少子化により進む小中学校の統廃合で、福井・大野市の上庄中学校も歴史に幕を下ろす。閉校とともに、保護者や教員が長年つづってきた伝統の”文集”も最後となった。文集には、いつの時代も変わらない、わが子を思う気持ちがあふれていた。

思いつないできた「親による文集」

上庄中学校で長年続いてきた文集「きよたき」は、1970年、教員と保護者がともに教育について話し合える場を作ろうと、当時のPTAが発刊を始めたものだ。

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文集の名前は、上庄中学校の子どもたちが遊んだ学校近くの“清滝川”にちなんで付けられた。
以来、半世紀以上、歴代PTAが発刊を続け、親がわが子とのエピソードや成長の記録をしたためてきたが、学校の閉校とともに99号で最後となった。

第57号(1990)より
第57号(1990)より

先日、胃の具合が悪く一週間ほど仕事を休みました。その時に、普段私の言うことにろくに返事もしない息子が「お母さん寝てろ」と何度も言ってくれ、自分のお金でプリンを買ってくれました。その時のうれしかったこと(1990年の保護者の投稿)

上庄中学校の飯田吉則教頭によると、「きよたき」は親のメッセージが直筆で書かれ、それが文集のメインになっているという。子どもたちの作文を集めたものや、PTAの活動報告を掲載した冊子は多く見られても、親による文集は珍しい。

文集には、勉強と部活動でクタクタになっている子どもを心配する母親や、反抗期の息子が言うことを聞いてくれないと悩む母親が、その胸の内を明かしている。難しい年頃の子どもたちへの接し方など、子育ての不安を共有しながら励まし合う、貴重な交流の場となっていたようだ。

上庄中学校・飯田吉則教頭:
「きよたき」には自分のお父さんお母さんが書いてくれた思いが残っていて、自分の子どもたちにも同じようにメッセージを残したいという気持ちが続いている

つづられた親子3世代の思い出

上庄中学校の統合記念式典が開かれるのを前に、PTA副会長の山川貴弘さん(47)が家族で「きよたき」のページをめくっていた。父の栄治さん(75)、息子で中学2年の恭平さん(14)と親子3世代の思い出が「きよたき」にはある。

親子3世代で「きよたき」のページをめくる山川さん家族
親子3世代で「きよたき」のページをめくる山川さん家族

そんな時、貴弘さんが母・たかをさんの記事を見つけた。そこには、子どもたちの食の安全についての思いが書かれていた。

山川さんの母・たかをさんの記事
山川さんの母・たかをさんの記事

PTA副会長・山川貴弘さん:
食べ物には結構気をつかっていたし、文集にも食べ物のことが書いてあるので、その時からずっと気を使ってくれていたんやなというのがわかります

そして、貴弘さん自身が息子の恭平さんに向けて書いたメッセージは、成長の喜びと励ましの言葉がつづられている。

長い人生の中で壁にぶつかることがあるでしょう。そんな時は悩まずに頼ってください。いつも見守っています(山川貴弘さんの投稿)

父が読み上げるメッセージを聞いて、恭平さんは「僕の成長をしっかり見てくれているのがうれしい」とほほ笑んだ。

「皆さんの心に永遠に残りますように」

上庄中学校の統合記念式典の日、1号から99号までの「きよたき」が並べられると、多くの人が手に取って、親からのメッセージを探していた。

訪れた人たちは親からのメッセージに思いをはせていた。
訪れた人たちは親からのメッセージに思いをはせていた。

「あった!これや!」と親の記事を見つけ、「私の時と作風が違う」などと見比べて楽しんでいた。

統合式典のあと、PTA副会長としてあいさつに立った山川貴弘さんは「中学校はなくなってしまいますが、皆さんの心に永遠に残りますように、新しいスタートのきっかけとして次のステップに進んでいけたら」と締めくくった。

PTA副会長・山川貴弘さん:
自分が親になって「きよたき」を書く立場になると、親がそこまで自分たちのことを思ってくれたんだなと思っています。次は自分の子どもをしっかり見守っていきたいと思います

長年にわたり、わが子への思いがつづられたPTAの文集「きよたき」。そこには今も昔も変わらない温かい親心があった。

(福井テレビ)

福井テレビ
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