低支持率に苦しむ岸田政権の打開策はどこにあるのか。「BSフジLIVEプライムニュース」では岸田首相最側近の木原誠二氏を迎え、橋下徹氏を交えて、日米首脳会談の狙い、経済政策から政局に至るまでのテーマを掘り下げた。

“日米同盟=グローバルパートナー”の意味すること

竹俣紅キャスター:
今回の岸田総理の訪米は、安倍総理以来9年ぶりの国賓待遇。総理は「日米がグローバルパートナーであることを確認して世界に発信する」と述べた。

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木原誠二 自民党幹事長代理:
従来のアジアや日本の防衛のためだけの関係ではなく、世界の課題にともに対応していくパートナーとして、この言葉を使われたと思う。2015年の安倍総理訪米以降、世界の変化が3つほどあると感じる。当時以上に分断が進み、権威主義国家が増えて勢いを増していること。ウクライナや中東など現実に戦争が起こっていること。そして、南シナ海や東シナ海など、海が非常に不安定化していること。
日米同盟は重要だが、今回フィリピンが入って会談を行う日米比、また日米韓、日米豪印、日米英など、マルチの関係に広げていく。その意味でのアピールが重要。

反町理キャスター:
日本は応分の責任をしっかり果たし、新たな責任も負う覚悟と見ていいか。

木原誠二 自民党幹事長代理:
いいと思う。また、やはりアメリカには強くあってもらわなければ。引き続き世界にコミットしてもらい、日本はそれをしっかり支える。アメリカだけに任せないとしっかり訴えることが重要。

橋下徹 元大阪市長 弁護士:
日米同盟はこれまで有事を想定していなかったが、同盟を深化させ、組織として動くためのメカニズムを作る。これは重要なこと。

竹俣紅キャスター:
日米首脳会談のポイント。安全保障では、自衛隊と在日米軍の指揮系統のあり方を見直す方針で一致しており、防衛装備品の共同開発、生産体制強化を申し合わせるとみられる。

木原誠二 自民党幹事長代理:
岸田総理は反撃能力の保有、GDP比2%への防衛費の抜本的な増加などを決めてきた。自衛隊の統合作戦司令部も今後設置されるということだが、在日米軍との間の相互運用をしっかり確保しなければいけない。また防衛装備品の移転原則も変えたが、日米間で共同開発、生産、維持整備についての議論もなされるべき。

竹俣紅キャスター:
フィリピンのマルコス大統領を交えた日米比首脳会談も行われる。ポイントはサイバー攻撃に備える防衛網創設、南シナ海での合同パトロールなどの実施、次世代原発・半導体・重要鉱物での協力など。

木原誠二 自民党幹事長代理:
フィリピンにとっては南シナ海、日本にとっては東シナ海で、中国が一方的な現状変更を試みている。アメリカを加えた抑止力強化は非常に重要。

反町理キャスター:
一方で、日本の財界は中国のマーケットを失うことを恐れており、日本の経済にとってプラスなのかと心配する人もいる。

木原誠二 自民党幹事長代理:
最も重要なのは経済安全保障。今回はフィリピンとの間でニッケルが重要になると思うが、重要鉱物を特定の国に依存する状況は避けなければいけない。だが中国とケンカする必要ももちろんない。対話は常にオープンであるべきで、協力できるところは協力していく姿勢が重要。他方、中国には責任ある行動をとっていただくため、日米韓、日米比、日米豪といった大きな枠組みで言うべきことを言っていくこと。

岸田政権の定額減税は評価されるべきだが…

竹俣紅キャスター:
経済政策について岸田総理は「(デフレ脱却は)未だ道半ば。完全脱却する千載一遇のチャンス」と述べ、2つの約束として「今年(2024年)、物価上昇を上回る所得を必ず実現する。来年以降に、物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させる」と発言。

木原誠二 自民党幹事長代理:
今年については、春闘での賃上げと政府が実施をする定額減税を合わせ、物価上昇を上回る所得を実現するということだと思う。賃上げについて企業の皆さんにはかなりの努力をして頂いている。だが、輸入品を中心にコスト要因の物価上昇がある。官民連携で賃上げと減税を組み合わせ乗り越える。私は今、政府の立場にないがあえて申し上げれば、仮に来年も引き続き輸入物価が高く乗り越えられなければ、もう一度定額減税をすべき。

反町理キャスター:
岸田政権の物価に対する先読みでは、翌年の見通しまでちゃんと述べるようになっている。

橋下徹 元大阪市長 弁護士:
正確な物価の予測はできないが、結果として今の状況を見れば株価も賃金も上がっている。定額減税は物価上昇分を若干上回る減税になっている。ここはきちっと評価しなければ。

竹俣紅キャスター:
岸田政権は少子化対策の財源として、新たな支援金制度の創設を掲げる。医療保険料と合わせて徴収されるもので、こども家庭庁の試算では国民1人あたり平均して月450円の負担。

橋下徹 元大阪市長 弁護士:
少子化対策の予算として3.6兆円を打ち出したのは成果だと思う。残念なのは、これだけ大きなことをしているのに、説明の仕方がよくないから支持率が上がらない。改革で支出を下げる部分はやるが負担は当然生まれると正直に言えばいい。しかも医療保険と合わせるなら、国民1人あたりではなく、被保険者数で割って算出しなければいけない。なるべく低い額で見せようとするのは失敗するパターン。そもそも医療保険の仕組みを使わずに、真正面から財源は税とすればいいと思う。

木原誠二 自民党幹事長代理:
今の経済状況で、賃上げや投資促進をやろう、デフレから脱却しようというときに新たな税負担は厳しく、まずは歳出改革を徹底しようという中で出てきた案だと思う。ごまかそうとしたわけではないが、歳出改革について説明しきれていないことは反省すべき。ただ、歳出改革は継続してやるべきで、枠組みを変えるべきではない。

裏金問題への対応はなぜ国民に評価されないのか

竹俣紅キャスター:
先週自民党が政治資金収支報告書の不記載があった委員への処分を決め、安倍派の幹部の中でも差をつけたものになった。岸田総理と次期衆院選への不出馬を表明した二階氏は対象外。橋下さんはどう見るか。

橋下徹 元大阪市長 弁護士:
法律の世界では、法と論理と証拠で処分を下すが、政治家が下す処分には多分に政治的な配慮や思惑があるもの。政治的に決めた、すみませんと言えばいい。批判もあるだろうが、多くの国民はそりゃそうだと思うのでは。そしてルールを決めていき、政治とカネの問題について改めることをしっかりやればいい。

反町理キャスター:
木原さん、それぐらいの開き直った説明ができるか。

木原誠二 自民党幹事長代理:
私は処分権者でも党の執行部でもなく、処分内容について言うのは難しい。ただ、岸田総理主導での聞き取り調査、追加の調査、政倫審、その前に検察の捜査もあった中で、調査を積み重ね、外部の人も入る党紀委員会で判断した。プロセスをしっかり踏んで処分が出ており、政治責任の問題だから政治的ではあるが、いい加減なものではないと思う。

竹俣紅キャスター:
自民党政治刷新本部の制度改革を扱う作業部会の鈴木馨祐座長は、岸田総理から政治資金規正法改正の原案作成を加速するよう指示があったと明らかにした。「議員本人も含む厳罰化」「第三者による監査の徹底」「デジタル化による透明性向上」の3つを挙げたとのこと。

橋下徹 元大阪市長 弁護士:
重要だが、ここがポイントではない。政治家は集めたお金を、政治活動の自由だからと全くの非課税で使える。国民は納得しない。必要なお金は当然ちゃんと使えばいいのだが、国民が一番求めているのは細かな論理とかではなく、民間とルールを同じにするということだと思う。

木原誠二 自民党幹事長代理:
今までは政治活動の自由を阻害しないようにとして政治資金の話をしてきており、民間のルールに合わせるためには一大転換として大きな議論が必要だろうと思う。避けるべきではないが、まずは総理の挙げた3点を確実に。

反町理キャスター:
政治とカネの話に限らず、岸田総理の政治スタイルでは、派閥解消の表明や政倫審への出席など組織の決定が滞っているときに本人が前に出てくる。党内に不協和音が生まれ支持基盤が弱体化しているという見方もあるが。

木原誠二 自民党幹事長代理:
待っていてもハードルは消えない、自分で打ち破るという思いで決断をされてきたと思う。決断の後始末はあるがやむを得ない。前向きな後始末だと思う。

反町理キャスター:
総理は「私自身については政治改革に向けた取り組みの進捗ぶりなどを見てもらった上で、最終的には国民、党員に判断をもらう立場と考えている」と発言。衆議院の任期が2025年秋まで、自民党総裁選が2024年9月にある中、解散の時期はどうなるか。

木原誠二 自民党幹事長代理:
解散は総理の専権事項で、私どもが発言することはあってはならない。意見は控えたいが、いずれにせよ総理は今、デフレ脱却、経済再生、政治改革の特に政治資金規正法改正に集中していると思う。国民あるいは党員に問うことはまさに総理のご判断。どんなケースもあり得る。

反町理キャスター:
「大番頭」として木原さんはどう進んでほしいか。

木原誠二 自民党幹事長代理:
私個人としては、やはり目の前のやるべき仕事をしっかりやること。国民の皆さんの受け止めにしっかり耳を傾けることだと思う。

竹俣紅キャスター、反町理キャスター
竹俣紅キャスター、反町理キャスター

反町理キャスター:
ところで、上川外相の名前が時々挙がる。上川さんは総理の器か。

木原誠二 自民党幹事長代理:
器なんじゃないですか。

反町理キャスター:
でも宏池会から2人出るわけにいかない。岸田さんが出るなら上川さんは出ない?

木原誠二 自民党幹事長代理:
それはそうでしょう。
(「BSフジLIVEプライムニュース」4月8日放送)