2023年の陸上大会で110メートルハードルに挑み日本歴代5位のタイム。大学を卒業後は愛媛に戻り1人で研さんを積んだハードラーが、パリオリンピックへの切符が手に届くところにいる。「一瞬一生」を胸に、陸上人生の集大成として6月に日本代表の選考レースに挑む。

コーチをつけずに1人で競技に

トラック競技の中でもひときわ高い技術が求められる、110メートルハードル。

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2023年7月に福井県で開かれた大会で、愛媛の選手が会心の走りを見せ会場を沸かせた。八幡浜市出身のハードラー・野本周成選手だ。

刻まれた記録は13秒20。わずか100分の2秒という僅差で優勝は逃したものの、日本歴代5位となるタイム。パリ五輪の参加標準記録を突破するとともに日本代表の有力候補に躍り出た。
現在は県競技力向上対策本部に所属している。

野本選手は110メートルハードルについて、「高校から世界記録保持者まで同じ歩数でゴールしてるんですけど、その中でもタイムの差がすごい出てくるような競技。そこをどうやったら詰めていけるのか考えていくのがすごい魅力」と語った。

野本選手が110メートルハードルを始めたのは高校の時。3年生の時に県記録を更新すると、進学した早稲田大学では学生チャンピオンにも輝いた。しかし大学卒業後は地元・愛媛に戻り、コーチをつけずにたった1人で競技に打ち込んできた。

野本周成選手:
どうやったら減速せずにハードルを越えて着地してランにつなげて、強い踏切ができるかなとか、本当に色々考えることがたくさんある。自分と向き合える時間が多ければ多い分、練習の密度が濃いような気がして。

パリ五輪の参加標準記録突破は、1人で試行錯誤しながらコツコツと練習を積み重ね、自力でつかみ取った結果だった。

仲間の後押しが環境変えるきっかけ

そして五輪イヤーを迎えた2024年、野本選手は大きな決断を下した。きっかけは“けが”だった。

野本周成選手:
今の調子とか自分にストップをかけてくれる人とか、常に助言をくれる人の存在がやっぱり必要なのかなって思えて。もう早く決断しようと。12月にけがして1月にはもうこっちでやってたんで。

練習の拠点は広島へ。女子100メートルハードルの日本記録保持者・福部真子選手を指導する広島大学陸上部の尾﨑雄祐コーチのもとで新たなスタートを切った。

尾﨑コーチは「野本選手はとてもけがが多いので、けがしないための肉体改造、そして記録をしっかり安定させたり、出すための肉体改造という2つの面からトレーニングをしている」と話す。

1人で練習していると歯止めがきかずオーバーワークに。野本選手は何度もけがに苦しんできたという。その苦しみを間近で見ていたのが競技仲間の福部選手。福部選手の後押しが環境を変える大きなきっかけになった。

女子100メートルハードル日本記録保持者・福部真子選手:
日本記録も狙える選手だと思ったから私も声かけたし、一緒にパリに行けたらいっぱいおごってもらおうかな。

尾﨑コーチは野本選手の技術力の面でのストロングポイントについて、「速そうに見えないくらい、なめらかなハードリングをしたり、インターバルとハードリングのつながりがすごく滑らかにスムーズに見えること」と説明する。

国内トップ選手、そしてコーチも認める野本選手の高い潜在能力。頼もしい仲間と新たな環境で次の一歩を踏み出し、五輪に向けた戦いがいよいよ始まる。競技にかける姿勢は「一瞬一生」だ。

野本選手は「明らかに筋量が大きくなって、しかも速い動きに適応できるような体になってきていると思う」と自信をうかがわせた。

「日本人初12秒台出して優勝する」

勝負の大一番は6月27~30日に開かれる選考レースの日本選手権。これまでの陸上人生の集大成として持てる全てをかけて挑む。

野本周成選手:
(選考レースでは)日本人初12秒台出して優勝する。優勝してオリンピックに行くからやっぱり戦えると思っているので、まずは日本選手権優勝して代表権勝ち取って、そこからの目標はまた考えるんですけど、メダルに手が届いたらいいなと思ってます。

いざパリ五輪へ。進化を続けるハードラーは真っすぐに前を見つめている。

(テレビ愛媛)

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