「残業=努力」という見方が薄れつつある…。このような傾向があることが調査で分かった。

総合転職エージェントの株式会社ワークポートは全国のビジネスパーソン631人(20代~40代の男女)に「残業に関する意識」についてアンケートを実施し、その結果を3月13日に発表した。

この調査で、残業をしたいと思うかを聞いたところ、「まったくしたくない」(26.1%)、「あまりしたくない」(51.7%)で、合わせて8割近くが「残業をしたくない」と回答した。

残業を「したくない」約8割(提供:株式会社ワークポート)
残業を「したくない」約8割(提供:株式会社ワークポート)
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残業をしたくないと回答した人に理由を聞いたところ、「自分の時間を大切にしたいから」(30代・女性・事務)、「家族との時間を確保するため」(40代・男性・営業)など、プライベートを重視したいとする意見が中心となる結果に。

一方で、したいと回答した人にも理由を聞いており、主に「残業代を稼ぐため」(40代・男性・機械系エンジニア)など収入を増やすことを目的とした意見が挙がった。

また、残業をしたくないと回答した人に「残業をした分だけ手当が出る場合したいと思うか?」と聞いたところ、「まったくしたくない」(12.2%)、「あまりしたくない」(50.3%)で、合わせて62.5%だった。

この結果について、「現代のビジネスパーソンの間では残業をしないスタンスが主流になってきているようすがうかがえました」としている。

手当が出ても残業「したくない」6割超(提供:株式会社ワークポート)
手当が出ても残業「したくない」6割超(提供:株式会社ワークポート)

次に、対象者全員に勤務先では残業をすることが評価につながると感じるかを質問。すると「まったくそう感じない」(31.4%)、「あまりそう感じない」(35.2%)となり、合わせて66.6%となった。

この結果については、「かつては『残業=努力』と評価された時代もありましたが、現代ではそうした見方も薄れてきているようです」と分析している。

残業が評価につながるとは「感じない」約7割(提供:株式会社ワークポート)
残業が評価につながるとは「感じない」約7割(提供:株式会社ワークポート)

また、誰かに意図しない残業を強いられたことがあるかについても聞いており、「かなりある」(20.4%)と「ややある」(25.8%)の合計が46.2%と半数近くにのぼった。

意図しない残業を強いられたことが「ある」約5割(提供:株式会社ワークポート)
意図しない残業を強いられたことが「ある」約5割(提供:株式会社ワークポート)

意図しない残業を強いられたことがあると回答した人に詳しい状況を聞いたところ、「期限が当日中の仕事を定時ごろに上司から依頼された」(40代・男性・機械系エンジニア)、「上司に帰ることができない雰囲気をつくられる」(30代・男性・管理)など、ほとんどが上司によるものだったという。

この調査では、手当が出ても残業をしたくない人が6割超もいることが分かったのだが、この理由は何なのか?また意図しない残業を強いられる状況をなくすためには、どんな対策が必要なのか?

株式会社ワークポートの担当者に聞いた。

プライベート時間の確保を希望する人が多い

――「残業に関する意識」に着目し、調査を行った理由は?

きっかけは、2024年問題への注目度の高まりでした。弊社でも求職者様から、応募企業の残業時間を気にされる声を度々、耳にするようになったため、時間外労働の中でも残業への関心が高いと捉えたことが調査実施の理由です。


――残業を「したくない」理由としては、どんな意見が多い?

「自分の時間を大切にしたいから」「家族との時間を確保するため」など、プライベートを重視したいとする意見が中心となりました。

また、「継続的な残業は生産性が低下するため」「メリハリがなくなり就業時間中のパフォーマンスが落ちるため」など、仕事の質を保つために残業をしたくないとする意見も多く挙がりました。


――残業をしたくないと回答した人の年代や性別に特徴はある?

とくに年代や性別で違いは出ませんでした。どの世代、性別でも「あまりしたくない」という回答が最も多かったです。

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――手当が出ても残業を「したくない」理由としては、どんなことが考えられる?

「したくない」理由で挙げられていたように、ワークライフバランスを重視し、プライベートの時間の確保を希望する人が多いことが考えられます。

また、仕事のパフォーマンスを落とさないために、あらかじめ「残業をしない」働き方を前提にしている人が増えてきていることが予想されます。

タイパを気にする人も多いのでは

――残業が評価につながると「感じない」は約7割、こちらはどう受け止めた?

2023年9月に発表した「睡眠意識」に関する調査結果でも、「睡眠時間を削ってでも働くべき」だと思わない人は78.1%を占めました。

睡眠時間を削って働くべきではないと考える理由として「体調を整えてこそ良い仕事ができると考えているため」など、キャリアアップやスキルアップ、仕事の質を上げるには、睡眠時間はきちんと確保すべきとする意見が多数寄せられました。

同様に、無理に残業するよりも就業時間内で確実に成果を残そうと考える、ビジネスパーソンが多いのではないでしょうか。


――「残業=努力」と評価されにくくなっている理由は?

前述のとおり、ハイパフォーマンスを発揮するために健康管理への意識が高まっているほか、2024年問題などをきっかけに労働時間の管理を重視する傾向が強まっているのかもしれません。

ただ時間をかけてやればよいのではなく、いかに効率よく、大きな成果を出せるかといったような、タイパ(タイムパフォーマンス)を気にするビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。

「上司より早く帰ってはいけない」意識が根強い

――「残業しないスタンスが主流」になっていることは、どのように受け止めた?

良い方向に向かっていると思います。

一方で、「上司にタスクを振られるが、残業は推奨しないというダブルスタンダードが横行している」などの意見もあり、業務管理をしないまま、やみくもに残業だけを禁止しても持ち帰り残業が発生するなど、ビジネスパーソンへのしわ寄せが懸念されます。

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――「上司にタスクを振られるが、残業は推奨しない」という状況になった場合、どのように対処すればいい? 

状況にもよると思いますが、まずはそのタスクを完了するためには、どれくらいの時間を要するかを自分で見積もったうえで、就業時間内に終わらないようならば、どの程度、残業が発生するかを提示しながら、上司に相談してみると良いのではないでしょうか。

残業を推奨しない場合、タスク完了の期限を後ろ倒しにしたり、就業時間内に完遂できるよう人員を増やしたりするなど、通常であれば、何らかの判断がなされるはずです。

ただ、相談を一切、受け付けてもらえなかったり、残業代が支払われないような「サービス残業」を強いられたりするならば、別部署の上司や社内の相談窓口などへ相談してみるのも、一つの手かと思います。

また、そういったケースがあまりにも改善されない場合や、常態的に横行しているような会社なのであれば、思い切って転職を視野に入れてみてもよいかもしれません。


――意図しない残業を強いられる状況をなくすためには、どんな対策が必要?

意図しない残業が強いられているのは、残業をしないスタンスが主流になっている一方で、「残業をすべき」「上司より早く帰ってはいけない」という意識が根強く残っていることが要因だと思います。

2024年問題をきっかけに労働時間管理の徹底をするとともに、残業の強要を認めないルールづくりや、いつでも相談できる窓口の設置など被害者が泣き寝入りしないで済む仕組みが必要だと考えられます。

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取材で、「残業=努力」と評価されにくくなり、残業しないスタンスが主流になっていることは、働きやすさにつながっていると感じた。一方で、意図しない残業を強いられたことがある人もいて、そういった人たちのために、残業の強要を認めないルールづくりが進むことを期待したい。

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。