UNICEFは26日、政情不安が続いているカリブ海の島国・ハイチについて、12万5000人以上の子どもの命が危険にさらされていると発表。日本を含む、各国の国際支援が求められている。

子ども12万人以上の命が危機的状況

ハイチの首都ポルトープランスなどでは、3月に入りアンリ首相が外遊中に、ギャングなどの武装集団が刑務所を襲撃し、約4000人の囚人が脱獄して、治安が悪化するなど政情不安に陥っている。

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UNICEFは26日、ポルトープランスを含む西部全域で続いている武力闘争により、救援物資の提供が制限され、重度の栄養失調の危機にさらされている12万5000人以上の子どもたちの命が危機的状況に陥っていると発表した。

ユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長は、“危機は人間がつくり出したもの”と指摘し、暴力の停止を訴えている。

4人目のギャング団リーダーが…

無政府状態が続き、深刻な人道危機が起きているカリブ海の島国・ハイチ。

急激に治安が悪化しているハイチでは、3人のギャング団リーダーによる暴力や抗争が勃発している。

しかし、新たに第4のギャングリーダー「エゼシエル・アレクサンドル」またの名を「ZE」が、仲間を引き連れて脱獄。この騒乱に加わり、混乱が加速している。

19日、ZEことアレクサンドル氏が脱獄し、根城にしていた町に戻ってきた際の映像を見ると、黄色いベストを着て、歓声を上げる仲間を引き連れ、まるで英雄の凱旋のようにも見える。

脱獄後にアレクサンドル氏は「皆さまのご支援をいただきながら、できる限りのことをやっていきたい」「他のギャングたちが街を壊していくのが悲しい」と語った。

このZEことアレクサンドル氏も、まるでヒーローのようなことを言っているが、殺人や性的暴行、武装強盗などの容疑で2022年に逮捕され刑務所に収監されていた。

収監中に自分の村を襲撃したギャング団へ復讐を誓っていて、首都周辺では、早速抗争が悪化している。

22日、首都ポルトープランス中心部で撮影された映像には、別のギャング団のリーダーをはじめ、12人の焼死体が放置されていて、警察が遺体を収容している様子が映っていた。

街中いたるところで騒乱が続き、市民生活が脅かされている状態。国連は首都ポルトープランスを中心に、国の80%がギャングに支配されているとしている。

愛知とハイチの意外な関係

ハイチ単独では対応が難しい状況だが、日本を含めた国際的な支援はどうなっているのだろうか。

ハイチは、日本から飛行機で20時間以上かかるなど、馴染みの薄い国かもしれないが、実は、日本とも意外なつながりがある。

14日に撮影された街中を走る消防車の車体には「豊田市消防本部」と書かれている。さらに、フロント部分には日本とハイチの国旗が掲げられている。

武装ギャング団が刑務所に放火し、その鎮火のために愛知・豊田市から寄贈された消防車が出動している。

豊田市は2021年、ハイチに中古の消防車など7台を寄付している。車体の側面には、アルファベットで「AICHI」と書かれている。

この両者のつながりだが、「ハイチ」はHAITIと書くが、ハイチの公用語であるフランス語では「H」を発音しないため「アイチ」が正しい発音になる。そのためハイチと愛知県との結びつきが生まれて、様々な支援が行われている。

テニスの大坂なおみ選手もお父さんがハイチ系のアメリカ人で、大坂選手本人も支援を行っている。

ハイチは歴史的に貧しく、市民生活の困窮を受けて、これまで愛知のみならず、各国が国連を通じて支援。しかし、今回の混乱で、さらに治安が悪化した。

人口1100万人の4割近くが“飢餓”状態

ハイチ・ボルトーフランスでは14日、WFP=国連世界食糧計画が支援物資のペットボトルなどを持ち込んだが、ギャング団による支援物資の略奪などが原因で、物資に一斉に人々がむらがり、取り合いのような状態になっていた。

WFPによると人口1100万人のうち、400万人以上に十分な食糧が行き届いていないという状況だ。

そうした中、ハイチに滞在していた外国人の避難の動きが加速している。フランス軍は24日、ヘリコプターを出動させ、フランス国籍を持つ人たちの避難作戦を行った。

アメリカ共和党の下院議員でトランプ支持派のコーリー・ミルズ氏はハイチに赴き、チャーターしたとみられるヘリコプターを使って、現地にいるアメリカ人を救出したとXなどで述べ、18日にその映像を公開した。

ただ、そのアメリカについてはこんなデータもある。

国連が1月に公表した報告書では、ハイチで流通する武器の大半は、アメリカのフロリダから密輸されているとしており、その数は50万丁とも見られている。

ハイチをはじめ様々な紛争地帯でも結局使われているのは、アメリカやロシアなどの武器が主なもので、これで多くの無実の市民たちが死んでいくため、大国の責任は大きい。
(「イット!」 3月28日放送より)

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