野球やソフトボールが盛んで、メジャーでも活躍した福留孝介さんなど6人のプロ野球選手を輩出している鹿児島・大崎町。この町には、選手の要望に応じてオリジナルのグラブ作りに励む「グラブ職人」がいる。
使う人に寄り添うオリジナルのグラブ
器用な手つきではさみを操って生地を裁断し、ミシンでパーツを縫い合わせ、鮮やかな手つきで作られていくグラブ。1人で黙々と作業をこなしているのは、上門健さん(38)だ。

「直接、使う人と話しながら作るので、使う人の理想に近づけると思う」と話す上門さん。
色や形、柔らかさなど、客の細かい注文に応じて1人でグラブを作り上げる。

一つ完成させるのに6時間程度かかり、価格は3万円から。2023年は、約250個のグラブを1人で作った。
上門さんは福岡県出身。奈良県のグラブ工場に5年間勤務した後、福岡での造園業に従事し、約2年前に大崎町にやってきた。

大崎町に来たきっかけについて、上門さんは「趣味の時間を使ってグラブを作っていたが、たまたま大崎町のお客さんがいて、その方が大崎町で(自分の)グラブを広げてくれた。独立は福岡か鹿児島か迷ったが、アフターフォローのことも考えて鹿児島でやろうと」と語る。
取材した日は、地元・鹿屋体育大学の選手が、補修したグラブを受け取りに来た。仕上がりを試すキャッチボールを笑顔で見つめる上門さんに、この仕事を通じて目指すことを聞いてみた。

グラブ職人・上門健さん:
会社を大きくしたいとか、そういう願望は正直ない。このグラブに助けられたという方が増えればいい。全国の舞台とか、大きい舞台で使ってくれたら。そういう子たちを見ていければと思う
選手たちからは“信頼”の声
毎週水曜日、上門さんは地元のソフトボールチームの練習に参加している。
この日、ノックを買って出た上門さん。まるで自分が作ったグラブがちゃんと活躍しているか確認しているかのようだ。

グラブを作ってもらった選手に使い心地を尋ねてみると、「最高ですね。(上門さんには)意見が言いやすい。要望に応えてくれる。そこが一番」、「初めてグラブを作りました。上門さんは、いないといけない存在」、「身近にグラブを作ってくれる人がいる。自分の好きなデザインのグラブで試合に出られるのはモチベーションが上がりとても助かる」と、上門さんを信頼する答えが次々に返ってきた。

上門さんも「困ったことがあったときに気軽に相談していただける立場になれれば。楽しいですよ。毎週水曜日は楽しみにしている」と笑顔を見せた。
決して前に出過ぎることなく、上門さんはきょうも、野球が大好きな人たちを陰でしっかりと支えている。
(鹿児島テレビ)