静岡県御前崎市は1年を通して安定した風が吹くウインドサーフィンの“聖地”として知られる。ここで生まれ育ちユース年代の世界ランキング1位となった高校生のプロウインドサーファーに密着した。
聖地が生んだ高校生プロウインドサーファー
ウインドサーフィンの聖地・御前崎で1人の男子高校生のライディングがサーファーたちの視線を釘付けにしていた。

御前崎市内の高校に通う野口颯 選手(18)。彼は世界で活躍するプロのウインドサーファーだ。
2024年10月、世界トップレベルの選手が集う国際大会で4位入賞。周囲を驚かせると18歳以下-ユース年代のワールドランキングで1位に名を刻み、波を乗りこなす華麗なテクニックは世界中から注目を集める逸材だ。
ウインドサーフィンとはセイル(帆)が付いたボードで風の力だけで水面を滑走するスポーツ。競技種目は複数に分かれているが、彼が得意とするのは波乗りの技術を披露する“パフォーマンス”部門だ。

特に波を使った「ウェイブ」という種目が彼の主戦場で風を使いこなし、波の上に乗って大ジャンプを披露するダイナミックな技によって、世界トップレベルにまでたどり着いた。
「(ウインドサーフィンは)風がないとできない。本当に自然と一体にならないとできないスポーツ」とその魅力と難しさを表現する。
父の背中を追い二人三脚で歩む
地元御前崎の自然環境に魅せられ、この道を志した野口選手だが、そこにはプロのウインドサーファーだった父・貴史さんの存在も大きかった。
野口選手が生まれる前、ウインドサーフィンの練習環境を求め神奈川から御前崎へ移住。
活躍する父の背中を間近で息子として見てきた。
8歳でウインドサーフィンを始めると、12歳で地元の大会で初優勝。そこから急成長を遂げ、中学生で全日本選手権を制しアマチュア日本一に!今や世界へと活躍の場を広げている。

父・貴史さんは「(颯は)プレーヤーとしては身体能力も高く、いろいろなトレーニングを混ぜ合わせ、しっかり自分で考えてやっている。疲れをとる時間がなかなかないが頑張っている」と元プロウインドサーファーとして息子を称える。
授業が終わると父の迎えでそのまま海へ。
波に対してボードを入れる角度を話し合ったり、波に向かっていくスピードを調整するなど父がコーチとなり、親子二人三脚で日々の練習と向き合っている。

ただ、自然に左右されるスポーツ。
突然、風がやんでしまうなど練習ができなくなることもある。そんな時、取り入れているのが、ボルダリング。帆を自由自在に動かすためには、体幹の強化が必須。壁を登ることでバランス感覚が養われるそうだ。

「風が弱い日はこのジムで楽しみながらトレーニングしている。朝4時に起きて海に行って、夕方5時には(学校へ)お父さんが迎えに来てくれる。風のない日はいつでもジムに来れる環境を整えてくれている。(父の支えがあるから)高校とウインドサーフィン、二つの道で頑張ろうと思える。一番重要なのは誰かに支えてもらうこと。それに応えられるように自分のできることを全力でやりたい」と野口選手は感謝の思いと決意を語る。
感謝の気持ちを忘れず世界の頂点目指す
家族の存在、地元の応援、練習環境を確保することが難しい選手として常に感謝の気持ちは忘れない野口選手。それは、この素晴らしい御前崎の海にも…。

御前崎ロングビーチでの練習を終えると、ゴミを一つ持ち帰る「ワンハンドビーチクリーン」という活動を欠かさず行い、その日の感謝を海に伝えているという。

「日本の中で御前崎・掛川・牧之原はウインドサーフィンの聖地と呼ばれるくらい有名な場所になっている。そこに生まれたからには世界で活躍して将来は世界チャンピオンになりたい。静岡を代表していくオーシャンアスリートになりたい」と目標を掲げる野口選手。
18歳以下で世界1位に輝いたが、そこはあくまで通過点。
御前崎の海で育った1人の若者はまだ見ぬプロの頂点へ向かって世界の大海原へ帆を進める。
(テレビ静岡)