ドジャースの大谷翔平選手が、元通訳の水原氏の違法賭博問題について初めて語った。
約11分間の声明で、何が語られ、何が語られなかったのか?国際弁護士の湯浅卓(ゆあさ・たかし)さんと見ていく。

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大谷選手は日本時間26日朝、オープン戦の試合前に取材に対応した。
会見場ではチームメイトも見守るなか、隣に通訳を置き、約11分間、声明を読み上げる形で行われたが、質疑応答には応じなかった。

国際弁護士 湯浅卓さん:
一言、一平さんが送ったときに自分はその場にいなかったと言うのが欲しかった。それはやっぱり、話の内容自体がハイリスクだし、この文章は法律家が書いた文章で、つまり大谷さんの弁護士が書いた文章だということが、アメリカのメディアを通じてアメリカ国民にはわかってしまったと言うのがあると思う。

その会見で、大谷選手が読み上げた文書がこちらだ。
「現在進行中の捜査もありますので、きょう話せることにまず限りがあるということをご理解いただきたい」とした上で、大谷選手は赤字部分で「自身の違法賭博への関与を否定」し、青字部分で「水原氏がついた嘘」を中心に説明を行った。

それぞれ見ると、赤字の部分の「自身の関与について」は、「僕自身は何かに賭けたり、誰かに代わってスポーツイベントに賭けたり、それをまた頼んだりということはない」「ブックメーカーに送金をしていた事実はない」と違法賭博への関与をきっぱり否定した。

さらに、青地部分の「水原氏のウソ」については、「僕の口座からお金を盗んで、みんなにウソをついていた」「(借金の肩代わりについて)すべてがウソだった」「僕とコミュニケーションをとっていたとウソをついていた」などと語った。

声明の中で大谷選手は、違法賭博への関与を完全否定したが、違法賭博問題を知ったのは20日の韓国での開幕戦の後のチームミーティングだったこと、水原氏の借金の肩代わりに同意していない、送金を頼んだことも許可したこともないと、アメリカメディアなどで伝えられていた憶測を完全否定した。

国際弁護士 湯浅卓さん:
私だったら、「私、大谷はアメリカいち潔白な人間です」と、一言最初に言わせました。もっと強くストレートに。

大谷選手が強調した水原氏の“ウソ”

大谷選手が声明で強調したのが、水原氏のウソについてだ。違法賭博に関するメディアの取材をめぐっても、大谷選手は“水原氏のウソ”があったと説明した。

大谷選手が語った、メディアの取材を受けるまでの流れを図にした。

まず、メディアから大谷選手の代理人に取材の依頼が入る。「違法ブックメーカーに大谷選手が
関与しているのではないか」という連絡があったという。代理人は外国人のため、その話は通訳の水原氏に入るが、水原氏は、違法賭博に関する取材依頼を大谷選手には伝えず、水原氏は代理人に対し、「某友人の肩代わりに、大谷選手が借金を支払った」と説明したという。

その翌日、代理人が水原氏を尋問すると、水原氏は前日の説明を撤回。「借金は自身が作ったもので、大谷選手に肩代わりしてもらった。大谷選手とコミュニケーションをとっていた」と話したという。こうした水原氏の説明について、大谷選手は「全てがウソでした」と話した。

国際弁護士 湯浅卓さん:
アメリカでは「ウソ」はNGワード、つまり子どもの耳に聞かせたくない言葉。だから、ウソという言葉をこれだけ強く言うからには、是非メディアに質疑応答させてくれとメディアを刺激したというふうに思う。

水原氏の“巨額借金”を知った時期は?

声明では、大谷選手が水原氏の巨額借金を初めて知った時期についても、初めて言及があった。

「試合後ホテルに戻って、一平さんと初めてそこで話をして、彼に巨額の借金があることをその時知りました」

韓国での開幕戦の後に、ホテルで二人で話した時に、初めて巨額の借金を認識したということを
明らかにした。

さらに、今回の会見で最も注目されていた大谷選手自身の銀行口座からの胴元への振り込みについては、「彼(水原氏)はその時、私に僕の口座に勝手にアクセスしてブックメーカーに送金していたということを僕に伝えました」と話したという。

“送金の具体的な方法”については語られず

会見で「語られた」水原氏が行った銀行口座への不正アクセスと振り込み。
一方で語られなかったこともあった。巨額の借金返済の銀行振り込みについて見ていく。

借金の銀行振り込みについて水原氏が「僕の口座に勝手にアクセスして、ブックメーカーに送金していたということを僕に伝えました」ということを初めて明かしたが、送金の具体的な方法については語られなかった。

捜査中ということもあって、具体的なことは言えないこともあったと思うが、なぜ水原さんは大谷選手の銀行口座にアクセスし、振り込みを行うことができたのか?

国際弁護士 湯浅卓さん:
アメリカの常識は、隣に本人がいないとできないというのが原則。Aiで管理されているので、生身の人間がいないとできない。ハッカーとしての天才的な技能を水原さんが持っていたということであれば…だが、考えにくい。お金を管理するのは公認会計士で、公認会計士の責任問題が出てくる可能性もある。

もし、大谷選手に隠れて不正に銀行口座にアクセスし、振り込みを行っていた場合、水原氏は今後、どんな罪に問われる可能性があるのだろうか。

州法と連邦法があって、州法だと「窃盗罪」で禁固4年以下などに問われ、連邦法だと、とめどもなく大きくなる可能性がある。それは「銀行詐欺罪」に当たるためで、禁固30年以下などとなっている。ただ大谷さんの名前をかたって、何度も送金していたとなると、その都度 銀行詐欺罪が成立するので、30年が何度も重なることになる。
(「イット!」3月26日放送より)

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