京急蒲田駅から約2分の場所。

植野さんは「蒲田と言えば飲みのイメージしかないです。今は再開発で街もきれいになりましたけど、この辺のアーケード街は全部飲み屋街でした。路地に入ると昔ながらの店が残っています」と蒲田の印象を語る。

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中華料理店の多い蒲田で貴重な洋食を提供する「食堂サビーズ」。

カウンター席と奥のテーブル席は、おいしい洋食目当てのお客さんでいつも大賑わいだ。

ボリューム満点な洋食がリーズナブルに食べられる“町洋食”

厨房を取り仕切るのが、料理長の川井茂さん。

熟練の手さばきで調理するのは、鶏肉の代わりに豚肉を使ったユーリントンに厚切りのカツがこれでもかと、ドンと乗ったカツカレー。

ふわふわのたまごに包まれたクラシカルなオムライスなどボリュームたっぷり、懐かしの洋食で空腹をもてなしてくれる。

昼から夜の11時まで通しで営業し、いつでも出来立ての洋食が食べられる、町中華ならぬ町洋食だ。

「いつか一緒に店をやろう」と約束した仲間と作った理想の店

コックだった叔父さんにあこがれ、高校卒業後、百貨店の社員食堂で働きはじめた川合さん。

川合さんは「大好きな洋食を学んで早く一人前になるぞ!」と決意する。

しかし最初に配属されたのは洋食ではなく中華部門だった。

川合さんは「これはチャンスだと…。自分の仕事を早く終わらせれば、洋食と和食を手伝いながら、教えてもらえると思いました」とそんな状況にもめげなかった。

7年ほど百貨店で働いたあと、川合さんは中華のチェーン店を経営している会社に転職。

そこで食堂サビーズのオーナー・向井さんと出会った。

数年後、川合さんは「いつか一緒にやりたいね!」と話し、向井さんも「ああ!絶対に一緒に店をやろう!」と共に退職し別々の道を歩み出す。

その後、川合さんは「久しぶりに会って一緒にやろう」と向井さんに声をかけたという。

そして2022年、昔の仲間たちとオープンさせたのが「食堂サビーズ」だ。

川合さんは「町中華みたいな形で楽しんでもらえる洋食屋はすごく少ないと思う。毎日仕事終わりに1杯やりながら楽しめる町洋食みたいなものが少ないので、リーズナブルな価格帯で皆に楽しんでもらえるお店を作りたかった」と振り返った。

本日の目当てが、食堂サビーズの「トンテキ」。

一口食べた植野さんは「豚肉の食感と香ばしさ、脂のうまみがバランス良くまとまっている」と感動する。

使用する“豚肩肉”は、ロースなどに比べ肉質がやや硬めだが、脂身がほどよく入り、しっかりとした旨みが感じられる。家庭では豚ロースを使用してもいいそう。

食堂サビーズ「トンテキ」のレシピを紹介する。