鹿児島・日置市を拠点に活動するバレーボールチーム「フラーゴラッド鹿児島」が、V3リーグ初参戦、初優勝の快挙を達成した。地元に愛される理由は、強さだけでなく、地域密着を目標に活動する地道な努力にあった。
日置市に吹き荒れる”フラゴラ旋風”
2023-2024年シーズン、V3リーグに初参戦したフラ-ゴラッド鹿児島は地元での開幕戦に勝利。
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途中、連敗はあったがその後は順調に白星を重ね、18勝2敗の1位(11チーム中)でレギュラーシーズンを通過。上位3チームによるファイナルステージも制し、リーグ初参戦でV3リーグ王者に輝いた。
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「チームに入ったときは、Vリーグに入れるかというところからのスタートだったので、優勝できた瞬間はホッとしたし達成感がものすごくあった」と振り返るのは坂元健人キャプテン。鹿児島・大隅半島の垂水市出身だ。
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クラブのホームタウンは鹿児島市に隣接する人口4万6000人の日置市。地元の伊集院総合体育館で行われたホーム戦6試合の平均観客数はリーグ2位の899人。
老若男女が訪れ満員になることも。リーグ参戦1年目でチームが起こしたまさに”フラゴラ旋風”だった。
ふるさと納税の返礼品にレシーブ体験!?
鹿児島県内初のVリーグチームを目指し、チームが誕生したのは2021年。だが発足当時、活動の拠点となるホームタウンは決まっていなかった。前途多難な船出の中、クラブが訪れたのが日置市の永山市長だった。
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日置市・永山由高市長:
Vリーグに申請するためには、ホームタウンが必要で、地域の行政との連携が必要だが、いざ「ホームタウンになってください」というお願いをしても「まだVリーグに入る前のチームですから、苦戦している」という話を聞いたので。
「財政支援には限界があるけれども、日置市で良かったら一緒にやりませんか」という話をした。
この時、クラブの川畑俊輔GMには市長から「まず市民に知ってもらってください」と注文がつけられた。「だったらポスター持って、一軒一軒周るしかないですよね」と川畑GMは振り返る。
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クラブ関係者は、日置市内の飲食店や温泉などを訪ね、ポスターの掲示をお願いして回った。今では日置市の中心・伊集院の商店街のあちこちでフラーゴラッドのポスターを見かけるまでになった。
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「お店があるところには、ほとんどポスターが張ってありますし、気持ちがいいですよね。すごく誇りです」と話すのは、御菓子司すずき・浜田博子さん。体育館近くにあるラーメン専門・伊集院の山下弘美さんも「(選手は)大きいし、爽やかだし気さくな方が多い」と話す。
日置市がホームタウンに決まったあとも、小学校前でのあいさつ運動や、バレーボール教室の開催。
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さらに、ふるさと納税の返礼品としてレシーブ体験を企画するなど、クラブは地域に根ざした活動を地道に続けた。それに応えるように、地元企業や団体もクラブを支えるようになった。
選手と仕事の両立「やりがい感じる」
セッターの山本悠平選手は佐賀県出身。普段はクラブのサブタウン・南九州市の建設会社で書類の作成や測量に従事している。選手のほとんどは、応援してくれる企業で働きながらバレーと向き合っているのだ。
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「(バレーと仕事の両立は)難しいけど、本当にやりがいは感じているし、毎日がすごく濃い一日で充実している。(トスの組み立てと測量は)どっちも難しいですね(笑)」と語る山本選手。上司の松村和明さんも、「(選手と社業を)両立して一生懸命頑張っている姿を見ると僕たちも頑張らないといけないという気になった」と刺激を受けていた。
地元に支えられながら、初参戦のリーグ戦で快進撃を続けてきたフラ-ゴラッド。ファンも着実に増えた。その一人、日置市に住む中間貞子さんに話を聞いた。
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自身もママさんバレーを楽しむ中間さんだが最初は、娘さんが選手と同じ職場で働いているとの理由で試合を見に行った。すると「興奮しきって(笑)もう大好きです!」と、すっかりフラーゴラッドのとりこに。生で見る試合の迫力に心を奪われ、友人も誘うようになった。
友人の赤崎京子さんは「(中間)貞子さんが畑に入ってきて、バレーを見に行ったと教えてくれて。『私も見に行きたかったな、見たい』と言って。ずっと連れて行ってもらっています」と話す。
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中間さんのスマートフォンには選手と撮った写真が。「(選手は)孫(みたいな存在)ですけどね。フラゴラ、優勝おめでとう!!」と満面の笑みでメッセージを送った。
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試合前の会場を盛り上げる映像も日置市民が制作している。趣味で映像制作を20年ほど続けている会社員の高橋秀樹さん。
![高橋秀樹さん制作の映像](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/d/2/700mw/img_d2d86427c11d724d45daad2704c5ef0f94645.jpg)
フラ-ゴラッドをきっかけにバレーの面白さを知り、チームのために力になりたいと思ったという。「映像に出てくる選手たちの人間的な部分とか、超人的な部分をできるだけ伝えられるように作った。日置市ならではというか、すごくいい流れができていると感じる」と話す。
3年前に誕生した無名のクラブは、今、体育館が満員になるまでに成長した。
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フラーゴラッド鹿児島が目指す未来について、川畑GMは「健康運動教室とか、選手と一緒に体を動かすとか、そういった機会を作っていければと思う」とした上で、部活動の地域移行の流れなどをふまえ「より地域とスポーツ団体の連携が強まっていかないといけないと思うので、地方の課題に少しでも役に立てるような取り組みをしていきたい」と話した。
地域に愛されたいと願うクラブと、それを支える地域の人々。この両者がしっかりとタッグを組むことが、地域スポーツにとって一番重要な鍵だと言えそうだ。
バレーボールは2024-2025年シーズンから「SVリーグ」と「Vリーグ」に再編される。V3参入1年目でリーグを制したフラーゴラッドは、次のシーズン、新しい「Vリーグ」に参戦する。一層の飛躍に期待したい。
(鹿児島テレビ)